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第七回:アイデアの「整理」はいかに行うか その1

前回は、資料とアイデアの整理に触れ、後者が問題含みであることを指摘した。

よって今回は、腕まくりをしてその問題に取り組んでみよう。

アイデアの内実

アイデアの「整理」が難しいのは、用途から逆算できないことに加えて、一口に「アイデア」と呼ばれるその内実が多様だからだ。

前回も確認したように、個人の情報整理において出てくる「アイデア」は、否定的に定義されることが多い。「スケジュールでもない、ToDoでもない、資料でもない」(Not STI)情報。当然その輪郭線はふわっとしている。含まれるものも極めて多岐にわたる。

逆に言えば「自分にとって、アイデアとはこのようなものだ」と定義できるなら、その整理はぐっと行いやすくなる。はっきり明言できなくても構わない。いくつかの具体例を見て、「これはアイデア、これはそうじゃない」と判断できる感覚がそこにあるならば整理は前に進むだろう。

しかし、なかなかそこまでの感覚は持てないかもしれない。あるいは、物事を雑多に思いついてしまう人間には、その判断は非常に難しい行為かもしれない。その判断的難しさが、そのままアイデアの「整理」の難しさにつながっている。

ということを踏まえた上で、それでもアイデアの「分類」に取り組んでみよう。

アイデアの分類:ネタ

Not STIな情報の中でも、一番扱いやすいのが「ネタ」である。

たとえば私は毎週一回メルマガを配信しているが、「あっ、この話はメルマガで書こう」と思いついたらそれはネタである。

日付を含む情報ではないし、ToDoでもないし、資料でもない。「この話はメルマガで書く」とはっきり思うなら、それはToDoではあるのだが、私の感覚は「書こう(書けたら面白いかもしれない)」くらいのコミットメントであり、ToDoとは呼びがたい。

この点は、タスク管理においては極めて重要である。世の中には「すべてをタスクにする」とか「締め切りを設定する」といういささかエキセントリックな手法があるが、それは生産性が課題となる企業だけで許される話であり、たとえそうであっても非人間的な(いっそデータベース的発想の)手法である。人間の心はそんなにはっきり線引きできるものではない。単純な二択に還元できるものでもない。

にもかかわらず、「すべてをタスクにする」のならば、それは外部の要請やルールに「自分の心」や「感覚」を沿わせることを意味してしまう。抑圧であり自己疎外なのだ。だからこそ、そこでは「高い生産性」が達成されるのかもしれないが、それはもう最終奥義みたいなものである。

もちろん、「やるべき」だとはっきり決まっているものを、抜け洩れなく「タスクにする」という話であれば合理的であり、王道ですらあるわけだが、その理解を「思いつくことすべて」にまで拡張しない方がよいだろう。

話が逸れた。

ともかく、ToDoやタスクと呼びうるほどはっきりしたコミットメントはないが、なんとなく、ニュアンスとして、それが使えたら嬉しいな、という感じを持つ情報がネタである。

そうしたネタは、「ネタ帳」に置いておくのがよい。そして、以降似た感じのことを思いつくたびに、そのネタ帳に書きつけていく。そういう運用で基本的に事足りる。

あとは、メルマガを書くタイミングなどに、「あぁ〜、なんか書くことないかな〜」となったら、そのメモ帳を見返すと良い。それで「情報を適切に配置し、必要に応じて取り出せるようにする」の達成となる。簡単だろう。

一つだけポイントを挙げるとすれば、このネタの管理にはいわゆる「タスク管理ツール」を使わないほうがよい、ということがある。タスク管理ツールでなくても、いわゆる「チェックボックス」などは使用しない方がいい。それを使ってしまうと、いかにもそれらの項目が「やるべきこと」の表情を帯びてくる。

しかし、ネタは──その対象について関心を向けている限り──いくらでも思いつくものである。しかし、そのネタが消費されるスピードは一定で、限定的だ。つまり、

使用量 < 新規発生量

の不等式が成立する。先ほどの状況にこの不等式を適用すれば、「タスク」がただ増え続けていくだけを意味する。これははっきりいって(精神的)地獄である。どうせ呼ばれたらいかなければならないのだ。自分からわざわざ地獄に踏み込む必要はない。

「ネタ」は、使用・未使用の管理が必要で、だからこそタスク管理ツールやチェックボックスが有効なわけだが、ここはぐっと我慢して、それとは別のフォーマットで管理することをお勧めする。
*逆に言えば、不等式が逆向きかイコールで結ばれる人ならばタスク管理ツールも役立つだろう。

さいごに

というわけで、「ネタ」の扱いについて書いただけで一気に長くなってしまった。それくらい「アイデアの整理」はややこしい要素がいっぱいあるのである。

次回も引き続き、このテーマを検討しよう。

(つづく)


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