見出し画像

Recycle Mafia #3-3 parallel world

目の前に迫る銀色の影。瞬間的に目の前が見えなくなっていた。
気が着くと、ベッドの上だった。
恐る恐る、包帯をはずし、鏡を見た。次の瞬間、涙が溢れた。
 
ナチは斜視の手術をしたことを思い出していた。
手術前は、まるで、自分だけが不幸を背負ったような顔をしていた。それが、簡単な手術で見事に蘇った。
手術後、今までの自分を恥じた。元通りの活発な生活に戻ろうとしても、戻れない自分にジレンマを感じた。
そんな自分が嫌で嫌でしょうがなかった。だから、久しぶりに会った、友達の誘いに乗った。
きっかけは簡単だ。そう、簡単なんだ。だから人生は怖い。
そんなことを思いながら、ナチは目の前の新聞に目を落としていた。
 
連日、新聞、ニュース、ワイドショーではこの事件のことで持ちきりだった。ナチは、事件後、普段読まなかった新聞を取るようになった。
ナチだけではない、シンゴもイチもだ。
そして、事件のことを書いてある記事が少しでもあれば、必ず目を通していた。
そうせざる負えなかったのだ。この事件の件に関しては、どんな細かい情報でも見逃せなかったからだ。
ただ、その情報は、半分が本当で半分は作り話。
3人は改めて自分達の無力さを実感していた。
 
 
逮捕された少年は5人。
マスコミは大々的に報道した。「今世紀最悪の猟奇的殺人事件」
少年法のありかたについて論議された。テレビでは能無しのコメンテータ達が、何も事実を知らないまま熱弁している。
少年「カトウ」は懲役20年。トモ、マサルは15年。ケンタ、ロウは10年。
それぞれの刑が2年後に確定された。
 
 
でもそれは、パラレルワールドでのお話。
事実。「カトウ」は「誇舞羅」が用意した全くの別人。顔は整形してある。勿論、警察も検察も別人という事は承知の上だ。裏の世界の人間はどこにでもいるということ。
「偽カトウ」は実刑が確定して、3年の刑期を勤めたところで、死亡。謎の死を遂げた。カトウの両親は被害者の大林さんへ、賠償金を払い続けながら、別人の遺骨を大切に自分たちの墓に入れた。どこまでも続く呪いのような事実。
他の4人は刑期が終わると、「お迎え」が来る事になっている。大林さんへの多額の賠償金と、いつの間にか出来ていた菊川会への借金の返済の為、世間から「行方不明者」になり山奥の飯場または海の上で20年過ごす事になる。
日本では年間8万人が行方不明になっている。その8割が借金問題であるので、なんら不思議はない。
 
実は、事件が発覚する直前に、菊川会は大林さんに接触していた。
菊川会としては、犯人はすでに解っていたので大林さんへ、犯人の処遇を全面的に委任してくれるよう説得に行ったのだ。コレも大切なビジネス。
大林さん側としては、父親の方が交渉にあたり、母親は顔面蒼白の後入院してしまった。もちろん父親は初めは「殺してやる」と息巻いていたが、菊川会は、今の少年犯罪の現状と今後についてじっくりと説明し、説得した。
、その際、菊川会は口止め料と犯人の買取料として500万円を積んだ、しかし父親はそのうち100万円だけ受け取り、一切の事実を警察に訴えない事を約束した。
そして、裁判が終わると、妻の回復を待って、賠償金が入金される口座だけ日本に残し、海外へ移住した。
カトウがどうなったか、他の少年4人はこれからどうなるのかを書き記した報告書が菊川会から弁護士を通して送られてきた。
そこには、カトウに関する事実は一部だけが書かれており、大部分の事実は大林さんの心境を考慮して書き換えられていた。
大林さんは涙ながらに、納得と感謝の意を菊川会側に伝えた。
 
それも、これも、やはり大人が作り出した世界
大人は汚い、そして悪い。
でも、本当に大人だけが悪い?
 
LALALALA・・・・・ the choice is yours
 
 
 
今の日本で、少年法で守られる少年は本当に更正して立派な社会人になるのか?加害者ばかり守られる法律で、被害者を守る法律は無いのか?
このような残酷な少年犯罪が起きると必ずこのような論議になるが、一時的なものだとおもう。被害者家族は精神を病み、裁判で無理やり和解させられる。それどころか、裁判で決まった賠償金さえ加害者側は反故にする。
人間は忘れる動物だ。被害者側に加害者側から賠償金が満額支払われたことはないのだ。どこまでも続く被害者側の地獄。これが日本の現実だ。
パラレルワールドであって欲しいと願う。


#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?