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書いて書いて、書き直す/断片を捨てないで捨てる/真のボトムアップはありうるか

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/08/19 第462号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。
毎度おなじみの方、ありがとうございます。

今年も、NovelJamが開催されるようです。

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 これは「著者」+「編集者」+「デザイナー」がチームを組んで、本を書いて売るまでを一気に押し進める短期集中型創作&販売企画、いわゆる「小説ハッカソン」的なイベントです。
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やっぱり、こういうイベントは良いですね。まさしくお祭り、という感じがします。

私なんかは、誰から頼まれなくても本を書いてしまうわけですが、世の中には「ちょっとした背中の一押し」さえあれば本を書いてみたい、と思っている人ってそれなりにいるのではないかと思います。こうしたイベントは、その一押しにきっとなります。つまり、「このイベントがなければ生まれなかった本(原稿)」を生み出す効果がありそうです。

もちろん、そうしてイベントで本を作って終わりということもあるでしょうし、それをきっかけとしてまた別の本を作っていくということもあるでしょう。どういう道に進むかはそれぞれの人次第です。

でもって、どういう道を進んでいくのかを判断するためにも、一度「本を作って、売ってみる」経験をしてみるのはとても良いことのように思えます。

私も、技術書(≒知的生産の技術書)の本が生まれる後押しを考えてみたいものです。

〜〜〜瀧本哲史さん〜〜〜

瀧本哲史が亡くなられた、というニュースを目にしました。

直接の交流はありませんでしたが、著作は拝読しており、若者に何かを届けたいという気持ちには強い共感を覚えていました。今執筆している『僕らの生存戦略』でも、「武器」シリーズを受けて、さらにその話を広げる、といった構想を練っているところだったので、何とも言えない気持ちになっております。

ご冥福をお祈りいたします。

〜〜〜面白さ〜〜〜

私の(物書きとしての)モットーは、「読みやすく、面白く、役に立つ本」を書くことなのですが、存外に難しいのが「面白い」という指標です。

言い換えれば、「面白さって何?」って簡単に答えが出せません。なにせ、温度計みたいなものをペタッと当てて「面白さ」を測定してくれる機械はないわけですから。

結局のところ、「著者であり最初の読者である私が面白いと感じるもの」を指標にするしかないわけですが、だからこそ、定期的に「面白いとは何か?」について考え、日常的な情報摂取から「面白さ」を吸収することが大切なのではないかと思います。

〜〜〜自分のことを好きになること〜〜〜

自分以外の誰かを一生懸命好きになろうとするのは、やっぱりちょっと不自然です。それと同じように、自分自身のことを好きになろうと一生懸命頑張るのも、やっぱりちょっと不自然です。

もっと言えば、他の誰かのことが好きでも、その人のすべてが好きということはなかなかないでしょう。ちょっと気に入らないところもあるけど、好き、みたいな感覚が一般的ではないかと思います。

同じように、自分自身のすべてを好きというのも、ちょっと不自然です。気にくわないところがあっても、全体としてはうまくやっていけている。それくらいがちょうど良い塩梅ではないでしょうか。

自己啓発的なものの危うさは、「一生懸命、自分の、全てを、好きになろうとする」ということに潜んでいるのではないかと、そう感じます。

〜〜〜株式会社愚痴〜〜〜

想像してみてください。ある会社に100人の社員がいるとして、そのうちの80人が仕事もせず愚痴を言っていたら(あるいは愚痴を言うことを仕事にしていたら)、その会社はどうなるでしょうか。

たぶん、人が生きている中で、愚痴を言いたくなる場面が出てくるのは避けがたいのかもしれません。実際、愚痴を口に出すことで気分が晴れるようなこともあるでしょう。しかし、人生の8割を愚痴を言って過ごすのは、どうにも重たそうな気がしています。

〜〜〜ランダムエンカウント〜〜〜

以下の記事に面白いたとえが出ていました。

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 仕事の発生をランダムエンカウントからシンボルエンカウントにシフトさせるという発想が「なるほど!」でした。
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ビデオゲームでRPGをやらない人には少しわかりにくいかもしれません。ランダムエンカウントとは、初期のドラゴンクエストシリーズに見られるような、「フィールドを歩いていたら、突然敵と遭遇して戦闘が始まる」方式のことです。いつ戦闘が始まるかわからないから、「ランダム」なわけです。

一方、シンボルエンカウントとは、ロマサガシリーズに見られるような、「フィールドに敵のキャラが表示されていて、それと接触することで戦闘が始まる」方式のことです。こちらは、あらかじめ敵の位置が表示されているので、いつ戦闘が始まるかは予測されています。つまり「ランダム」ではありません。

この話を踏まえた上で、この「敵」を「タスク」に置き換えて、突然タスクが襲いかかってきて戦闘が始まるような状況を避けましょう、そのためにはタスクを可視化しておくことが必要です、という理路が展開されています。ゲーム世代にとっては非常にイメージしやすいたとえではないでしょうか。

とは言えです。記事にはスライドの画像が表示されていて、そこには「ランダムエンカウントなタスク管理」は「ストレスの多い、アンバランスなタスク管理」だと書かれています。疑り深い私としては、「本当にそうだろうか?」と考え込まずにはいられません。

先ほど挙げたように、ドラゴンクエストなどのRPGでは、ランダムエンカウント方式が採用されています。でもって、そうしたゲームを私たちは(少なくとも私は)楽しんできました。だとしたら、「ストレスの多い、アンバランスなゲーム」だとは言えないでしょう。

たしかに、そこにはストレスと呼べる心の動きがあります。「いつ敵が出てくるだろうか、体力が少ないけど、無事に町までたどり着けるだろうか」。この感覚は軽微ではあってもストレスと呼べるかもしれません。しかしそれは、緊張感とも言い換えられ、それがよりゲームを楽しむ要素として機能している側面がたしかにあります。

もちろん町に帰って、宿屋に入ろうとした瞬間に敵が出てくるのならば、それはもうたいへんです。緊張感どころの騒ぎではありません。つまり、RPGでは、敵とランダムに遭遇するフィールドと、そうでないフィールド(主に町の中)があり、それによって緊張と緩和がうまくバランスされているのだと考えられます。

でもって、そうしたバランスがあるならば、少々のランダムエンカウントは、ストレス負荷よりも、むしろ楽しさの演出として機能するのではないか。そんなことを考えました。

〜〜〜角があるから〜〜〜

角(カド)があるからと、それを削る。別の場所にも角があるからと、それを削る。それをどんどん繰り返していくと、やがて球形になります。

で、別のものにも同じことを行うと、やっぱり球形になります。はじめは別の角を持ち、異なる形をしていたはずのものが、同じ形になるのです。差異のない、いつでも取り替えの利くものに。

自分の良くない点を直そうとするのは、別段悪いことではないかもしれませんが、それを続けていった先に待っているのは何でしょうか。あるいは、他人の悪い点を直そうとする先に待っているのは何でしょうか。そういう結果を求めているのでしょうか。

よくよく考えたいところです。

〜〜〜見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

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モノの形の味わい、生きることの難儀さ、芸術の偉力、考えることの深さ。多面体としての人間の営みとその様々な相に眼差しを向け織りなされる思索。日常を楽しみ味わいながら生きるための技法を、哲学者が軽やかに、しかも深く語るエッセイ80編余を収録。
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 高齢者にパート、正規、非正規など、職場の雇用形態が複雑化する日本の企業。
価値観の違う人たちが入り乱れる職場で起きがちな対立・紛争(コンフリクト)の解決法を、
実際に起きた事例をもとに、すご腕人事コンサルタントがズバリ指南する。
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 人びとの価値観と行動は何によってかたちづくられるのか。100か国・40年におよぶ調査に基づき展開される、進化論的近代化論!
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〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、脳のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. 面白い本って、どんな本でしょうか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2019/08/19 第462号の目次
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○「書いて書いて、書き直す」 #これから本を書く人への手紙2

○「断片を捨てないで捨てる」 #知的生産の技術

○「真のボトムアップはありうるか」 #知的生産の技術

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

○「書いて書いて、書き直す」 #これから本を書く人への手紙2

こんにちは。たった一つのメッセージは見つかったでしょうか。もし見つかっていたら、そのまま邁進すればよいでしょうし、そうでなければ一度立ち止まって原稿全体をチェックしてみてもよいでしょう。今回お話したいのは、そのチェックについてです。

原稿を完成させるために必要なことは、「とりあえず書くこと」です。手を動かさない限り、文字は生まれません。余計なことを悶々と考え過ぎて、まったくタイピングが進まないくらいなら、思うままに、思いっきりに、文章を書き出す方がはるかに生産的です。

しかしそれは、文章を書くときにまったく「考え」なくてもいいことを意味しません。むしろ「考える」ことは、局面局面において重要な役割を担います。

車の運転を考えてみましょう。奇抜な走行をするのでない限り、ブレーキとアクセスは同時には踏まないものです。まっすぐ進むときはアクセルを、カーブを曲がる前にはブレーキを。そのように使い分けながら運転は進んでいきます。

さらに言えば、車を点検するためには、いったんきちんと静止しなければなりません。走行中の点検などもってのほかです。つまり、アクセルをまったく踏まない場面も必要なわけです。

執筆についても同じです。ある局面では、グダグダ考えることをやめて、思うままに文章を増やしていくことが必要となり、別のある局面では、むしろ書き足すことをやめて、全体を点検していくことが必要になります。

この二つの違いを認め、同時に行うことを避けた上で、適切にトグルしていくことが、執筆においては大切です。

では、立ち止まって点検するとはどのような行いでしょうか。個別にはさまざまな種類がありますが、ごく簡単に言えば、それは「読み返す」ことです。

書いた文章を読み返す、書き留めたメモを読み返す、アウトラインを読み返す。対象は何でも構いません。作成したアウトプットだけでなく、たとえば「企画案」や「概要」といったものも対象に入ります。

そうした再読を経て、手直しをしたり、整えたりすること。それがコンテンツの点検です。

大げさに考える必要はありません。文章であれば、話がうまく流れているか、読みやすくなっているかを確認すればいいですし、メモであれば、それぞれのメモがどこかで使える場所がないか、あるいは肉付けできるものはないかを考えればいいでしょう。

アウトラインであれば、項目の抜けや漏れがないかと考えたり、順番やグルーピングの粒度がそれで良いかを考えます。企画案や概要であれば、現状のコンテンツが対象読者にマッチしているのか、コンセプトから大幅に逸脱していないかを考えます。

もちろん、ここで「考えた」ところで、適切な答えが出るとは限りません。考えに考えに考え抜いて、結局はっきりした答えが出ないときもあります。そうしたときは、また再び書き出していきましょう。考えたことについて書いてもよいですし、思いついたアイデアを実際に試してみてもよさそうです。

ようはその繰り返しなのです。執筆という大きなプロセスは、考えることと書き出すことを交互に行いますが、それは決して、それぞれのミニプロセスにおいて完全な答えや文章を提出することを意味するわけではありません。極論すれば、不完全な文章を書き、不完全な答えを出し、再び不完全な文章を書き、の繰り返しで前に進んでいくのです。そして、少しずつ、少しずつそこから不完全さを剥ぎ取っていく。

ときには、ある段階で、一気にその不完全さを減らすこともあります。一通り全体のラフ稿ができて、それをベースに「プレ清書」の文章を書き下ろすような場合がそれです。そのとき出力される文章は、不完全ではあっても、一応読める文章が目指されます。

しかし、最初の段階からそこまで完璧なものを求める必要はありません。十分に不完全でいいのです。折々に出される判断も、正解である保証はまったくありませんし、それで構いません。

ただ、折々の判断で、考えることです。考え続けることです。これでいいのか、と。その問いかけは、自然とその本が持つ「たった一つのメッセージ」を見出す助けにもなるでしょう。

もちろん、最初にアウトラインを組み立てて、以降はそのアウトラインに沿って「プレ清書」を書き上げていくような、つまりいきなり完成稿が目指される執筆スタイルが必要になる場合もあるでしょう。しかし、それだけが本の書き方ではありません。本の書き方は、もっとさまざまであり、自由です。

ある段階までは、非常にラフで(つまりは不完全で)構いません。そうして書いたものについて後から考えるなら、その不完全さはいつかは取り除かれることになります。

「判断は後からでいい。だからまずは書く」
「とりあえず書いたから、いったん判断する」

この二つのステップを交互に意識してみてください。スムーズにいかなくても、「いったんモードを切り替えようか」と思えるなら、少しは(おそらくほんの少しだけは)執筆の負荷が減ることでしょう。

(つづく)

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書いて書いて、書き直す/断片を捨てないで捨てる/真のボトムアップはありうるか

倉下忠憲

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物書きです。ビジネス書とか、ライトノベルとか、ブログとか、有料メルマガとか書いています。 Blogは http://rashita.net/blog/ メルマガはhttps://note.mu/rashita/m/mca89ee3c2e93 です。
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