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面接でPCを持ち込まない品格

本来、面接官と求職者は対等な関係です。これまでは"選考"という性質上、企業が選ぶ形になり企業優位な関係も多く見られましたが、人材難で売り手市場な昨今においてやっと、求職者も「辞退」という選択肢を提示できるようになり、その対等な関係が整いつつあるように思います。

そんな中、個人的に広めたいと考えている面接風土が、「面接でPCを持ち込まない」というもの。今回は実体験を元に、この面接官のPC利用について考えていきます。

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事例①:求職者が面接時にPCを開く

[求職者スペック]
20代後半、男性、ベンチャー在籍、2社経験
マーケティング職として応募

私と部門長の2名が面接官として面接室に入ると、求職者はすでにPC(正確にはMacBook Air)を広げ、挨拶早々タイピングを始めました。むしろ面接までの待ち時間で仕事をしていた可能性もあります。

状況の思考整理に手間取ったのか、面接慣れしている部門長のぎこちないアイスブレーク。

一方で、私と部門長の面接官2名は当然のようにPCを広げ、候補者の履歴書・職務経歴書、また面接時にヒアリングしようとあらかじめ打ち合わせていたメモを見つめていました。

面接が始まると求職者は、こちらが質問をしてもタイピング、あちらから質問をしてもタイピング、質疑応答のない無言の中でもタイピング....。面接官の私は、そこまで何をタイピングしているのか不思議で仕方がありません。またそれと同時に、一挙手一投足、言動に意識を巡らせなければいけない窮屈さも感じていました。

しかし考え直してみると、求職者はいつもこの窮屈さの中で面接を行なっていたのです。私はこの体験を通して改めて、面接官のPC利用は思っている以上に求職者を圧迫しているということに気がきました。

面接官がPCでタイピングしている様子を求職者側から考えると、「発言の1言1言もしくは身振り手振りまで仔細に記録されているのではないか」「面接官同士で私の評価を話しているのではないか」など、ものすごく気になることだらけです。

もちろん面接官側としては、言動一つ一つを細かにチェックしているケースもあります。しかしそれをわざわざ求職者に気を使わせる形で行う面接は、果たして対等な面接の形として正しいのでしょうか。

事例②:面接の最中に他の仕事やチャットをしている

就職・転職は、求職者にとって人生の分岐点です。入社後は自社のプロジェクト実現のために人生の大多数の時間を割いてもらうことになる、重要な話し合いの場だと私は認識しています。

しかし面接に同席をしていると、面接中に業務チャットを開いて面接に関係のないやりとりをしていたり、クライアントにメールを打っていたり、納期が迫っているのかプレゼン資料を作り込んでいる面接官すら見かけたことがあります。

人生の時間を割いてもらう側の姿勢として、あり得ないと考えています。

事例③:面接の内容が浅い

面接時にPCを利用していると、テキスト情報に注意を向けなければならず、必然的に求職者との応答が浅くなります。

面接でPCを利用している方はブラインドタッチができる方でさえ、求職者の発言を都度文字に起こし、要約する思考と作業時間を必要とします。求職者本人ではなく、書き出したテキストと向き合う時間が発生しているのです。ブラインドタッチができない人はさらに、キーボード位置の認識も加わります。

◎PC利用面接官
質問→理解(→キーボード位置確認)→タイピング→文章整形...→質問

◎PCを利用しない面接官
質問→理解→質問

「求職者を知る」という意味では、PCを利用しない方が圧倒的に話が深まります。また求職者が視界から外れることもないため、言動以外のノンバーバルな情報も見逃しません。

面接時にPCを利用するメリット

もちろん面接官は、メリットを感じているため面接時にPCを利用しています。主に、以下の3点ではないでしょうか。

①求職者の情報を漏れなく記録する。
面接で得られる情報は多いため、面接後だと記憶が曖昧になり記録が抜けてしまう懸念があります。また最近は選考基準が細かくなっている企業が多いため、聞くべき情報を漏らしたくない方も多いかもしれません。

②面接後に記録する時間がない。
面接が本業というのは、おそらく人事だけでしょう。人事以外の面接官は、面接が終わり次第通常業務に戻ります。面接を1時間行なったあとに、面接のまとめをするのは非効率ですよね。

③質問を考える時間を作っている。
タイピングをしながら、次の質問を考えている方もいます。

まとめ

本日は、求職者と企業は対等であるという前提から、私の経験を踏まえ、「面接でPCを使う面接官はイケてない」という意見を述べさせていただきました。

面接官が面接時にPCを利用するメリットは理解していますが、やはり人生の岐路である面接の場においては、より候補者を理解できる環境づくりを優先すべきだと考えています。

また面接の効果としても、きちんと対話をする形になるため、求職者の印象が良くなります。

もちろん私の主張とは逆に、お互いPCを開くという解決法もあると思います。しかしお互いを真剣に理解し合う場をつくるために、まずは面接官がPCを開くのやめてみませんか?

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