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第十八回:アクティブストッカーとしてのWorkFlowy

前回は四ツールが一つ、Evernoteを紹介した。 個人文書館として位置づけるという利用方法だ。今回は、WorkFlowyについて紹介しよう。

WorkFlowy

私にとって、WorkFlowyは流動的な情報を扱うためのツールである。ここで言う流動的とは、完全に固まりきっていない、まだこれから操作が行われる状態を意味する。静的ではなく、動的というわけだ。

とは言え、動的と言っても、熱せられた分子のように空気中を激しく動き回るものではない。ある場所に位置されるが、しかしその場所にとどまるとは限らない、というくらいの「動的さ」である。仮固定、反固定の感覚が近しいだろう。とりあえず置いておくけども、後から変わっていく対象。そうしたものをWorkFlowyで扱っているわけだ。

一番わかりやすいのは、書籍企画の「アウトライン」であろう。だいたいにおいて、執筆を終えるまでは「アウトライン」は変化する可能性を持っている。最初に立てたアウトライン通りにそのまま終わる事例は稀だ。書いたことに合わせて、組み換え・入れ替え作業が必要となる。そうしたときに、WorkFlowyは抜群の活躍を見せてくれる。
*こうした話は、Tak.氏の一連の著作を追いかけられるとよいだろう。

他にも、ちょっとした思いつきを書き留めたり、一つの考えを展開させたいときなどにもWorkFlowyを使うことになる。

WorkFlowyを選ぶ理由

もちろん、同じようなことは他のアウトライナーでも可能である。むしろ、Dynalistの方が、機能性の点ではずっと上だと言ってよい。しかし、私はいくつかの点で私はWorkFlowyを気に入っている。

まず、そのシンプルさである。WorkFlowyは多機能ではない分、ややこしいことも少ない。さすがに最近では機能が増えてはきているが、それでもDynalistに比べればずっとシンプルであると言える。たしかに、項目の置換などができた方が嬉しいし、ソートの変更なども便利ではあるのだが、そういう機能の利用はそこまで頻繁ではない。私がアウトライナーを使うときのメインの操作は「項目の作成及び移動」であるので、それができれば十分なのだ。余計な機能がない分、ツールに振り回されなくて済む、という点は大きい。

もう一つは、WorkFlowyが「ワンアウトライン」の思想を持っていることである。ファイルで内容を分けることはせず、たった一つのアウトラインにすべてを配置してしまう。あるいはそのように配置するしかない。これは、一面から見ればきわめて不便であるが、別の面から見ればきわめて自由なのである。どこに何をどのように保存しても、別に構わない。絶対にこの「アウトライン」の中に入っている。これは野口悠紀雄氏が述べる「ポケット一つ原則」にぴたり当てはまると言えるだろう。

しかし、そんな使い方で混乱することはないのか、と思われたかもしれない。大丈夫、次のポイントと合わせることで、ワンアウトラインでも混乱することはない。

不要になったら消す

私は、WorkFlowyでは流動的な情報を扱っている。固まってしまう前の情報だ。では、それが固まってしまったらどうするのか?

削除するのである。

つまり、使用済みになったものや完成したものはWorkFlowyに置いておくことをしない。それらは何らかの形で別の場所に移動するか、単に削除してしまう。言い換えれば、WorkFlowyに置いてあるのは、流動的な情報だけであり、そうでないものは入ってこないのだ。

Evernoteの場合は、時間と共に保存される情報の量は増えていくが、WorkFlowyではそのような単純な線形にはならない。ある時期に増えたと思ったら、ある時期にまとめて減ったりする。そのようにして、ある幅の中を動き回るグラフが描かれるのだ。

つい最近、WorkFlowyに「ゴミ箱」が実装されたので、そうして削除しても後から見つけ出せるようになったが、実際その機能を利用することはほとんどない。気休めとかお守りとかそういう位置づけである。基本的にWorkFlowyでは使用中のものを置いておき、そうでないものは消す(あるいは移動させる)。

そのようにして限定することで、ワンアウトラインでも別段混乱なく使っていける。

位置づける

数を増やしすぎない、という運用方針は、アウトライナーの特性ともかかわっている。アウトライナーは、デジタルツールではあるが、項目の順番を自分で決定しなければならない、という特性を持つ。他のデジタルツールでは、作成日順のソートといったように、アルゴリズムによって自動的に決定されてしまう「並び」が多いのだが、アウトライナーにはそうしたものは存在しない。ある項目をどこに位置づけるかは、使用者が決定できるし、決定しなければならない。

項目の数が莫大になると、こうした決定が難しくなる。どこに何を位置づけたらいいのか、細かく検討したくなってくる。はっきりいって、あまり生産的とは言えない思考である。

よって主要な項目(最上位の項目)は数を限っておくに限る。自分の認知資源で把握し、意思決定ができるサイズ感を保っておくのだ。あれもこれもと保存するようになると、それが難しくなるからこそ、流動的な情報だけを扱うとするのだ。

さいごに

とは言え、流動的な情報を扱うWorkFlowyの扱い方もまた流動的である。たとえば、最上位項目は結構変わる。新しく増えたり、しばらくしたら消したりといったことが頻繁に起こる。ときどきアーカイブっぽいものを保存するときもあるし、何の用途かわからない項目を作ったりもする。

そういう不安定さは、もどかしさではあるのだが、反面柔軟性の高さの現れでもある。自分で位置づけがよくわかっていないものを(ためしに)位置づけてみるためのツールでもあるわけだ。

ツールの用途を明確に(MECEに)切り分ける必要はないと思う。あまりに混乱しているのはさすがに不都合が多いが、多少の重複や不具合があっても、気にしないのが情報整理ツールとのうまい付き合い方であろう。

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