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コンビニを出る、美少女と出会う【#1000字ドラマ】

「おにーさん、寝不足ですか?」
 深夜、コンビニから帰る途中の俺に声をかけてきたのはショートボブの美少女。華奢な腕、黒のレギンスパンツは魅惑的な脚のラインを強調している。
 俺は一瞬、彼女に見惚れ、直ぐに我に返った。確かに徹夜三日目だけど、そんな見て分かる?もしかして匂う?ヤバい、いやむしろラッキー?頭の中で言葉がグルグル回る。美少女は眩い笑みを浮かべ
「いきなりでごめんね。私、何となく寝不足の人って分かるの。なんか溜まってるなぁって感じ。ね、スッキリしたくない?」
「!? ……え、もしかして風俗の勧誘?デリヘル?うち超汚いし女の子なんて家に呼べない。つか仕事、いま佳境でちょっと無理……ほんとマジで残念なんだけどっ」
 我ながらテンパってて情けないけど、実際そうなんだから仕方ない。俺は自宅方面に足を踏み出したが、美少女はすばやく腕を絡めてきた。
「そんな時間かかんないから!家じゃなくて、その辺の物陰でいいから!」
「物陰って、君みたいな若い子が、自分を安売りしちゃダメだよ」
 と言いつつ内心、かなり動揺する。触れた部分の柔らかな感触と、甘い香りが、寝不足の脳みそと股間に強烈に作用する。ヤバい抑えろ相手は未成年……。
「ちなみに、私、未成年じゃないよ、ほら問題なし!」
 それを聞いて俺の足は鈍り、ついに立ち止まる。彼女は俺の手を取って
「こっち!公園あるから」
 と、歩き出した。

 俺の手を引いたまま、彼女は公園に着くと迷いの無い足取りで、道から外れた雑木林の中に入ってゆく。彼女は奥の方へ俺を引っ張ってゆき、ふいに立ち止まるとこちらに向き直った。
「お待たせ。じゃ、始めよっか」
 俺の鼓動は早まり、ゴクリと唾を飲み込んだ。彼女は俺にピッタリ身体を寄せると、俺の顔を両手で挟み、囁いた。
「ねぇ……おくち開けて?」
 手からコンビニの袋が足元に落ちた。彼女の細い腰を抱き寄せ、顔を近づけた時、彼女は片手で俺の顎を掴み、もう一方の手を俺の口に突っ込んで来た。
「ッ、せーのぉ」
 彼女は掛け声と共に、俺の口から何かを引っ張り出した。俺は驚愕する、何だこれは。はらわたが引きずり出されるような感触、喉も口も塞がって声が出ず、苦しさに涙が滲む。出てきたそれはズルズルと長く伸び、俺はそれに引っ張られて前によろめいた。一メートルほど伸びた所で、きゅぽん!と音を立ててそれが抜け、俺は崩れ落ちるように座り込んだ。

 彼女の手に握られているのは、透明な蛇だった。彼女は身をくねらす蛇の尻尾に食いつき、湿った音を立ててそれを吸い込んでゆく。

 最後に蛇の頭が吸い込まれ、ゴックンとそれを呑み込むと、舌で唇を舐め、恍惚の表情を浮かべてこう言った。

「ゴチ」

 そして呆然と見あげる俺にニヤリと笑いかけ、身を翻して闇の中に消えていった。

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