FOMC結果は現状維持、あと2回の追加利上げ予想に投資家は困惑|株・為替相場分析(2023年6月15日)

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年内追加利上げ2回予想に面食らった投資家

さて、今回の6月会合では利上げの一時停止が織り込まれており、実際の結果も現状維持ということで今回の会合自体にサプライズはありませんでした。

しかし問題なのは、年内にあと2回の追加利上げの可能性が示唆されたことです。これは投資家にとってサプライズであり、FOMCのメンバーが米国のインフレに対して投資家が考えるよりも強いリスクを感じていることが明らかになりました。

そもそも、6月会合が行われる前の織り込みでは、7月に利上げ→9月に維持→11月から利下げ、という状況でした。それが、今回の会合後には7月と9月に利上げを行い、11月と12月ではそれを維持、利下げが始まるのは来年の1月から、という織り込み状況に変わったのです。

この背景には、FOMCメンバーの「金利予想アンケート結果」であるドットチャートが前回と大きく変わった要因があります。具体的には、前回のメンバー予想の中央値が5.1%(金融政策誘導レンジは(5.00-5.25%)だったのに対し、今回会合では5.6%(同5.5-5.75%)の中央値が発表されました。

つまり、前回予想と今回予想との間には0.5%の金利差異が存在しており、最近のインフレ鈍化の傾向を踏まえると一気に0.5%上げることは難しいので、0.25%ずつ2回に渡って利上げが行われるという公算になるわけです。

追加利上げはあと1回だと考えていた投資家たちにとって、この予想変更は寝耳に水です。投資家たちは常に最新のドットチャートに基づいてインフレ予想を織り込むので、ドットチャートが変更されることによって投資戦略の変更を余儀なくされるのです。

7月は「ライブFOMC」になるだろう

6月会合ではドットチャートが変更されてインパクトのある結果になったわけですが、現状のドットチャートが来月会合時点でも正しく機能するかといえば、それを予想するのは難しいです。何故なら、パウエル議長の徹底した「データ次第」の戦略が存在するからです。

FOMCメンバーは基本的に、米国のインフレは粘り強く戦っていく相手だと認識しています。それゆえに、直近のデータでインフレに多少鈍化の傾向が見られたとしても、投資家が期待するほどすぐには利下げには転じません。むしろ、今回会合で示されたように、逆に追加利上げを行なって、徹底的にインフレを退治する戦略と言えます。

そのような戦略を取る上で重要なのは、投資家たちに「FRBはすぐに利下げに転じるから、株を買いまくろう、経済を盛り上げよう!」という気持ちを抱かせないことです。そのような状況では株高によって人々の消費意欲が高まり、インフレ退治が長引いてしまいます。

逆に、「データ次第でまだまだ利上げしていく可能性はあるよ。みんな浮かれないでね。(もちろんデータ次第で利下げする可能性はあるけど……)」という微妙なニュアンスを発することで、投資家たちに甘い期待を抱かせずに、FOMCで追加利上げをする選択肢を残すことができます。もちろん、急速にインフレが収まれば利下げする時期を早める選択肢も残すことができます。

そのような期待戦略に沿って、今回もパウエル議長は、データ次第で7月会合に利上げするかどうかを決めるというスタンスです。それが派生して、7月は雰囲気で何もかもが変わりうる「ライブFOMC」になるだろう、という発言が出たわけですね。

投資家サイドからすれば、データ次第という発言は何も言っていないに等しく、マーケットが混乱する要因になってしまいますね。

利下げが始まるのは2年後の可能性が高い

ドットチャートの変更もインパクトのある内容でしたが、個人的には「利下げが始まるのは2年後の可能性が高い」という発言も気になりました。

というのも、すでに述べた通り、現状の織り込みでは来年2024年の1月から利下げが行われるのに対し、パウエル議長の発言通りだとすると利下げが始まるのは早くても2025年の6月だからです。つまり、FRBとマーケットの間には、利下げ時期に関して1年5月もの乖離が生じています。これはかなり厄介な問題ではないでしょうか。

実際に利下げが始まるよりも早くマーケットは動くものですが、こうも乖離が激しいと株や為替に対して適切なシナリオ構築が出来ないため、中長期的な目線があやふやになってしまいます。

とはいえ、文句を言っても仕方がないので、やはりデータを注視してマーケットの織り込みに着いていくしかないのだと思います。

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