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レイヴンファームについて

レイヴンファームは岡山県岡山市にあるちいさな畑です。
家庭菜園にはちょっと大きすぎる程度の規模で、固定種(そのたねを育てると親と同じ形質の野菜が育つ)の野菜をたねから育てています。品種選びの基準は、オーナーの私と家族が食べたいかどうか。
私は葉物の栽培が苦手で、特に白菜やキャベツなどのアブラナ科は何度も失敗していますが、それでも毎年白菜だけは育てています。それは大好物の菜の花の辛子和えを、シーズンに何度も、心ゆくまで食べたいから。葉っぱが多少虫に食われようが、結球しなかろうが、菜の花を収穫できればOKです。たねを蒔いてから食べられるまで半年以上かかっても食べたいのです。ちなみにアブラナ科の野菜の花を総称して菜の花と呼んでいますが、私の菜の花1位は柔らかくてほんのり甘く食べ応えのある白菜、2位はクリーム色の花弁で葉っぱ同様の風味とさわやかな辛みがサラダにぴったりなルッコラです。

白菜
ルッコラ

どちらもスーパーではお目に掛かれないか、見つけてもちょっと高めで手を出しにくい食材です。旬の野菜を一番乗りで好きなだけ食べられるのは、育てる者の特典ですね。

ところで、私のパッションの一つはおいしいものを食べることとおいしいものをおいしいと知ってもらうことです。
“おいしいものを知る“ というのは、まだ見ぬ珍しい野菜やローカルにしか出回らない旬の野菜、「こんな食べ方があるのか」というおいしさの新発見です。私自身、留学していたアメリカでおいしいものをたくさん知りました。初めてアーティチョークを食べて以来大好物になったり、馴染みのなかったビーツのおいしい食べ方を知ったり、ホームステイでお世話になったフィリピン出身のママが作ってくれたチンゲン菜の炒め煮にはまり何度もおねだりしたことも、サンドウィッチの付け合わせのフライドオクラに感動したり、スーパーの惣菜コーナーで見つけたマッシュルームのピクルスを真似して大量に作っていたこともあります。

輪切りにして衣をつけるフライドオクラ

反対に、日本では食べ応えの割に安い白菜がアメリカでは1玉6ドル(当時1ドル=約108円; 650円前後)もしたり、大根がどこにも売られていなかったり、きのこがいわゆるマッシュルームと巨大なシイタケしかなかったり、と大したことではないですが食の豊かさや多様性について考えるきっかけがたくさんありました。同じ日本にいても、他県を旅すれば見たことのない食材を道の駅で見つけたり、同じ野菜でもローカルならではの激安価格でゲットできたり、畑に植えられている野菜の種類も地域ごとに異なっていていつもわくわくします。さらに言うと、一軒一軒夕飯を尋ねたらご近所さん同士でも食べたことのない料理が見つかるはずです。私はこれを「我が家のカレー」と呼ばれるものに通じると考えており、野菜にも言えることだと思います。同じ品種であっても生育環境や栽培方法が違えば、それぞれ異なる個性を持った野菜に成長します。食の好みは人それぞれですから、絶対とは言えません。それでも、今日は何を食べようか?と良い意味で迷ってしまうような、おもしろくておいしい野菜たちを紹介していけたらと思います。

上から、群馬県片品村の道の駅で購入した花豆
安すぎて怪しんでしまったドライ洋ナシ
ローカルの友人も見たことがなかった絶品ヌメリスギダケモドキ

私のパッション二つ目は、エアルーム野菜を広めることです。
エアルーム(heirloom)は「代々受け継がれるもの、家宝、財産」という意味のアメリカで使われる英単語で、イギリスでは同じ意味でヘリテージ(heritage; e.g. 世界遺産は world heritage)が使われます。家宝や財産と聞くとモノを想像しますが、アメリカのガーデナーたちは一部の貴重な野菜や果物の品種とそのたねを「エアルーム」と呼んでおり、大きなカテゴリーでは固定種に分類されます。私が解釈したエアルーム品種の定義は、固定種の中でも①先祖代々一族やごくちいさなコミュニティの中だけで限定的に栽培されてきた品種であること、②その歴史が1940年代(WW2)までに少なくとも50年以上(中には数百年も)続いていたこと、③②の期間中たねや農産物が非営利目的で栽培・取引されていたこと。ただし、文献によってエアルームの条件は微妙に異なっています。「50年経ってなかろうがこの野菜はうちの家宝だ」と言われれば、確かにその通り!全く異論ありません。
上記の定義①~③は、あくまで私がエアルームについて言及する際に、こんな野菜について喋っているよという自身の中での決まり事です。ではなぜ決めてしまうのかというと、この定義に当てはまる野菜に私が壮大なロマンを感じているからです。

レイヴンファームは営利な栽培をしているわけですが、育てているのは先人たちが大切に大切に受け継いできてくれた品種です。
例えば、1900年代にアフリカンアメリカンの画家Pさんが毎年欠かさず育てていたフィッシュペッパーや、ネイティヴアメリカンのチェロキー一族が代々大切に守ってきたチェロキーパープルトマト。
また、前述したエアルームの定義には当てはまらないものの、日本と世界各地で愛されてきた伝統品種(固定種)も驚くほどたくさんあってそれぞれ個性に溢れています。
私の主観でイメージすると、ヴィンテージを好む感覚が近いと思います。違う時代に生きた知らない人たちや行ったことのない海外の田舎町を、野菜を通して感じる(感じた気になるのもOK)ことは、少なくとも私の家族・親戚・友人の食卓をちょっとだけ豊かにしています。

レイヴンファームは、最近少しずつマルシェに出店できるようになってきました。皆さんが質問してくださるので、野菜の特徴やおすすめの食べ方をできる限りお話ししていますが、とても時間が足りません。しゃべり下手なこともあり、何か方法はないかと考えてnoteに書いてみることにしました。知っている人には物足りない、かといって野菜を育てていない方には馴染みのない用語がたくさん出てくる、読む人を選ぶ内容になると思います。
それでも読んでくださる方には、私が言う「この野菜おすすめですよ!」に含んでいる説明しきれない部分を満載して届けたいと思います。


次回はレイヴンファームのロゴについて

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