見出し画像

2021年の社会進化10選

毎年恒例の、「山中が勝手に選ぶ2021年の社会進化10選」をお届けします。

順不同です。

1)#マンホール聖戦

マンホールの蓋を探して撮影する謎の集団!ゲーム「鉄とコンクリートの守り人」!?

実はこれ、水道関連事業を80年以上手掛ける日本鋼鉄管社と、非営利組織のWhole Earth Foundationが共同で実施している市民参加型のゲームです。日本に膨大な数あるマンホール蓋の劣化を監視するために、市民を巻き込み、かつ壮大なゲームにしました。Whole Earth Foundation代表の森山さんは米国のデザインスクールで修士号を取った方です。社会課題解決にデザイン思考を活かすとこうなるんだー!と目から鱗が落ちました。

2)「聞かれる」時代へ

苦しむ人の声なき声に「耳を傾ける」というソリューションが、これほど脚光を浴びた年はなかったのではないかと思います。

書籍「LISTEN」のヒット。企業従業員の声をひたすら「聴く」エール株式会社の資金調達(はたらくファンド)。かいじゅうカンパニーがベータ版をリリースした、セルフケアのための音声コミュニケーション・サービスeau(オー)のリリースなど。

3)ソーシャルセクターのe-Fundraising新時代

NPOがクラウドファンディングで資金を集めることは、既に定着しています。それに加えて近年は、マンスリー会員、つまり月額固定的な金額をクレジットカードで払ってくださる会員を集めることが、NPOの経営を安定させるために重要なことになっています。2021年には、マンスリー会員を集め登録してもらうプラットフォームをNPOなどの団体向けに提供しているコングラントが、KIBOW社会投資やおおさか社会課題解決ファンドなどから資金を調達して展開を加速しました。さらに、readyforも同分野への参入を発表。またNPO向けに特化してはいませんが、近い機能を提供しているロボットペイメントはIPOしました。ソーシャルセクターの「資金集め」の常識が大きく変わった一年でした。

4)人権Due Diligenceの広まり

事業活動に伴う人権侵害のリスクを洗い出し、問題を未然に防ぐ「人権Due Diligence」が企業にとって必須のこととして、広まってきました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0735N0X01C21A2000000/
新疆綿に関連して、日本のアパレルメーカーが欧米で批判を受けたことが大きな転機になったかもしれません。KIBOWも森未来に投資をする前に、サプライチェーンのDue Diligenceを行いました。投資家にとっても必須のプラクティスになりつつあります。

5)新しい「就労支援」の展開

コロナ危機下で、就労支援の新展開が見られました。グラミン日本の提供する、ITスキルトレーニング+職業マッチング(SAPがサポート)、休眠預金を原資にした'Cash for Work'の展開、そして育て上げネットでは、「就職」の支援に留まらず、少年院を出たばかりの若者が、ネットを使った仕事で「かせぐ」体験を得られるように伴走しています。この新しいタイプの就労支援は、「はたらき方拡張型支援」として 政府の『就職氷河期世代支援に関する行動計画2021』にも盛り込まれました。

6)ネット上での言葉の暴力との戦い

SNS上での言葉の暴力。攻撃者が有罪判決を受けるケースが相次ぎました。木村花さんのケースでは、木村花さんを追い込んだ投稿者に129万円の賠償命令。 ジャーナリストの伊藤詩織さんが漫画家のはすみとしこさんら3人を名誉毀損などで訴えた民事裁判では、はすみさんに88万円、はすみさんのツイートをリツイートした医師と漫画家の男性2人にそれぞれ11万円の支払いが命じられました。身体的な暴力と同様に、言葉の暴力も防がれる社会システムが構築されつつある…とまで言ったら楽観的すぎるでしょうか。

7)不妊治療への公的支援(拡充)

2022年4月から、不妊治療に医療保険が適用されることが決まりました。2021年度にも、公的な助成が拡充されています。生む人も、生まない人も、不妊治療で苦しんできた多くの方々にとって朗報かと思います。

8)企業の「開示」の進化

気候変動関連の情報を企業が開示する際のガイドラインは、既にいろいろ整ってきています。2021年はそれに加えて、Harvard Business Schoolがイニシアチブを取り、Impact-weighted Accout(インパクト加重会計)を作ろうという動きを広めています。日本でもその動きに呼応して、エーザイが「従業員インパクト会計」を発表しました。株主に対する利益がプラスでも、社会、地球環境、従業員に対するインパクトがプラスでなければ、企業が尊敬されない時代が来つつあります。

9) 男性育休の促進~改正育児介護休業法成立

男性の育休取得制度をしっかり作り、そして企業がこれを周知して従業員の意向を確認することを義務付ける制度ができました。2022年4月から施行です!ソーシャルセクター、企業セクター、そして政治が連携を取って、社会進化を起こすケースを、もっともっと見たいです。

10)五輪をめぐる「うみだし」とパラ五輪の衝撃

最後に、もっとも意見が分かれるやつです。

僕はオリンピックを東京でやれて良かったと思っています。「進化した社会」からはかけ離れた実体が明るみに出て、リーダーが交代し、そして最終的にはアスリート出身のリーダーがオリンピックを実行して大坂なおみが聖火に点火したという、あの一連の流れは日本の歴史の中で大きな「転換点」として語られるのかもしれないと期待しています。そして、パラリンピックですよ!皆さんご覧になりましたか?車いすテニスや車いすバスケの激闘など、通常の競技以上の迫力と興奮、感動を与えてくれた競技が続出しました。2021年は日本の障害者スポーツのターニングポイントであり、障害者福祉の歴史の中で大きなマイルストンだったと、振り返ってそう語られるようにしていきたいです。

以上、私の選んだ2021年社会進化10選でした。

「日本のことばっかりじゃないか!」と違和感を感じられた方、おっしゃる通りです。たぶんこの「10選」は、私のバイアスや狭い視野を反映させたものになっています。ぜひ皆さんの「10選」をぜひ、お伺いしたいです。10個選ぶのが面倒だったら、3個でも、1個だけでも、ぜひ。

ラストのラストに、一つ告知をさせてください。僕は「インパクト投資家」という職業は、まだ未知の社会課題にスポットライトを当て、イノベーションを探し、そして投資を通じて社会進化を加速する仕事だと思っています。今の自分は全くまだその域に達していません。でも素晴らしいチーム、多様性に富んだチームを作って、チームの力でこの「インパクト投資」という仕事の一つのモデルを作りたいと思っています。

KIBOW社会投資は今、仲間を募集しています。ご関心のある方はぜひ、こちらからご応募いただけると嬉しいです。

では皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?