第一話
筋違い
神田筋違橋での事
なにやら空が朱い夜でな
女が歩いてくる
すれ違い
はて、と思って
「もし娘さん」声をかけた
「どちらからきなすった?」
女は少し私を眺めて「森」と答えた
緋い足袋裏は成る程、土で黒い
「どちらへいきなさる」
「蘇芳の家」
そしてまたすたすた
逢禍

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