見出し画像

ハイブリッド手帳術/感情と距離を置く/断片の時代

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2019/12/23 第480号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

ブログでもお知らせしましたが、やままさんのポッドキャストにゲスト出演してきました。

主にブログについていろいろ話しましたので、ご興味あればお聞きください。

〜〜〜びっくら本〜〜〜

はい、今年もやってまいりました。今年読んだ本を振り返り、「これは!」と思ったものを紹介する企画です。

新しい本の発見は、他の人の紹介からも多いので、よければブログ記事なり、Twitterなりでご参加くださいませ。

〜〜〜あまい姿勢〜〜〜

最近、椎間板ヘルニアからくる足の痛みがけっこうひどいので、コルセットをつけるようにしています。腰にきゅるっとまいて、ぎゅっと締めるやつです。

で、コルセットをつけていないときでも、できるだけ姿勢良くしようと心がけているのですが、コルセットをつけてみると、それがいかに甘いのかが痛感されます。コルセットをつけた瞬間に、さきほどよりも三段階くらい背筋がまっすぐ伸びるのです。

人間というものは、意識でできることに限界があるのでしょう。レール的なものの存在は、存外に強力なものです。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

個人的に戦略論は大好きです。本書は、2007年に中央公論新社から出版された現実的な戦略形成の事例研究の文庫版です。

内容紹介によると「パラダイム、しるし、考古学――フーコーのエピステーメーを起点に、思想の展開や鍛錬の可能性に挑む、新たな時代の人文科学の方法論」とのこと。普通に面白そうです。

フーコーの原著をあたるのは結構ハードなので、こういう新書でいろいろ知っていきたいところです。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりに考えてみてください。

Q. 今年一番感動したことはなんですか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

――――――――――――――――
2019/12/23 第480号の目次
――――――――――――――――

○「ハイブリッド手帳術」 #メモの育て方

○「感情と距離を置く」#Thinkclearlyを読む

○「断片の時代」

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

画像1

○「ハイブリッド手帳術」 #メモの育て方

前回は、バレットジャーナルを取り上げ、その位置づけがノート術よりはむしろ手帳術に近いと指摘しました。その流れを汲んで、今回から手帳術に取り組みます。

■My 手帳術

今回取り上げるのは、『クラウド時代のハイブリッド手帳術』。2011年に発売された拙著ですね。

取り上げるにあたって、あらためて読み返してみましたが、なかなか面白い本でした(自画自賛)。手帳をセルフマネジメントツールとして捉える視点は、実に「その通りだ」と感じます(そりゃそうだ)。

というわけで、今回も以下の二点に絞ってみていきましょう。

・手帳に何を書いているのか
・書いたものをどう扱っているのか

■手帳の役割

まず本書では、手帳の基本的な役割を以下のように定義します。

「情報を保存・確認・参照できる環境を提供するのが手帳」

しごく当たり前の話であり、なんでわざわざこんな定義が必要なのか、という疑問も思い浮かびますが、実はこの「確認」や「参照」が意外なポイントです。

情報を手軽に確認できるからこそ、そのツールは「手帳」と呼べるのです。あまりにややっこしい手順が必要ならば、それは「手帳」とは呼べません。データベースとか、何か違った名称が用いられるでしょう。

逆に言えば、「情報を手軽に確認・参照できる」という要件さえ満たすなら、それは手帳と呼びえます。私たちが手帳と聞いて思い浮かべる、しっかりしたカバーつきの小さな冊子である必要はありません。スマートフォンに限らず、あらゆるツールが手帳として機能してくれます。

その視点があるからこそ、本書では複数のツールを使い分けることで「手帳システム」を構築する、という話につながっていくのですが、本稿の趣旨は手帳論ではないので、掘り下げるのはここまでにしておきましょう。

■何のための手帳

では、その手帳は何のために使われるのでしょうか。手帳をセルフマネジメントツールだとするならば、その答えは「主体性の獲得」となります。

この辺の議論は、今から見ると少し深みに欠けるのですが(たとえば、主体性を獲得することは必ず善と言えるのかは検討の余地があります)、とりあえず話を先に進めるとしましょう。

「予定」や「やること」を自分の意思を持って管理することで、つまり、自分の時間の使い方を変えていくことで、自分の人生を変えていくこと。それが本書が見据える手帳使用の目的です。

■四つの分類

という話を踏まえた上で、本書は手帳の機能を四つに分類します。以下の四つです。

・スケジュール管理
・タスク管理
・メモ
・目標管理

この分類は今でも通用するでしょう。一般的な手帳の機能は、これでほとんど網羅されていると思います。

で、スケジュール管理とタスク管理については、あえて取り上げるべき点はありません。唯一面白いのは、タスク管理とタスクマネジメントを別物としている点で、その話は『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門 』にもつながっています(この点は、本書を読み返すまで気がついていませんでした)。

本書では、以下のドラッカーによるマネジメントの定義を引きながら、タスクマネジメントを定義づけています。

 >>
 マネジメントの定義は1つしかありえない。それは、人をして何かをうみださせることである。
 <<

今の私で言い直せば、「自分をして何かをうみださせること」がタスクマネジメントというわけです。

この定義に沿えば、タスク管理は、タスク管理をし続けられます。つまり、タスクリストを延々といじりましていてもそれはタスク管理なのです。

しかし、それはタスクマネジメントではありません。タスクリストを延々といじり回すことは、何かを生み出すことにはつながっていないからです。

この話は、タスクをアイデアに置き換えた、アイデアマネジメントでも同様のことが言えるでしょう。単に「保存」しているだけの行為と、何かを生み出すために保存している行為には、質的な違いがあるのです。

■メモの扱い

話が脱線しました。今回はスケジュール管理とタスク管理をすっとばし、さらに目標管理も置き去りにして、メモの取り扱いについてだけ見ていきます。

本書では、メモを四つに分類しました(四つの分類が好きですね)。

・アクションメモ(行動につながるメモ)
・インプットメモ(外部情報のメモ)
・アウトプットメモ(自分の頭の中のメモ)
・ライフログメモ(日々の出来事・感想のメモ)

先週号で紹介したバレットジャーナルとかなり似ています。バレットジャーナルは以下の三つ。

・しなければならないこと(タスク)
・経験すること、経験したこと(イベント)
・忘れたくない情報(メモ)

分類の軸は異なりますが、対象は重なっています。手帳あるいはノートというツールで書き留めるものはある程度共通してくるのでしょう。

もちろん、バレットジャーナルと同じように、上記の四種類のメモはそれぞれ処理が異なります。アクションメモなら、自分自身へのリマインドが必要ですし、インプットメモは必要に応じて取り出せなければいけません。逆にライフログメモは折に触れて読み返すくらいでよいでしょう。

■アウトプットメモの処理

では、アウトプットメモはどう処理するのでしょうか。本書では大きく二つの方法が提示されています。

まず、アウトプットメモの中で、使い道がはっきりしているものは、専用の場所に入れておきます。たとえば書籍の企画があるなら専用のノートブックを作ってそこに入れておくとか、あるいは連載を持っているならネタ帳を作ってそこに保存しておく、といった方法です。

では、使い道がはっきりしてないものはどうすればいいのでしょうか。本書では、そのはっきりしないアイデアも二つに分けて、対処を考案しています。

まず、用途についてははっきりしていないけども、とりあえず形になっているものについては、専用のノートブックを作ってそこに入れておき、折に触れて読み返す、というのがその一つです。

ようは、「使い道がはっきりしていないものを折に触れて読み返す」という〈使い道〉を疑似的に設定し、使い道を持っているアイデアと同じ扱い方をするということです。

それとは別の対処方法が、アイデア自体がまだ未完成なものについての扱いで、それらに関しては特別なタグ(たとえば「もっと考える」)をつけておき、先ほどのノートブック(用途未定ノートブック)に保存しておくことで、より思考が必要なものだけを簡単に抽出できる体制を作ることがおすすめされています。

たしかにその考え方は正しいのですが、本当に必要なのは、どうやって「折に触れて読み返すのか」であったり、あるいは「もっと考える」とは具体的にどのようなアクションになるのか、という点でしょう。

そのあたりについては、本書では詳しい議論は展開されていません。そりゃそうです。そこで答えが出ているなら、今の私がその探究にあたっていることはないでしょう。この本を書いた時点では見つからなかった答えを、今こうして探しているので、本書に期待しすぎるのは酷というものです。

■さいごに

それでも、私たちが頭に浮かべ、書き留めるものにはいくつかの種類があることは本書から確認できました。ノート術でも手帳術でもそれは同じなわけです。

その話を踏まえて、次回では「私たちが書き留めるもの」についてまとめてみましょう。

(つづく)

ここから先は

5,280字 / 3画像 / 1ファイル

¥ 180

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?