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将来は6次産業化も!エディブルフラワーやハーブなどを栽培する新規就農夫婦の挑戦

今回は、球磨郡多良木町で夫婦で、エディブルフラワーやハーブなどを栽培されている尾前愛女さんに作物を育てる魅力ややりがいなどを伺いました。( 2024年2月)


尾前愛女さんプロフィール

ブライダル業界での仕事を経験後、結婚を機に球磨郡多良木町で就農し、農家を9年経験。
夫とともに専業農家。エディブルフラワー、ハーブ、オクラ、ベビーリーフなどの作物を栽培。

Instagram・teere(テール)農園:https://www.instagram.com/teere87noen/

全く違う分野の仕事から夫婦二人で専業農家へ

私たちは夫婦で専業農家をしています。元々は、二人とも熊本市内で働いていたのですが、結婚を機に地元に戻りました。夫は製造業の仕事に携わっていたのですが、実家が祖父の代から農業をしていたこともあり、農業に興味を持ち始め、2年間の研修を経て、その後本格的に農業を始めました。私も元々は、全く別のブライダル関係の仕事をしていて、農家・農業と無縁の生活をしていました。しかし、夫が専業農家になるタイミングで夫の父が亡くなってしまうなど、農家を1人ではとてもやっていけない状況になり、自分も仕事を辞めて、一緒に就農することにしました。元々私としては就農に強い興味関心があったわけではなく悩みましたが、夫と二人で話し合って、最終的には子育てのことも考え結論を出しました。農家は、比較的、仕事に融通が効き、休みも取りやすいため、子育てや子供の行事に参加しやすい環境であると考えています。

色々な作物を試行錯誤の日々

私たちは、毎年作るものを変えて、色々な品種に挑戦しています。私たちの地域は中山間地で、野菜が育ちにくい地域なので、1年チャレンジして、作物と気候が合わないと感じたら、次の年は辞めるという形にしています。毎年年間計画を立てて、気候にあっているものを残して継続しています。そして現在は、オクラ、ハーブ、エディブルフラワー、ブロッコリー、玉ねぎ、ベビーリーフなど、いろんな作物を育てています。また今年から、放棄地にならないように田んぼで米の栽培を再開しました。今の主な収益源としては、オクラになっています。今までは、きゅうりが一番だったのですが、きゅうりはコストがかさみ、ハウス栽培の手間もかかります。きゅうりとオクラは、栽培の時期が被っていることもあり、同時にやるのは難しく、今はオクラをメインでやっています。

エディブルフラワーの魅力

エディブルフラワー(食用花)は、見栄えも綺麗ですし良い香りがします。私の趣味で栽培を始めました。農家になるなら自分の好きなものを育てたいという思いがあり、今までは私たちの農園で、全く作っていなかったのですが、栽培するようになりました。たまたま玄関の棚に美しい花を飾っていて、その花が飲食物にも使われることを知ったことがきっかけでエディブルフラワーを知り、綺麗で彩ある花を育ててみたい、栽培したいと思うようになりました。

ビオラという品種は、様々な色や形がありとても人気なのですが、交配させることで、いろんなパターンの色形で育てることができます。全く同じ株はなく、200〜300個ある株は全部形が違っているため、飲食店の希望の形や色に合った花を栽培することができます。

ビオラは、かなり病気に弱い品種なのですが、エディブルフラワーは、農薬や肥料などを使った栽培ができません。普通の園芸店では農薬を使った種しかおいていないので、私たちの農園では、育種家(※)さんから無農薬で育てた種を頂いて、その種を使いさらに無農薬で育てています。また今年から育ちの速さや雨水防止などの利点があるハウス栽培を始めました。エディブルフラワーは、見た目や形が重要なので虫食いは商品になりません。虫は相変わらず嫌いですが、スコップで取り除いて対応しています。

※育種家: 種を品種改良し育てる農家

九州では、私たちみたいに食用の花を育てている農家は少なく、適正な価格が今もよく分かっていません。どのくらいの値段設定がいいのか情報交換をしながら、決めていくんですが、買って下さる飲食店側も周辺に花農家がいないため、いつも難しく感じています。エディブルフラワーは、飲食店において見た目重視で、デザートのトッピングやコーヒーのフロート、アイスの上の装飾などで使用されております。その他、サラダと食感が似ているため、イタリアンのレストランなどで、サラダの飾りとして、使われることもあります。

人吉球磨地域外へも販路を拡大

去年までは、地元の飲食店に注文が来たら配達すると言う形で提供していましたが、今年からは地元だけでなく、八代や熊本市内のレストランへも販路を広げています。エディブルフラワー、ベビーリーフに関しては、インスタグラムで繋がった八代の農家さんに仲介して頂きながら、販路の拡大を行っています。営業が得意でないこともあり、SNSでのつながりや仲介していただける方にとても感謝しています。

農家としてのやりがい

一番のやりがいは、自分の作物をお客さんが選んでくれた時です。やはり農家の多くは、同じ作物を同じ時期に作るので、競合が多く存在しています。その中でも私たちの作物を選んでいただいた時は、農業を頑張ってきてよかったと報われた気持ちになります。そういった方々に継続的に選んでいただけるように、これからも取り組んでいきたいです。

以前、地域の子供たちを農園に集め、好きなだけ野菜を取ってもらう会を開きました。きゅうりが苦手だといっていた子が、獲れたてのきゅうりが美味しかったのか、帰りの車で3本も食べてくれたようでした。そのことがとても嬉しく、野菜を育てていてよかったなと嬉しい気持ちになったのを覚えています。

6次産業化(※)への挑戦

私たちは、夫婦二人でやっている小さな農家ですので、規模の拡大は考えていませんが、将来的には、6次産業化へ挑戦したいと考えています。例えば、ハーブを栽培しているので自家製のハーブティーをブランド化していこうと考えています。将来的には、自家製ハーブを使ったスパイス、調味料にもチャレンジしていきたいと考えています。

※6次産業化: 農業者(1次産業)が、農畜産物の生産だけでなく、製造・加工(2次産業)やサービス業・販売(3次産業)にも取り組むことで、生産物の価値をさらに高め、農業所得の向上を目指す取り組み
参考:https://www.city.fukushima.fukushima.jp/nougyou-hanbai/6jika/6jikatoha.html

尾前さんのエディブルフラワーやハーブに対する思いや農家のやりがいについて深く知ることができた取材でした。
人吉球磨・農業未来プロジェクトでは引き続き地域の若手農家さんの取材を続けていきます。次回の取材記事もお楽しみに!

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