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読んだ本について何か書く

読んだ本をものにしたい。内容全部を記憶する必要はないけども、胆となるものは覚えておきたい。そういう欲望ってありますよね。

小泉信三さんの『読書論』ではこんなヒントが示されています。

読者として他人から受動的に受け入れたものを、今度は逆に自分のものとして外に出してみるが第一であると思う。別言すれば、読んで頭に入れたものを、今度は自分の口から人に話してみるか、或いは自分の筆で書き留めているのである。

『読書論』

現代の言葉づかいで言えば「アウトプットせよ」となるでしょうか。で、これはめちゃくちゃ強力です。

たとえば、他の人に面白かった本を紹介しようとするとき、「へぇ〜、どんな本だったの?」と尋ねられて、「ええっとね、なんかこう、すごかった」みたいな説明しかできないことがあります。すごいという感触はあるのもの、何がどうすごいのかがわからない。そこで、いったん本に立ち返ってぱらぱら読み返したり、目次なんかを見返して、「そうそう、この説明が斬新で、今までになかった」みたいなことが言えるようになったりする。

こういう欠如の認知と、その充填という過程は、頭の中にある(と思われる)ものを他の人に説明しようとしたときに初めて発揮されるものです。

本の書評記事を書こうとするときも、似たようなメカニズムが起こり、結果的に本の理解が深まった、なんてことが珍しくありません。理解したから書評を書くのではなく、書評を書こうとする中で理解が深まるのです。不思議な現象ですね。

さすがにそこまで大げさなことはしたくない、というならば読み終えた本について簡単に感想を書き留めておくのでもよいでしょう。

要するに私の言いたいのは、本を読んだら読み放しにしないで、少なくとも大切な本は、その読んだことについて何か書いて置くことが、読書の感興とそうしてまた併せてその利益を一層大きくするゆえんだというにある。

手帳や日記にちょっとした感想を書くのでもよいでしょし、はりきって読書ノートを作ってもいいでしょう(トランジッションノート術をオススメしますが)。人によっては、SNSに感想を投稿するのでもよいかもしれません。

たとえどのような形であれ、感銘を受けた本があればその本について少しでも書きとめておく(どうでもいい本とは扱いを分けておく)。それだけで読書ライフはけっこう変わってきます。Knowledge Walkersのススメとして、大きく取り上げておきたいノウハウです。

とは言え、この効能は実際にやってみるまでは実感されないでしょう。それくらいに私たちは読んだ本について「わかった」気持ちを持つからです。十分にわかっているから、書くことなんて簡単にできるだろう、という確信をいかに崩すのか。

だからまあ、騙されたと思って一度書いてみてください。そこから扉は開きます。

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