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「本日も強風なり」

「お疲れ様でした。」

昨日、地震があった

正確には、村人が感じたもの

それも山側の者が感じる
地震と言うよりは地鳴り

その入口と出口には

すなわち最初のT字路は、入口と出口を兼ねている

穏やかな昼下がり

電柱に止まる烏が鳴いていた

強い不安めいたものは感じなかった

明けて、今日の天気は気がくるくる変わっていた

生暖かい風と言う人

暑いと言う人

陰った曇り空と晴れ間

バラバラバラと雨粒が打つ

サアッと地面を一瞬濡らす雨

後は静かな止まった空気の中

闇が濃くなるごとに

風は強く強く吹く

獣も虫も人も巣に隠る

雨と風が、車の走る音を加速させている

あの渦が舞っている

ふと、山奥で

竹の屏風を何枚かくぐっていくと

罠にかかった猪が目を剥いてもがいている

この劇場には、今
猪と私しかいない

猪は一点ばかりしか見ていないし、混乱のあまり
それも見えているとは言えない

罠を外せる訳もなく、
幸い猪は気付いてすらない
痙攣し続ける猪を後にした

竹の屏風が次々と閉まり
そこは猪の安置所になった

鳥も虫も鳴かない静かな場所に山奥で出会ったなら

いつか今度「ういじ」と「わいら」の話を書こうと思った

生きている以上、何かを食べなければいられない

生きて行く以上、肚をくくらねばならない

巣の中で

私が何を食んでいるかなど

誰も知るよしはない

何が私の血肉になっているかなど

後々私は思い当てるのだろう


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