原田芳雄さんの特集上映に行ってきました2
前回の日記の続きです。
『出張』の上映が終わって会場が明るくなり、観客からは自然と拍手が湧き起こりました。
エンドロールの最中、終わったら拍手したいなぁと思っていたのでナイスと思って自分も人一倍拍手をしました。
いや、人一倍ってことないか。普通に心を込めて拍手をしました。
そしてスクリーンの手前のステージに、劇場スタッフさんの手で椅子が三脚置かれていきました。
石橋蓮司さんのトークショーなのですが、他にお二人いらっしゃるようでした。
お一人は山根貞夫さんです。
もうすぐ発売になる『俳優 原田芳雄』という書籍の著者・インタビュアーさんです。
もうお一方は原田麻由さん。
原田芳雄さんの娘さんで女優さんです。石橋蓮司さんとも親交が深い方。
このお三人のトークが本当に素晴らしかったです。
何度もニンマリしたり、可笑しくて笑ったり、貴重な話に感嘆したりしました。
まず登場された時の石橋蓮司さんのお姿がそれはもう格好良くて最高でした。
黒のパンツと黒のタートルネックに黒のジャケットで黒のハンチング帽をかぶってらっしゃいました。
高身長でスラーッとしていて、年齢を感じさせない姿勢の良さと、貫禄のある風情。
それでも礼儀の正しさや謙虚さも前面に表れていて、なんて素敵な大人の男性だろうと感じました。
お話は終始和やかなムードで、原田芳雄さんにまつわる話だけを30分近く聞かせていただきました。
もうそのどれもが興味深くて、僕の心は感動に満ちていきました。
石橋蓮司さんは原田芳雄さんを「芳雄」と呼んでいらっしゃるんだなぁと、そんなことだけで大袈裟に感動していました。
『出張』の話はもちろん、『竜馬暗殺』の話も『大鹿村騒動記』の話もしてくれました。
勝新太郎さんの話も黒木和雄監督の話も餅つき大会の話も、とても面白く興味深かったです。
誰か文字起こしして欲しいくらいです。
中盤で石橋蓮司さんが、「芳雄の話をすると、本当は貶したいけど褒めてばかりになっちゃう」と笑いながら仰る姿がとても素敵でした。
お話の内容からも、お二人がお互いに認め合って尊敬し合っているのが分かって、そんな関係性の親友がいるなんてとても羨ましいなと感じました。
原田芳雄さんの芝居のことも、プライベートでのこともとにかく褒めていらっしゃいました。
原田芳雄さんの芝居は、即興に見えてそうではないのではないかとおっしゃっていました。
十分すぎるほど脚本を読み込んで、相手の役の人がこういう感じだったらこう返そう、みたいなことを全て計算して、書き込んですらいたんではないかと。
見てる側にはそれがアドリブであったり、原田芳雄さんの天性のキャラクターが為せる面白い言い回しであると感じたりします。
でもきっとそれは、一つひとつ全て計算して作り込んだものではないかということです。
共演者であったり、芝居のロケ現場のその土地の人などとも積極的にお話しなさる方だったとも仰ってました。
僕は人見知りなのでそういうのは苦手なんですけど、と俯いて笑う石橋蓮司さんがまた素敵でした。
「ある日突然、芳雄に、うちで飲もうと誘われて行くと、仲間たちを集めて僕の初出演作を勝手に上映してたんですよ」というエピソードもとても面白かったです。
石橋蓮司さんだけ遅れて到着するように、ちょうどその作品の上映が終わる時間に来るように呼ばれていて、石橋さんが到着すると「お、今日の主役の登場だ」と言って迎えられたとのことでした。
豪快なところも繊細なところも茶目っ気がある部分もあって、そんな人柄がお芝居にも表れているんだなぁと改めて感じました。
「とにかく人が好きな人だった」とも仰ってました。
原田麻由さんは、娘さんの視点で芳雄さんのことを語ってくれていました。
子供の頃に「お父さんが一番うまいと思う役者は誰か」と聞いて、石橋蓮司さんのお名前をすぐに出したそうです。
他に逡巡する様子はなくその一択だったと。
そこで初めて石橋蓮司さんという役者さんを認識したそうです。
その後何度も芳雄さんと石橋蓮司さんが芝居の話をしたり、実際に共演したりしている現場を見て、その姿がいつも楽しそうで仲良しな子供同士のようだったと仰っていました。
真由さんが女優業を始めた頃、原田芳雄さんは石橋蓮司さんに娘を預けた、というエピソードも話されていました。
常に同行させて芝居の作り方を間近で見せて教えてやってくれ、ということでした。
原田芳雄さんがいかに石橋蓮司さんを信頼していたかがわかるお話でした。
他にもたくさん話されていて覚えているものもありますが、このあたりにしておきます。
とにかく幸せな時間を過ごせました。
終わったのが21時ごろで、その時間の渋谷駅付近なんて人混みに溢れていつも嫌な思いをするんですが、それも気にならないくらい気分が良くて最高の夜でした。
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