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子どもたちの行動がつくる体育授業の雰囲気〜体育論文より〜#210

みなさん、おはようございます。(こんにちは。)(こんばんは。)

少し間が空きましたが、また体育論文について記事を書いていこうと思います。

今日の論文はこちらです。

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/49/3/49_KJ00003390947/_pdf/-char/ja


毎度のこと、詳しくはリンクから実際の論文を読んでいただけたらと思いますが、論文はちょっと、、、という人のためにもこの記事を書いてるところがあります。

では、この論文をざっくりと説明しますね。

よい体育授業を「目標が十分に達成され、学習成果が上がっている授業」と定義した時に、それを実現するための基礎的条件が「授業の勢い」と「授業の雰囲気」の二つが特に重要であると言われています。

そこで今回は、

「授業の雰囲気」

にスポットを当てています。

これまでの先行研究で、運動学習に対して営まれる『教師の肯定的・矯正的フィードバックや励まし』が、授業の雰囲気を決定づけ、学習成果に強く影響することが明らかになりました。

しかし、それ以上に学習集団(子どもたち)における人間関係や相互関係によって生み出されるものが多いではないかと予想されたことから、本研究では「運動学習場面」に絞って、学習集団、つまり子どもたちの「人間関係行動・情意行動観察法」を用いて、体育授業の雰囲気が学習成果に及ぼす影響力を確かめようとしています。

もっと簡単にいうと

子どもたちのどんな行動がどのように体育授業の雰囲気に影響するか


を調べています。


では、いきなり結論にいきますね。

(論文の場合は、順を追って説明するのがよいのかもしれませんが結論から書くスタイルです。)


本研究で、

『肯定的人間関係』及び『肯定的情意行動』と形成的授業評価との間に、比較的高い相関関係が認められています。

子ども同士が意見を交わしたり、声援や補助したりする肯定的な人間関係が頻繁に見られる授業や、学習内容に関わって、拍手や歓声、笑顔といった肯定的な情意行動が多く出現する授業は、形成的授業評価得点も明らかに高くなっています。

逆に否定的人間関係及び否定的情意行動については、特にボール運動の授業において負の相関関係が認められていて、これは、学習がゲーム中心に展開されるためだと考えられています。

(器械運動では明確な関係は認められていない)

これらから、子どもたちの人間関係行動によって生み出される雰囲気は、教師のそれ以上に強く学習成果に影響するものと考えられています。

特に子どもたちにとって、「運動学習場面での学習活動」が重要なら意味を持ち、

この場面で、明るく温かい雰囲気が生み出される授業は、子どもたちから高く評価される


ことが確認できました。

コンパクトにはまとめていますが以上です。


さて、補足をしていきます。

今回の調査では、器械運動とボール運動の授業の映像をもとに観察・分析しています。

特に運動学習場面だけに絞っているところがポイントでもあるのですが、観察したところは、その場面での子どもたちの関わり合いが肯定的あるいは否定的に営まれたかどうかです。

※具体的な例は、論文の中で次の表のように示されています。

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今回調査したボール運動と器械運動を比較すると、まず『肯定的人間関係行動』の頻度は、器械運動の方が優位に高い値を示しています。

そして、『否定的人間関係行動』に関しては、ボール運動では出現したものの、器械運動ではほとんど出現していません。

これは、器械運動が学習の中で技の教え合いや補助などがあること、ボール運動ではゲーム場面の審判のジャッジや相手の反則プレイに関わるトラブルが起こりやすいためです。

次に『肯定的情意行動』では、ボール運動が優位に高い値を示していて、さらに『否定的情意行動』も同じようにボール運動が優位に高い値を示しています。

これも分析していくと、ボール運動は、ガッツポーズやハイタッチなどの成功体験があることと、ゲーム中にトラブル(審判のジャッジ、相手のラブプレイなど)が起きやすいことが挙げられます。


実際の論文では、さらに分析したことが詳しく書かれていますが、

ここから自分の考えを書こうと思います。

今回の論文で、自分が考えたことは、

ボール運動の授業における雰囲気づくりのポイントについて。


研究からも分かるように、ボール運動では、『否定的人間関係行動』や『否定的情意行動』が出現しやすい傾向にあります。

これは、ボール運動の構造上である意味、仕方がない部分もあります。

だからこそ、ここに教師が積極的に関わっていく必要があるとも思っています。

では、どんなことに気をつけていくかというと、大きく三つあります。

①審判のジャッジに文句を言わない。

ここは難しくもあるのですが、子どもが行う以上、審判のジャッジには不満が出てしまうことは多々あります。

まずは、それが出るゲームの前に「審判のジャッジに文句を言わない」ことを全体で共有・約束します。

それでも揉めることはあったり、どうしても判定がつかなかったりした時は、教師が見ていれば判定の補助、またはジャンケンをさせるようにします。

※ここで時間を使ってしまうと運動時間が減ってしまうデメリットも伝えます。

また審判のジャッジに素直に従い、気持ちを切り替えられる子どもやチームを取り上げて褒めることも効果的です。

②得点に関わらずトライに価値付けする。

ボール運動は、どうしても得点することに価値が置かれる傾向にあります。

そうするとシュートだけでなく、そこまでのドリブルやパスの成功・失敗の結果に子どもたちは一喜一憂してしまいます。

だからこそ、その行為の結果だけではなくて、何をしようとしたか、トライしたことに対する価値付けを教師が率先して行います。

これはとにかく量が大切で、他の子どもたちに同じような声かけが自然と出るくらいに、たくさん行いたいものです。

③場・ルール・教具の工夫

以前の記事でも書きましたが、ボール運動はオフィシャルルールに近づければ近づけるほど、技能差が顕著になり、ボールを保持してゲームを楽しめるのは一部の子どもたちだけになります。

だからこそ、『場・ルール・教具の工夫』が必須になります。

具体的なところは今回は書きませんが、否定的人間関係行動・否定的情意行動が起きづらいようにするためには、

技能差があっても多くの人が活躍して楽しめる教材づくりが一番だと思うからです。

(もちろん簡単なことではありません)


ボール運動では、このようなところに気をつけることで、否定的人間関係行動や否定的情意行動の頻度を少なくしつつ、肯定的人間関係行動や肯定的情意行動の頻度を増やしていくのがねらいです。

最後になります。

子どもたちにどんな声かけや関わりがよくて、どんな声かけや関わりががよくないのかを教えるのも大切ですが、

自然とプラスの声かけや関わりが生まれるような仕掛けや仕組みのある授業づくり

をしていきたいものです。


というわけで、今日の記事は終わりです。

お読みいただき、ありがとうございます💪

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では、今日も一日ご機嫌で✨

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