見出し画像

死を、想う。〜END展レポ&コミックレビュー

2022/6/7 二子玉川ライズの「END展」に行ってきました。
キッカケはこちらの、しおばらさんの記事から。
しおばらさん、すごく良い展示会でした。ありがとうございます😊↓


END展とは……

「死から問うあなたの人生の物語 公式サイト」

……普段あまり考えることのない死について思いをめぐらせる機会を創出する展覧会です。会場では、死や人生に関するさまざまな問いを軸に、テーマと関連する「名作漫画のワンシーン」をセットで展示します。
ひとつひとつの問いと向き合う時、それぞれの心のなかで、自分自身も気付いていなかった思いやアイデアが浮かんでくることでしょう。そのとき、家族や友人など、大切な人と対話を始めたくなるかもしれません。
上記サイトより抜粋

……というわけで「漫画」と「死」。これがメインの展示ってことで、それは闇夜のカラスとしてはいかねばなるまい!というね。

行ってみると、展示会ではよくある「識者の解説」は、ほとんど無く、ひたすら淡々と以下のものが展示されていました。

①漫画と問いとアンケート結果
②死体の変遷を表すパネル
③投票
④漫画が表示されたタブレット
⑤漫画の大きな垂れ幕
⑥とある仕掛けのある複数台のスマホ
⑦参加型ブース

とにかく漫画のセレクトが素晴らしいと感じました。未読のものも、これからぜひ読みたいです。

会場はこんな感じ。津田大介さんのツイートから


平日の11時〜という時間帯にも関わらず、けっこう多くの人が(年齢20〜30代の人が多い印象です)熱心に鑑賞していました。

ここで提示されている作品は、おざわゆきの「傘寿まり子




ちなみに、闇夜のカラスの趣味はコミックレビューであります。


この記事は、主なアンケートの問いと共に、漫画紹介をメインにしようと思い立ちました。おおがらすがレビューしている作品は、それもついでに貼っていこうと思います。
(注※展示の画像によっては不明瞭、または切れてるものもあり、数字は厳密ではない可能性があります。あとコミック部分はスマホからだと見えずらいかも。すみません)

名付けて「END展にGO&コミックレビュー
かたがた、では参ろうか。


①「問い」と「漫画のワンシーン」と「アンケート結果」

お葬式はこれからも必要でしょうか?

必要……29.7% 
おそらく必要……19.5%
わからない……22.9%
おそらく不要……12%
不要……15.4%



死後に何かを持っていけるとしたら、何を選びますか?

記憶……37.4%
思考……19.6%
五感……8.4%
感情……6.3%
何もいらない……13.2%
その他……15.1%


どんな葬送の方法がいいですか?

火葬……49.3%
樹木葬……35.1%
散骨……26.3%
宇宙葬……22.7%
堆肥葬……17.3%
土葬……12.5%
その他……15.3%



もし死者とVR上などで会うことができるとしたら会いたいですか?

会いたい……26.7%
少し会いたい……17.9%
どちらでもない……12.8%
あまり会いたくない……7%
会いたくない……13.2%
そう思う時が来るまでわからない……21.6%



死者はすぐそばにいると思いますか?

思わない……30%
あまり思わない……13.8%
わからない……18.3%
多分いると思う……21%
いると思う……16.9%


葬儀場や遺体安置所など、死を想起する場所は、居住空間と分けるべきでしょうか?

分けた方がよい……17.8%
できれば分けた方がよい……30%
わからない……35.9%
できれば分けない方がよい……8.8%
分けない方がよい……7%


生まれ変わりたいですか?

来世が選べるなら生まれ変わりたい…22.2%
自分のまま生を終えたい……14.7%
生まれ変わっても自分がいい……12.6%
生まれ変わりなどはない……12.6%
わからない……7.2%
その他……30.7%



死後の世界で、あなたが信じているものはありますか?

死後の世界……34.4%
天国……15.8%
地獄……12.4%
宗教的軌跡……11.7%
祖先の霊的な力……39.2%
いずれも信じていない……33.7%
そのほか……13.2%


死後、自然物の一部になりたいですか?

なりたい……40.8%
少しなりたい……14.6%
どちらでもない……27.5%
あまりなりたくない……4.5%
なりたくない……12.6%


② 「死の変換」を表すパネル

ゴールデンカムイを過ぎたところにある大型のパネル。
自分の愛する存在の遺体を食べられますか?」の垂れ幕がとなりにあります。

パネルの後半が切れちゃいました。すみません。

右上のキャプションを書き出してみます。

「死を変換する」
大須賀亮祐+中根なつは+野島輝
自分の愛する存在が亡くなるとき、死後どのような形に変換されていくかを想像したことがありますか?ー(略)ー遺体が焼かれて灰になり、つちにまかれて、そこから作物が育つ。あなたなら、どの状態であればそれを「食べられる」と感じるでしょうか。それらの許容意識は死者との関係性、信仰、生活などの分岐点があります。来場者の皆さまにとって死の「タブー」はどの地点から分岐し、形作られているのかを可視化する試みです。

愛犬の死をきっかけに制作されたということです。
遺体→火葬→灰→土→作物→動物→情報
死から、他の生き物の体内にとりこまれていくサイクル。死んでしまった存在と私たちの共生関係を再考させる、とのこと。
「熱」の先は、電気→情報(コンピュータなど)へ、繋がっていきます。

……そして、これを踏まえた投票がありました。

③投票

カラスは「灰」に投票しました。「遺体」は「火葬後の骨」を指します。
皆さんはどうでしょうか?

もうひとつの投票のとなりには、さくらももこの「コジコジ」が提示されていました。

カラスは「NO」に投票しました。
そして「YES」の多さにおどろきました。えええ、もう一度自分をやりなおしたいってこと?私はどうせなら違う国の違う人間になってみたいですけどねぇ……。
やっぱなんだかんだ言って、日本はわりと安全だし、食べ物も美味しいからですかね。


④漫画が表示されたタブレット

バーチャルで再現された人格の葬儀とは
ようこそ!わたしの葬儀へ!」(小沢高広/妹尾朝子)
テクノロジーが実現した死後の世界
国が富士山に天国つくったってよ」(しりあがり寿)

両方とも短編で、この展示会の関連書籍に収録されています。
もうひとつ「デジタルヘヴン(宮本道人/ハミ山クリニカ)」という作品もあったようです。写真とってなかった💧
収録書籍の情報は、最後に記載しておきます。


⑤漫画の大きな垂れ幕

大きな垂れ幕にも、名作漫画の一コマが大きくプリントされて、会場を彩っていました。個人的には「攻殻機動隊」があったのが、嬉しかったです。
あと「青野くんに触りたいから死にたい」主催者さまの目のつけどころが素晴らしい。

攻殻機動隊(士郎政宗)」
バトー: 俺は死んだら「死後の世界があるかどうか」判るけど、おめーは半不死だからな……
フチコマ(ひとり乗りのAI搭載戦車) :ソフトを消去したら死ねるよん、へへん!
フチコマ: バトー君死んだことある?
バトー: 俺みたいな、いい男は死なないの!


青野くんに触りたいから死にたい」(椎名うみ)
主観的すぎるレビューで申し訳ない


ランド」(山下和美)


……垂れ幕はほかにも大島弓子「ダリアの帯」五十嵐大介「海獣の子供」星野之宣「ヤマタイカ」市川春子「宝石の国」萩尾望都「トーマの心臓」あと水木しげる、諸星大二郎などがありました。うーん渋いセレクト。選んだひとは私と同じ世代じゃない?などと、勝手に想像。
主催者と趣味が似てるって感じられると、観ていて嬉しいですよね!


⑥とある仕掛けのある複数台のスマホ

さて。
展示の一角に黒いカーテンで覆われた真っ暗な部屋があり、中に入ると、闇の中に浮かぶ複数のスマホが展示されています。
見ているとリアルタイムっぽく、文字が次々と浮かび上がってくる。打ち込まれたかと思えば、消えたり修正されたり。
まるで、透明人間が、たった今、文字を打ち込んでるみたいに。

この仕掛けはドミニク・チェン+遠藤拓巳による「10分遺言」というインスタレーション。
執筆プロセスを記録、再生するソフトウェアで、自分の死を想定して、誰かが誰かにあてて書いた文章が収録されているとのこと。

……ここで一気に「自分の身近にいる(かもしれない)人間の、体温を感じる言葉」が、ぐさりときます。
こ、これは強烈だ。中学〜高校生くらいの子が観たらめちゃ心に刺さりそう。


⑦参加型ブース


ひととおり展示を見てまわった最後には、みんなで参加しよう!コーナーが設置されてました。
壁を埋め尽くす声、声、声の数々。

死ぬまでにやってみたいことはありますか?

これともうひとつ「あなたの人生の中で、死に関する印象的なエピソードがあれば教えてください」というボードもありました。
時間がなかったのと、さっきのスマホでかなりキていた私はスルーしちゃいました💦
あー見とけばよかった。残念。
ちなみに私の「死ぬまでにやってみたいこと」は「歴史に残るようなコンテンツを作ること」(とりあえず言っとく!言うだけならタダ!)

展示会の入り口付近には、キービジュアルを担当した五十嵐大介の漫画の原画が展示されていました。ファンとしては胸熱!!
撮影禁止なので写真はないですが、公式サイトの画像はこちら。
関連書籍に収録されています。「遠野物語」を下敷きにした幻想的な短編です。


関連書籍「死から問うテクノロジーと社会」

タブレットに入っていた漫画短編三本を収録した論集。
Amazonで購入できるようです。電子書籍もありますが、私は本を買いました。

表紙ももちろん五十嵐大介!


五十嵐大介は映画の予告動画を貼っておきます。(2019公開/studio4℃)
まさに圧倒的な映像美!未見の方、おすすめですよー


◆おわりに

「死」は毎日、夕方のニュースで報道されていますよね。
「本日の感染者数と死亡者数」
……なんか麻痺してる感ありますが、毎日、何百人もの人たちが病院に搬送されて、多くの人がエクモに繋がったまま、または繋がらずに、亡くなっている。
アジアでは、ウクライナとロシアが戦争をしている。
きっと毎日、何人も(何十人も?)亡くなっています。

身近におこってしまったら悲しい、怖いのが「死」です。
目を背けたくなります。
けど、この展示を通して、今いる私たちの世界の中から「死」だけを分けることはできない。それは世界のサイクルの一部なんだ。という視点で見ることができる気がしました。

まあ、あまり近くにはきてほしくないですけども……
それでも「死」にまつわるドラマには、心惹かれずにはいられない私がおります。

「END展」の刺激的なユニークさ、私の興奮、伝わりましたかね?
二子玉川の展示は終了してしまいましたが……またどこかの機会でやるかもしれません!
その時は、足を運んでみることをおすすめしたいです。

宝石の国」(市川春子/講談社)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?