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第四回:積読リストをいかに作るか

前回は、積読リスト(クローズド・リーディング・リスト)を作って、本を読んでいくのが有効だ、という話を確認しました。

ここで状態は二つに分岐します。

・なるほど、じゃあ自分も積読リストを作ってみよう
・積読リストを作るたって、どうやって本を選ぶんだよ

一つ目の状態の人は大丈夫です。そのままガンガン積読リストを作ってみてください。二つ目の状態の人については、ここで本の選び方を紹介しておきますので、参考にしてください。

ちなみに、即座に一つ目の状態になる人は、二つ目の状態の人のことがうまく想像できないでしょう。「いやいや、自分の興味ある本を素直に選べばいいじゃないか」と。

しかし、それが存外に難しいものなのです。好奇心とは穴のようなもので、そこから触手なりアンテナなり導線なりが伸びてきて、外界の情報をがっちりとキャッチするのですが、その穴はしばらく使っていないとふさがってしまいます。そうなると、自分が何に興味があるのかがわかりません。興味というものはあっても、それがうまく外界の情報と接続してくれないのです。

むしろ、と私はここで言いましょう。

積読リストを作る行為は、そうしてふさがった好奇心の穴を再び開通する行為だと。

というわけで、積読リストの作り方です。

身近な環境に目を向ける

たとえば、近所にワークマンの新店ができたとします。「へぇ〜、最近よく名前を聞くし、勢いがあるな」と思ったら、それがチャンスです。以下の本が興味を広げてくれるでしょう。

この本を起点にして、他の有名な小売り店・チェーン店の販売方法・経営者の哲学・経営書・経済書・ロジスティック・グローバル化・えとせとら、えとせとらと積読リストにピックアップされる本はいくらでも見つかるでしょう。

もちろん、この本から始めなければならないというわけではなく、単に身近な環境で目に留まったものを起点にすればいい、というだけの話です。

なにせ書籍は、だいたいの分野をフォローしています。世の中の出版社・編集者の意欲(あるいは貪欲さ)に恐れを感じるくらいです。だいたいどんな分野でも、探せば何かしらの本が見つかります。最先端のもの以外は、誰かが何かを書いているのです。

ちなみに、最先端のものは論文が担当しており、超最先端のものは、まだ共有される記録は生まれていません。それは、実践者・研究者だけが手を伸ばせる情報です。

ともかく、本は多くの分野をフォローしており、本と本は情報的なつながりを持っているので、どこから始めてもいいのです。だから、まず自分の生活の中で気になったことを起点にしましょう。

気になったこと以外に、困ったこと、不満に思っていることなども起点になりえます。

本のある場所を散策する

もし時間があるならば、本のある場所を散策しましょう。代表的な場所としては、以下があります。

・書店
・図書館
・古書店

どの場所でもいいのですが、できれば隅々まで歩き回りましょう。すべての本をにらみつける必要はありません。本の谷間を歩き、表紙や背表紙をざっと眺めていくだけで大丈夫です。でも、早足は厳禁ですよ。あるくリズムはゆっくりと、しかし目は活発に動かします。

好奇心がいかに確かめられるかと言えば、反応です。刺激への反応。「自分は何に関心を持っているのか」などと自問しても意味がありません。診断シートに自分の性格を書いても同じです。そうではなく、情報に触れるのです。そして、自分の目が引きつけられる要素を探すのです。身体的な反応。それが、興味を探す一番簡単な道のりです。

「自分」についてうじうじ考えるのはやめましょう。そうではなく、行動をし、反応を探るのです。読む本を探すには、本に触れること。当たり前のようですが、案外実践されていないことかもしれません。この用途においては、ネット書店ではなく、リアルの書店が役立つでしょう。

あこれがの人を追いかける

It's ミーハー路線です。

もし、誰かあこがれの人がいたり、尊敬している人がいるならば、その人が好きな本、興味を持っているテーマを追いかけてみましょう。

知的生産エリートの方々には、そういう本の読み方はけしからん、などとおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、そういう考え方こそがけしからんのだと私なんかは思います。きっかけはなんだっていいのです。背伸びだって、一時的に目に入る風景は変わります。それは世界を変えるためのエピローグになりえます。

先ほども書きましたは、本と本は情報的につながっているので、起点はどこであっても構いません。本を読み続けていく限り、どこかしらにはたどり着けます。

さらに言えば、あこがれている人と同じテーマで積読リストを作っていけば、高確率で「いや、これは違うな」という感覚になります。それは一見失敗なようですが、「これは自分のテーマではない」とわかることでもります。自分についての発見なのです。

だったら、また別のテーマを探して積読リストを作ればいいのです。少なくとも、それまでよりわかっている情報は増えているのですから、しっかり前進していると言えるでしょう。

選書マップを作る

本をたくさん読んでいる人は、一定の選書感覚を持っています。こういうテーマは自分に合う、合わないがわかりますし、また自分の興味ある本が、書店のどの辺においてあるのか、どんな出版社を探せばいいのかが、知識・経験として体得されているのです。こういう人は、もちろん積読リストなど簡単に作れます。

一方で、これから本を読む人は、そうした選書マップが頭の中にできていません。だから、最初のうちは、右往左往しなければいけないでしょう。それこそ、肉体的に、そして読書経験的に、です。

そうした経験こそが、自分の関心を知ることにつながっていき、また研究の始まりでもあります。つまり、まだ見ぬ最先端の情報に手を伸ばす旅路です。

(つづく)

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