ゴッホ展 感想文

早起きしてゴッホ展

美術館に行くのはいつぶりだろう。美術館に行くことは私にとって日常ではない。最後に何かを見に行ったのは百貨店で開催されていた写真展ではないだろうか。アートは難しい。作品の前でどのように振る舞えばいいかわからない。特に何を描いているかわからないものだと尚更だ。だからものを見たまま写せる写真が好きだ。

今回なぜ行ったかというと、駅の広告に載っていた糸杉に心惹かれたから。それにゴッホは小学生の頃絵画パズルでお世話になって唯一知っている有名な画家の1人だから。

Twitterで調べたところ、どうやら大盛況のようですごく混雑している模様。なので休みにも関わらず早起きして、上野に向かった。幸い10分程度の待ち時間で入れたが、中は大混雑。音声ガイドを借りて中に入る。

ゴッホの弟、テオがゴッホから受け取った手紙を元にガイドが進む仕組みになっていた。模写をしていた時代からハーグ派、印象派、そして己のスタイルの確立。そんな流れだったかな。

見て思ったことは私はハーグ派の画家の作品が好きかもということ。全体を通してゴッホに影響を与えた画家の作品も一緒に飾られていた。そのなかでも灰色派とも呼ばれたらしいハーグ派の作品は全体的に暗くて、でもその暗さの中にちゃんと色がある。暗いのの中に鮮やかな赤があったりする。単に暗い赤だけでなくて、微妙に明るかったりして陰影がある。

あと空の色が切ない。力みなぎる鮮やかな青ではなくて、儚げななんか懐かしい感じの薄い青。でも空の高さが伝わる。

空の色で思ったことがもう一つ。空の色にピンクが薄っすら混ざってる。これは印象派の絵画もそうだったけれど、雲の色が真っ白ではなくてほんのりピンクが混ざってるものがあった。私は水色とピンクの組み合わせがすごく好きなので、いいな、かわいいなって思った。ただ空を見上げただけではピンクって私の目には写らないけど、絵にしてみて遠くから見ると空の優しさ?みたいなのが伝わってくるというか。これはなんらかの技法?よくわからないけどあの薄いピンク素敵だった。

印象派になると明るくカラフルになる。田園風景が多かったと思うのだけれど、特に「麦畑とポピー」は真ん中に堂々とある麦の束とそれを囲むように散りばめられたポピーの赤がとても綺麗。緑って色んな種類がある。黄色が混ぜられてても引きでみるとそれも緑の一部みたい。

ゴッホが精神をやられて療養した場所を描いた「サン=レミの療養院の庭」では色合いに感激。特にゴッホのサインがある右下の部分、小道に日が当たってると思われる部分を卵色、そこに薄いピンクとくすんだ紫、ビリジアンが混ざり合っていて、この色合い今月のネイルに使おうと思った。一つの爪にこの色混ぜたらオシャレそう。薄いピンクとくすんだ紫をネイリストさんに伝えるのが難しそうだけれども。

そして目玉の糸杉。
力強い。塗り方が円を描くようだった。空も糸杉もまるまるしながら塗ったのだろうと思わせるタッチ。空、木、草、後ろに見える山も全部が波打つようで、右上の三日月の丸さも相まって、うねうねしてるものってこんなにも強く見えるのかと思った。ここは全然列が進まなかったけど、かえってゆっくり見れてよかった。あと糸杉ってサイプレスなんだ。アロマのサイプレスの正体がここにきて判明。

最後の音声ガイドに胸が熱くなった。短い生涯ながら、画家であることに情熱を燃やした人。絵を描くことに必死になって悩み苦しみ、人とぶつかり、自分の人生を積極的に切り開いてこうやって100年以上経った後にみんなが見たいと思うものを残せたって本当にすごいこと。わたしはきっとそういうものを残すことはできないけど、作品を通して感じたことは大切にしよう。あと好きなこと頑張りたいことに対する姿勢は真似できるよね。

手持ち無沙汰みたいにならないか不安もあったけど、一つ一つを自分なりに味わうことができて大満足。混雑のせいで列がなかなか進まずゆっくり見れたのも逆に良かったかも。

写真でも絵でも人を介して残されるものってその人の個性がでるから素晴らしいし、唯一無二。AIやRPAとかロボットがなんでもやってくれるけど、アートは人しかできないのではないだろうか。アートな感性を大切にしたいと思った。自分なりの解釈でいいから。そして写真だけでなく、絵画ももっと見てみよう!東京にはたくさん美術館があるのに行かないなんて損だ。


その他素敵と思った作品のメモ。知識無し素人のただの感想。

・アントン マウフェ  「4頭の曳き馬」
ゴッホの親族だったらしい。この絵の横に飾られてた雪の中を歩く羊の絵が大きくて押されてる感じがしたけど、私はこっちの方が好き。どこが良かったか、再確認するためにネットで見たけど、どこだったかな。草のタッチとか。犬が可愛いところとか。多分近くで見たのがよかったのだと思う。

・ヤン ヘンドリック ヴァイセンブルフ 「黄褐色の帆の船」
雲と青空が一番最初に目についた。高い空だったのかなと思う。どこかノスタルジックな青。あと雲の陰影が秀逸。これは夏の終わりかなそれとも秋の始まりかなって思うような空が素敵だった。もちろんその空が反射する水面も。
あと、以前東欧の友人に聞いたけどJan(ヤン)って名前日本で言う太郎みたいな名前らしい。だからこの人の名前はすぐ覚えられた。

・ ベルナルデュス ヨハネス ブロンメルス 「室内」
夫婦と赤ちゃんが窓際で食事している様が描かれてる。この男性のパンツの赤が綺麗だった。日に当たってる部分は少し明るくて、影の部分は暗いけど鮮やかな赤が伝わってくる。それに奥の壁の質感とか暗いのにちゃんと見えるの。こういうのの描き方学校で教えてほしかった。あと座った女性のスカートの折れ方とかシワが、そうそう、座ったときってこうなるのよって感じで、暮らしの中の一部を切り取ったことがそこからすごく伝わると私は思う。

・アドルフ モンティセリ 「陶器壺の花」
暗い色合いの中に花瓶いっぱいの花が飾られた絵。ゴッホはこの人をすごく褒めていたとのこと。私もそう思うよ、ゴッホさん。この絵は本当に素敵だったので、このセクション見終わってからもう一度見に行った。ピンク、赤、黄色、花の間の緑。暗い背景に溶け込んでいるようでありながら、引きでみると花の立体感が伝わる。油絵ってカッコいい。



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