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結城浩のもくもく会は宣言法+タイマー

結城浩さんが作られた新しいWebツール「結城浩のもくもく会」がなかなか面白い。

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「宣言の開始」として、これから自分が取り掛かる作業を入力し、その後「開始!」ボタンを押すと、Tweet画面が立ち上がるので、自分の宣言をタイムラインに流す。

作業が終われば、「終了の宣言」にその時間でやったことを入力し、同じように「終了!」ボタンを押すと、Tweet画面が立ち上がるので、作業内容ををタイムラインに流す。

基本的にはこれだけだ。

単にそれだけなら、自分でツイートしていればいいわけだが、「開始ボタン!」を押すとタイマーが動き始め、「終了ボタン!」を押すとそのタイマーが止まる仕組みになっている。終了の宣言ツイートにはその時間も一緒に添付されるので、ツイートが自分の簡易作業ログとして機能してくれるのも気が利いている。


結城浩のもくもく会のページ下部には、「宣言の検索」もあるので、自分のTwitterのユーザ名で検索すれば、その作業ログが閲覧できるといった具合だ。

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ちなみに、「開始!」ボタンを押すだけでタイマーは動き始めるので、そのままツイートしない使い方もできる。純粋なタイマーだけの使い方だ。

宣言法+タイマー

さて、この「結城浩のもくもく会」でやっていることは、『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』で紹介した、宣言法とタイマーの組み合わせである。

宣言法(またはワン・タスク法)は、これから自分が取り掛かる作業を高らかと宣言するメソッドである。

たった一つだけのタスクを選び、これからの時間はそのタスクのみに専念することを決める方法です。単に決めるだけでなく、それを書き表すと効果的です。たとえば、付箋に書いてパソコンのディスプレイに貼っておいたり、あるいはSNSで「今から一時間○○をする」と宣言してみるのもよいでしょう。脱線しそうになったときに、書いたものが目に入ったり、他人に向けての自分の宣言を思い出したりすると、元の作業に戻りやすい効果が期待できます。

タスク管理未体験の人には「何言っているかちょっとわかんないです」かもしれないが、これが実に効くのだ。誰にも宣言せず、一人で決意を立てても効果があるが、Twitterに流したり、職場の周りの人間にそう告げるとさらに効果がある。

本来ならさまざまなことに使える時間を、「これに使う!」と決めること。コミットメントであり、有限化である。そのような〈枠〉の中に自分をおくことで、注意をその作業に集められるし、また脱線も抑制できる。なにせ、作業の開始をツイートした後に、RTしていたりすると、サボっているのがバレバレだからだ(そういうことに一定の羞恥を覚える人にしか効果がないのは言うまでもない)。

また、その〈枠〉の認識を強める上で、時間設定もたいへん効果がある。「これから原稿を書く」と「これから一時間原稿を書く」では、〈枠〉の認識の強さが違っているわけだ(当然後者の方が強い)。さらにその観点から言って、この宣言は長い時間を設定しない方がいい。長すぎる時間は、〈枠〉の認識を弱めてしまう。せいぜい一時間、あるいはもっと細かい時間でもいいだろう。

タイマーを使うことの効果は、〈枠〉の認識を強めるだけではない。作業が終わった後に、実際にその作業にどのくらいの時間を投下したのかの実績に関する記録が残る。買い物したときに、品目と金額のレシートが発行されるが、こちらは行動のレシートと言えるだろう。作業内容と使った時間のレシートだ。

それがわかれば、次回似た作業を行うときに、見積もりの精度が上がることになる。少なくとも昨日30分で20ページしかチェックできなかったのに、今日の30分で100ページチェックできると考えるのは無謀だ、ということはわかるだろう。

もちろん、二日程度では「平均」を考えるにはそうとうデータ不足ではあるが、少なくとも記録を残し始めることは一つの嚆矢となる。

上記のように、宣言法とタイマーは、日々のタスクを進めていく上で非常に強力な存在だが、それをさらに「皆でやる」というのがこの「結城浩のもくもく会」の大きなポイントだろう。

タスク管理系のメソッドの最大の難点は、自分がそのメソッドをやろうとしていたことそのものを忘れてしまうことにある。バカらしい話かもしれないが、よくある話なのだ。その点、Twitterを普段使っていて、他の誰か(たとえば結城浩さん)がこのツールによる宣言をしていれば、「ああ、そういえば」と思い出すことができる。タイムラインが、メソッドのリマインダーとして機能してくれるのだ。

そして、喫茶店にいるときに、周りの人が真剣な作業をしていると、なんとなくYouTubeで動画を見て脱線するよりも、よし作業しようという気持ちが湧き上がりやすいように(これもその人の心理的傾向によって効果の有無は違うが)、他の人が作業に時間を投じていることを、遠くに感じることで、自分の意欲も、目の前の作業に向けいやすい、という効能が期待できる。その効能は、もしかしたら温泉の「効能」程度のものかもしれないが、何もないよりはずいぶんとマシだろう。

さいごに

というわけで、結城浩のもくもく会はなかなか有用なのだが、私は一日に一から二作業ほどでしかこれを使っていない。あまり多すぎると(他の人にとって)タイムラインが煩わしくなってしまう点と、そんなにずっと集中したくないから、というのが理由である。

個人的には使途不明時間が大好きである。人生というのは使途不明時間の集大ではないかとすら思う。しかし、そればかりでは仕事は立ち行かない。適度な拘束と、適度な放蕩。記録される時間と、記録されえぬ時間。そういうものを両方抱え込んでいくのが私のスタイルである。

ともあれ、どのツールを使おうとも、宣言法+タイマーは有効である。一度試してみることをお勧めする。

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