著名投資家に学ぶ:賢明なる投資戦略

未知の経済の動きや不確定な先行きを、どう読み解くか、我々は常に想像を巡らせています。しかし、多くの場合このような推測は、はずれてしまいます。一方、成功した投資家たちが示す、成功の道筋を学ぶことは、具体的かつ再現性のある投資スキルを手に入れる確かな方法です。これは投資で成功するノウハウを築くための、重要な一歩となります。


第一章: バフェットの石油投資動向


バフェットの石油株の投資履歴(2019)

近年、バフェットが石油に手を出し始めたのは、2019年にオキシデンタル・ペトロリアムによる米石油会社アナダルコの買収を支援した時です。これは配当利回り8%の永久優先株とワラントを取得するかわりに100億ドルを投じたものです。
この時点での、株主への手紙でバフェットは石油価格は長期的に上がると述べています。 つまりこの時点でバフェットは石油に対しての強気の材料を考えていたということです。

バフェットの石油株の投資履歴(2021)

CVX(シェブロン) 41億ドル

バフェットの石油株の投資履歴(2022)

2022年でバフェットは石油株を大きく買い増ししている、この時のバフェットの石油投資は非常に目を見張るものがある。
第1四半期
CVX 240億ドル
OXY 27億ドル
その後
複数回OXYの買い増し
ここまで大きく買い増ししたのは非常に自信のある戦略があったとみるべきでしょう。

バフェットの石油株の投資履歴(2023)

CVX を約20%程売却し調整、OXYは買い増しを進めています。
その上でのポートフォリオを視覚的に表すと以下のようになります。

BerkshireのPF(2023/3/31時点)

参照元: https://www.cnbc.com/berkshire-hathaway-portfolio/

上記のPFを見ると、Chevron CorporationとOccidental Petroleum Corpがバークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中で9.2%を占めています。これらの石油関連企業の存在は、バフェット氏がエネルギーセクターに一定の価値を見出していることを示しています。

第二章: 石油産業の現状とその未来

ではバフェットが注目する石油産業の現状を分析します。

先進国が目指す脱炭素

  1. 石油から再生可能エネルギーへ: 多くの国々で再生可能エネルギーへの移行を推進し、電気自動車の普及などにより石油への依存度が徐々に低下させようとしています。これは、二酸化炭素排出量の多い石油を無くしていくことを目標としているからです。さらに、化石燃料に対する増税を進めており、それがさらなる石油消費の減少を後押ししています。

  2. 持続可能な社会: 環境への影響を考慮したビジネスモデルが重視されるようになっており。これに伴い、石油会社は従来のビジネスからの脱却を図り、炭素排出を減らす努力義務を課せられたり、金融機関からお金を貸してもらえなくなっています。

総じて、石油産業は大きな変革期に立たされています。その未来は、石油依存度の減少と持続可能なエネルギーへの移行を考えなければいけないのかもしれません。しかし、これは理想論であり、再生可能エネルギーへの完全な移行は、時間と莫大な資金が必要とされます。また、開発途上国では、経済の成長とともに石油の需要が増え続けているという現実もあります。以下に、これらの観点について詳しく説明します。

行き過ぎた脱炭素による歪

  1. 再生可能エネルギーへの移行は短期では無理: 石油から再生可能エネルギーへの移行は、エネルギーインフラの転換、法律・規制の改革、新たな技術の開発・採用、そして人々の行動や意識の変化など、多くの要素が絡み合う大規模なプロジェクトです。これらの要素が一度に解決されることはなく、そのプロセスは長期にわたります。その間、石油は依然としてエネルギー源としての重要性を保つことになります。

  2. 需要の増加: 2023年現在でも、世界の多くの地域では石油の需要が増加しています。特に開発途上国では、経済成長に伴うエネルギー需要の増加、輸送・製造業の発展、そして生活の近代化などにより石油の消費が増えています。また、石油はただエネルギー供給のみならず、プラスチックや化学製品の原料としても使われており、これらの需要も石油消費を牽引しています。

  3. 供給の減少: 現在石油会社の多くは石油開発に大きな投資をしなくなりました。これは、石油がなくなるものとして社会が扱っており、座礁資産になると言われているからです。いずれなくなるものに投資することはできません。特にアメリカの石油会社は設備投資より株主への還元に力を入れるようになりました。     

以下のことをまとめると、世間では持続可能な社会を求めて変革を行っているが実態がついてきておらず。実態がついてこないのに化石燃料に対する金融の引き締めが発生し需要は減ってないのに供給が減りつづけるという歪なエネルギー供給構造となっている。ここにバフェットの狙いがあるのではないかと考えます。

第三章: バフェットの考えと狙い

1. 化石燃料の上流投資の不足

近年、バフェットが石油に手を出し始めたのは、2019年のオキシデンタル購入。 この時点での株主への手紙では石油価格は長期的に上がると述べている。 つまり.この時点で手に入る石油の材料を考えるべきで、それは石油上流設備投資の不足と考えられます。こう考えた原因は石油の上流投資は 2014年からとんでもない額減少している点です。ずっと減り続けている石油上流投資ですが、それはコロナでさらに減りました。

石油は生産のリードタイムが5年といわれています。 2020年の5年前、つまり2015年の設備投資の減少から、石油の値段の長期高止まりを見込んで、バフェットはオキデンタルの株を買いに動いていたと仮定するのが整合性が取れた仮説になると思われます。そして2022年に更に強気に投資しているのは、石油設備の投資が減り続けて、供給が追いつかないというのがわかっていて、更にコロナの上流投資不足でこれから致命的な影響が出ることを分かっているからなのかもしれない。2020年の投資不足による供給不安はは2025年に顕在化してくると見ているので石油株を買っているのでは?

2. 石油備蓄の減少

米国エネルギー省は2022年に、石油戦略備蓄(SPR)から石油を売却すると発表しました。アメリカが2022年に大規模な石油備蓄の放出に踏み切った背景には、高騰するガソリン価格を是正する狙いがありました。また、ロシアによるウクライナ侵攻が続いており、米国が経済制裁としてロシア産の輸入を禁止したことなどから原油価格は上昇基調を強めていました。今回の放出はおよそ50年前に戦略備蓄制度が導入されてから最大規模となりました。(下記参照)

参照EIA: https://www.eia.gov/dnav/pet/hist/LeafHandler.ashx?n=PET&s=WCSSTUS1&f=

3. ロシアウクライナ戦争の影響

ロシアはヨーロッパに大量の天然ガスを供給しており、その大部分がウクライナを経由しています。戦争はこの供給ルートを混乱させ、ヨーロッパ全体のエネルギー供給に影響を及ぼしました。もうヨーロッパは長期的な戦略にロシアを入れることはできず、ヨーロッパ諸国はエネルギー供給をアメリカや他の場所から天然ガスの輸入を増やすことになり、これが世界のエネルギー構造を大きく変えています。

結論: バフェットの石油株投資の意義

あまりにも過激なESG運動とコロナが起き、商社も石油株も座礁資産扱いされて、なくなるものとして扱われてきました。しかし、バフェットはそう考えていない。むしろこれからも経済の中心であるだろう物が、座礁資産として低いバリエーションを付けられていることにチャンスを見出しているように見えます。
石油が高騰したら一番貧しくなるのは石油が取れない国に住む国民です。それはもちろん日本も含まれます。これに対して我々ができることは石油株や商社を購入して資源リスクに対するヘッジをすることです。 バフェットが見ているインフレの時代に粛々と準備をしていく。

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