「閏のあと」
「お魚食べる?ホッケとアジの開き。どっちがいい?どっちもいる?」
「いや、いい。ホッケだけ、頂こうかな」
「足りないよね。アジ、一枚置いて行こうか?」
「え?いや、足りるよ」
「あと、リンゴー。訳ありリンゴー。食べたくて箱で買っちゃった。あ、これキズあるね。こっちにしよう。四個、縁起悪いね。じゃあ、五個・・」
「いいよ・・三個でさ」
「足りないじゃん・・それじゃ・・」
「いいって、ありがとな」
「いただきー。おっ♪パリパリ系のリンゴだ。みずみずしいなぁー」
「ジョリジョリは好きじゃないー」
パリパリパリ
シャクシャクシャク
「どしたんだよ?急に来て。しばらく顔も見せなかったのに」
「今年は閏の次だなー、と思って」
「そうだったかぁー?そりゃ人間の暦じゃないのか」
「あ、イカの干してある、味もついてる。ちょっと待って(ゴソゴソ)四本かあ。いいか、垂らしておくと大物釣れそうだね」
「・・あのさ、なんでさっきから、四つ四つって、四つ置いて行こうとするの?それじゃまるで四人分・・」
「えー?」
「うち、三人だよ。知ってるじゃん」
「え?あれ?知ってるけど・・なんか四人いると思ってた・・?」
「おいおいおい」
「あっ!もう帰らなきゃー。待たね!そのうち」
パタパタパタ
ペタペタペタ
サクサクサク
・・・・
(変なやつ)
(でもなんだかオレの後ろのあの木のところ。黒くて長いのがずっと立っているような気がする。目だけは白く開いているような)
閏の月の一つ多い日
その後、どこに一日消えるんだろう
一年が四回回って、一年を四回かけて三年から少しずつ閏のためにもいでゆく
小沼の際にこっそり溜まってゆく澱
黒くてムースみたいに細かいエアがあるの
光沢がある、オウロラみたいな
虹みたいなオイルが流れて光る
そんなふうに
小さい澱を飲み込むように、大きな澱が上に乗そって溜まってゆく
閏を待つ間
川面を見るとタールマンが出来上がりつつある
生活排水の汚染は静かにそっと進んでゆく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?