「塔に吹く花」

それは遠目にもひと際目立つ建て物だった

白い箱は巨大で、そびえ立つ真下の家々はマッチ箱のように見えた

丘に続く道を進んでいく

見上げる頭上では

白い塔を指し貫ぬくように

ひっきりなしに流砂が吹き抜けていた

流砂が垂直に飛んで行った先は

荒廃した大地だった

そして地平の終わりには海が続いていた

強い風しか吹かない町のシンボルは

その強い風と流砂を受け止めて

衝撃を半減させるためのクッションなのだろうか

巨大な塔があるために流砂を視覚化できる

強風の大小を測る目安のようなものなのか

この強い風は海に向かって行った

砂浜に咲く花

乾燥した砂の中で咲く花

運ばれて咲いた

この強い風はどこから来たのだろう

流砂に打ち付けられるたび

塔の硝子は震えているように見えない

ただ時折り窓際に立つ人の姿が間延びして

水面の二匹の鯉のようだと錯覚した

ドクン・・

水中で泥を蹴ったのか

水鏡はビリビリ揺らいだ

まるでそこが目印だと言っている

塔が建てられたために

獲物だと食らいつく白いドラゴン

寒々とした新地の空の色

流砂の中の砂の花

それは彼の心臓

あの流砂の中には風のドラゴンがいる


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