あと少し、ギリギリを助けてくれる敏腕編集クロエ

夏がやってきた。夏がやってくるとどうなる?知らんのか?水着キャラが出る。

 というわけでFGOに夏がやってきた。
夏と言えば夏イベ、夏イベと言えば水着。FGOユーザーの石と財布を徹底的に搾取する圧政のシーズンである。
 特に今年は周年記念に水着モルガンが実装された上にピックアップ1ではアルトリア・キャスターの水着、ピックアップ2ではシナリオ・キャラ人気共に高い妖精騎士の水着とあって財布がシナシナになるまでしばかれた同志も多いのではないかと思う。

特にピックアップ2の妖精騎士の水着。ありゃ反則だろ。

水着サーヴァントは復讐者から同人女へクラスチェンジしたジャンヌ・オルタのようにオリジナルがカルデアに召喚されて時間が経ったことで性格態度共に丸くなるケースが多く、今回の妖精騎士もその例に漏れない。その上再臨ごとに衣装も異なり、イベントが始まる前はそのビジュアルで、イベント中は妖精國からさらに踏み込んだ内面の変化にお迎えしたい欲を刺激されまくったのではなかろうか。

かくいう筆者も夏イベは荒れるぞと今年の3月辺りからガチャを控えてシコシコ石を貯め、公式生放送の発表に狂喜乱舞しながらガチャを回した。
モルガンは当たり前のように欲しいし、アルキャスとひと夏を過ごしたいしメイドバーゲストを侍らせたいしメリュジーヌとビーチでまったりしたいしバーヴァンシーを守護りたい。

『走りだす その理由が 例えどんなに くだらなくても』

躍動を頭の中で響かせながら、高鳴る胸の鼓動に身を任せて10連召喚のボタンを押す。
イメージするのは常に最強の自分、アーチャーと肩を並べる俺。
『魔力を回せ!マスター!』
『石の貯蔵は十分か?』
『汝三大の言霊を纏う七天――』
『人理の轍より応えよ!』
『なんかじゃない…。水着鯖を迎えたいという気持ちは……間違いなんかじゃないんだから……!!』

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まあ結果は爆死も爆死。大爆死。星5は引けず、妖精騎士には見放され、モルガンとアルトリア・キャスターは星の内海に引きこもって出てこない。

『夏草や 兵どもが 夢の跡』

芭蕉の句がこんなに沁みることが現代であるんだ。
焼け野原で膝をつく切嗣の気持ちが良く分かる。正直今回の爆死レベルは8年のFGO歴のなかでも2位にランクインするだろう。
わからん、3位かもしれない。
辛い過去は都度忘れるようにしてるからね。こんな時人間に忘却という機能をつけてくれた神に感謝したい。

 正直このレベルの爆死だとモチベーションは最底辺、スマホを投げ捨てヤケ酒かっ食らってから不貞寝してイベントは最低限ミッションクリアくらいが関の山なのだが、なにぶん今回のイベントは奈須きのこの書き下ろしだ。

しかも濃縮還元100%きのこ成分の第6章のアフターとも名高いとあればやらない選択肢はない。
水着妖精騎士が登場するたび、モルガンのクーデレっぷりを目の当たりにするたび、無邪気なアルキャスの笑顔とテレ顔を拝むたびに引けなかった後悔に心を砕かれながらシナリオを読み進める。

いや良かった。
やっぱり奈須きのこは、FGOは最高だ。水着を引けなかった後悔はあるものの、読了後の充足感に浸りながらイベントの周回準備を始める。
気づけば水着が引けず大暴落していたモチベーションはすっかり元通りになっていた。

そして配布のヤラアーンドゥでも育てようかとサーヴァント強化画面を開いたところ……

おるやんけ

星5が1枚も出ないショックですっかり忘れていたが、ちゃっかりピックアップ1で鈴鹿御前とクロエ・フォン・アインツベルンを引いていたのだ。

救いはあった。オタクに優しいギャルは存在したんだ。

ありがてぇ…褐色万歳。気分はもう縁側の切嗣である。
切嗣のように絶望した俺の夏は切嗣の最期のような満足感で終わった。

とりあえずため込んだ種火を一気に注ぎ込む。
馬鹿なので普段はビジュアルみてガチャ回して引いてから性能を確かめる上に星4は流し読みしかしないのだが、今回はかみしめるように性能を確かめる。
そして気づく。

アレ?クロエめちゃくちゃ強くね?

宝具は星4らしい捻りがあるものの宝具自体に火力バフが2つ乗るので火力も出しやすく、アヴェンジャーのクラス補正、さらにスカディのようなクイックサポーターと合わせれば優秀なアタッカーになるだろう。

しかしそれ以上に

これ。スキル。これが強い。
色々長いこと書いてあるが、大事なことを要約すると
スキル1:全体に火力20%バフ
スキル2:ターン終了後控えに戻る時間差オーダーチェンジ
スキル3:全体に宝具威力20%バフ

である。
他も強いがそれは一度割愛するとして、まず第一に大事なのが上記の性能である。
まずスキル1と3の純粋な火力バフ。バスターなどの色ではなく火力と宝具威力の底上げは汎用性が高く、特に宝具バフはオベロンのスキル3の恩恵を受けれるので相性も良い。

 そして何よりクロエを特別たらしめているのがスキル2『差し替え間に合いますよ』の疑似オーダーチェンジ効果である。
 正直デカい声でスキル1と3の全体バフが強いとは言ったもののその数字は各20%の計40%。
いわゆる人権と呼ばれるサポート系サーヴァントのバフがスキル1つで50%であると考えるとバフの数値自体は高くない。

例えばサポート系サーヴァントとしてFGO環境の黎明期を駆けたマーリンはいまやオベロンやコヤンスカヤといった面々に押しやられているものの、20%の全体火力バフと50%の単体バスターバフを持っており、そのバフ数値は計70%とクロエの1.75倍の火力バフをかけることができる。
 つまりバフ要員として置くだけならクロエよりもマーリンの方が良い訳だが、ここで効いてくるのがスキル2の疑似オーダーチェンジ効果というわけである。

 自分でターンの終わりに控えに戻ることによって自分(クロエ)のバフを使い切ったあと別のバッファーにバトンタッチ。そしてそれとは別にマスタースキルであるオーダーチェンジでさらに新しいバッファーを控えから連れて来る……。
これによって『既存のシステムPTに計40%の火力バフを上乗せ』できるのがクロエの真の強みであり、やりたいことの邪魔をせずしっかりサポートしてくれる、彼女が敏腕編集者である所以なのである。

FGOも8周年も迎えシナリオやイベントの攻略が徐々に難しくなってきた。金フォウはもちろん聖杯転輪にコマンドカード強化、クラススコアの実装とより既存のキャラを育てられる要素が増え、それに伴って手持ちサーヴァントの地力の強さを求められているような気がする。
 イベントの周回だってできれば90++で回したい。だって効率厨だから。でも今回のように毎回特攻サーヴァントが引けるわけでもない。
好きなサーヴァント、育て上げたムッキムキのサーヴァントを使ってもあとちょっと火力が足りない。安定しない。
 ああでもないこうでもない、考えに考えた末あとちょっとだけ火力が足りない。くそぅ!俺はなんてダメなマスターなんだ!そんな時に現れたのが敏腕編集クロエ。
40%の火力バフはギリギリな時に光り輝いて見える。

 ありがとうクロエ。君の存在で確かに救われたマスターがここにいる。
使えるアタッカーの幅が広がったことで編成を考えるのが滅茶苦茶楽しかった。
良い夏を過ごさせてくれてありがとう。

・・・・・・・・・。

発注側もイカれてるけど寸分の狂いなく要望に応える受注側もイカれすぎだろ。

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