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星宿ー「滅多の華」

風の吹く夜

きまって、あの日もまた、天狗の話を書く夜だった

さて今宵、あの幾つかの夜を思うたのか

あの夜を思うたのか

はたまた天狗のみを思うたゆえか

風、唸りつむじう


地の震え

頻度を増す


窓辺に近寄るといつも陽が射して来る

前向きに生きよ、とのことなのかも知れぬ

しかし世間とは関わりなく暮らしたく

ごうごう、とではないが

窓の外で唸り風

土埃と砂の粒が舞い上がる

ぐるぐると柿の木が振り回され

土の上で小さな、しかし強烈な渦が
竜巻が生え、一瞬にして爆風が建屋にぶつかった

風の通り道は白き道筋

たまたまの目撃者の目印となる

建屋の空きを通り抜け

建屋の吹上げから茶色の砂風が空に飛び立って行った

砂嵐とは風の龍か

龍は真っ直ぐにしか低空を飛行できぬのか

建屋の空きを通り抜けなければ知ることもなかった

いいものを見せてもらった

このような日々の現象は

世間の箱の中でつまらぬ顔や声を聞いているうち

決して出合わぬ

なので心は迷う

世間に出ずとも

蓄積された怨念を抱えていれば

幾らでも書き記すことに困ることはないのだから

心の内は至極花


知ったかの、春の彼岸・彼の世の方々への仕度の不手際を

知ったかの顔が薄ら笑う

そは、人が目に付くだけの繕いの供養

死すれば誰もが仏とか

弔いとは人の目に盛衰を見せつけるものなのか

誰かに見て貰いたくて称賛されたく手を合わせるのなら

ゆかずとも良いではないか

知ったかの薄ら笑う顔は知るまいが

我が筆には知ったかの顔を斬る術がある


眠た児を

鎮まらぬ気をひりつかせる者に

有る能も

無い能も

異なる能も


云った

怒(い)った

それでは残らぬ

書き呪ったが勝つ

目には目を

余計な口は要らぬもの


筆おろし

人の口を借りて天空よりの声を書す

虚栄の花の咲く世界には

人の数だけ記すことに不自由はなし

青みを帯びたもやが出ている


野竹分カツ青靄ヲ

李白・訪戴天山道士不遇

野竹ハ上ニ青霄

杜甫・培

青空、晴天

霹靂を待つ

徒労だとも


風よ、打て

八つ手

滅多煌

滅多花

めたにあらず

めたふぁのこととして

筆を置く


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