夏休みの読書感想文『不倫と結婚』

駄文です。

Esther Pelel 著、高月園子訳『不倫と結婚』を読んだ。筆者は18歳でまだ結婚はもしできたとしても当分先であろう年齢で、当然不倫という単語を体験をもって理解したことはない。仲の良い友達が結婚したという話も未だ聞いたことがない。しかし恋愛という概念を考えるのが好きだ。人間は皆この手の話題が好きなのかもしれない。恋愛感情って面白いものだと思う。数多の感情の中でもこれほど人間の原動力となりうるものはあまりない。それは一人では抱えきれないパワーとなり、自分や周りを幸せにしたり深く傷つけたり、喜びになったり性欲になったり憎しみになったり鬱になったりする。『不倫と結婚』では、多様化し変化していった性や結婚の形について述べられており。結婚生活というものを未だ知らない自分も興味深く読み切れた。面白い本だったという話を今からします。内容にも思いっきり触れるためこだわる方は読まないほうが良いかと思います

この本の著者はニューヨークでは有名な作家・心理療法士らしい。作中では著者がさまざまな人に聞いた不倫の体験談を述べ、中立な立場から不倫という、タブーでありながら消えることのない、しかも曖昧な概念について触れていく。その体験談は様々で、不倫をする側される側の言い分はもちろん、それが原因で離れたもの、それでもそのまま続けたもの、逆に地固まったもの、計画的なもの、衝動的なもの、パートナーとは違う性の人とした不倫など。多岐にわたるエピソードから不倫という概念について迫る。そして本当にたくさんの人間が悩み苦しんできたであろう「不倫」の本質に迫っていった。

不倫とはなにか

不倫について語る前に不倫とは何かを固めなければ話しようがない。しかし、昨今の結婚・不倫事情はあまりにも複雑化している。そもそもパートナーが異性とは限らないし、性の多様化も受け入れられ始めた。結婚は宗教的な土台から外れ個々人によるものとなったために浮気・不倫の定義も二人で決めなければならなくなった。まずこの定義というのが難しい。不倫の定義を完璧に正確に行うことは絶対にできない。セーフとアウトの境界線は試行錯誤で決めていくしかないからだ。その中には絶対に価値観の相違は存在するし、理解できない事象にまで取り決めすることは出来ない。しかも昨今のインターネットの普及によって、家から出なくても不倫あるいはその機会を得ることができてしまう。それほど手軽にできてしまい、なのにパートナーを残酷に傷つけ結婚生活を根底から破壊することができる不倫とは恐ろしいものだ..

まず結婚からどんなものかを見て行こう。古くは結婚は義務であり、相手は共に生き抜く戦友のような存在であり、生活のための仲間だった。こんにちではそれは、恋愛の延長線上であり、精神的な支えであり、情と愛をベースにした「選択」であり、唯一の性欲の相手である。よって、結婚のベースにあるものは絶対的なものから不安定なものとなる。(ロマン主義)
そのため、欲や、長年のいがみ合いや、セックスレスや、自己のアイデンティティの再編成などを理由に簡単に不倫という形に現れ、それが露呈すると内側から簡単に幸せな結婚生活は崩れ去る。人間は未来は予測できないが、その分過去の記憶を信用する。自分だけを愛してくれていたという記憶は一瞬で塵となり、嫉妬心に狂い或いは復讐に走るだろう。しかしその裏にある背景は汚いものばかりでなく、幼いころの記憶や恋愛観の変化などもある。本人が自覚できない要素が不倫の引き金となっている場合も多く、それが尚更パートナーを傷つける。

不倫はワンナイトと異なり情が介入する。情熱とは不倫において恐ろしいパワーをもたらす。時に自信となり、時に情熱的な性欲となり、時に恐ろしいほどの残虐性となる。そうなってしまうともう個人では解決不能な力となる。安定には刺激が足りず、不安定には安心が足りない。そして恐ろしいことに、それはお金さえあれば簡単に手に入ってしまう。しかも秘密の関係という名前をもって。

不倫は悪か

多くの場合不倫は悪である。それは法的に悪であり、倫理的に悪であるから。前述のようにあまりに残酷に人の心を壊す。さて、では不倫は絶対悪だろうか。不倫を絶対悪とすると不倫の一面しか見ることができない。それがこの本と他の不倫論との差である。なにも雨降って地固まるという綺麗事の話ではない。不倫を絶対悪とすると二人のうちどちらが悪かが決まってしまうということだ。「夫婦は親友であり、悩みを打ち明け合う相手であり、おまけに情熱的な恋人であるべきだと信じている。」人はパートナーに期待しすぎている。そして不倫は相手のせいだ裏切りだと考える。別の人に気持ちが動いたのだと。この本では不倫は「違う相手」ではなく「違う自分」を求めて不倫をすると説く。不倫は自分に自信をもたらしたり、失った情熱を取り戻したりする。それを他人が、時には自らも理解することはなく、そうして話し合いに行き違いが起こる。不倫された側も多くの感情が押し寄せてきて建設的な会話などできやしない。現代では、結婚の形は多様化し広まっているのに対し不倫・不貞には厳しくなり狭まっている。

不倫は悪だが絶対悪ではない。不倫の存在は嫉妬を呼び結婚生活を長続きさせ、不倫は結婚生活の問題を浮き彫りにしてくれる。不倫が起こらないためにどのように考えていけばよいかは本書を読んでいただきたい。様々な体験、考え方が見れて面白かったです。

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