見出し画像

第二回:積読リストの効能

情報が怒濤のごとく流れこんでくる時代には、積読リストが効きます。

その理由を解き明かしていきましょう。

(第一回は以下)

積読リスト

メソッドとしての積読リストは、二つの要素で構成されます。

(1)これから読むのリストを作る
(2)リストに沿って本を読む

まず「読む本」のリストを作成し、次にそのリストに掲載された本を読んでいく。簡単そうに思えますが、そう単純ではありません。リストにつきまとう理想と現実がそこにはあります。

が、それはそれとしてこの二つはそれぞれが効能を持ちます。

まずは、(1)から見ていきましょう。

(1)これから読むのリストを作る

「はい、じゃあ、今からこれから読む本のリストを作ってください」

と言われたら、あなたならどうしますか。

書店に行って売れ筋ランキングの上位本をリストアップしますか。それともISBNを乱数発生させてランダムに本を選びますか。

たぶん、そういうことはしないかと思います。何かしら、自分が興味あるテーマや分野で本のリストを作り始めるでしょう。

もう、この段階でリストの効能が発生しています。もう少し言えば、リスト作りの効能が生まれています。

あなたがこれから読む本をリストアップしようとするとき、必然的に自分の興味・関心に注意が向けられます。それは漫然とした情報摂取、つまり情報の濁流に押し流されているのとは違った姿勢での情報摂取の出発地点となります。

リスト作りは「投網」と同じなのです。網をどこかに投げるためには、その「どこか」を見つめなければなりません。そして、網を投げれば「内と外」が生まれます。これは興味あること、これは興味がないことという境界線が生まれるのです。その境界線は、あなたに向かって流れ込んでくる雑多な情報を選り分ける指針にもなってくれます。

逆に、そうした指針をまったく持たなければ、私たちは漠然としたまま、情報の濁流に押し流されてしまうでしょう。

(2)リストに沿って本を読む

「これから読む本」のリストができたら、それに沿って本を読んでいきます。といっても、本当にその通りにいくとは限りません。リストはあくまで理想(vision)の提示だからです。

一つには、思ったように本が読めない場合があります。あまり理解できなかったり、思ったより面白くなかったりといった事態はいくらでも起こりえます。なにせそうしたことは本を読んでみないことにはわからないわけで、しかし、その本を読んだことがないからこそその本を読むわけですから、これはもう避けがたい事態だと言えるでしょう。本を読むことは、一種の賭けなのです。

もう一つには、本を読んでいるうちに、読みたい本が増えていく場合があります。読んだ本で紹介されいる本が面白そうだったりすれば、必然的な帰結です。あるいは、本を読んでいるうちに、自分の興味関心がシフトしてしまう事態も起こります。経済学の本を読んでいたら、行動経済学につながって、そこから認知心理学につながる、といった流れです。こうなると、積読リストに掲載されている本と、読みたい本がズレてしまいます。

そういうときは、どうしたらいいのでしょうか。歯を食いしばって、最後まで読み切ればいいのでしょうか。

そういうスポ根ノリは私は嫌いではありませんが、万人に強要できるものではありません。そんなノリよりも、もっとシンプルにリストを書き換えてしまうのがお勧めです。

最初に作ったリストは、あくまで理想(vision)でしかありません。それは現実をサポートするものではあっても、レギュレートするものではないのです。状況が変われば、いくらでも変じていけますし、変じていくべきものです。

あなたが作ったリストは、あなたが書き換えていい。

これはリストの運用において、極めて大切なポイントとなります。

さいごに

仕事術の一つに、「今日やることだけをリストアップする」という手法があります。そうしたリストを作業のお伴にすることで、そうでない場合に比べて仕事に取り組みやすい環境が生まれてくる(たとえば迷いが減る)という効能を持った手法です。

積読リストにも似たような効能があります。まず、これから読む本をリストアップしておく。そうして、それに沿って本を読み進めていく。でも、状況が変化したらそれに対応し、ときにはリストそのものを書き換えてしまう。

その意味で、積読リストとは、「クローズド・リーディング・リスト」と呼べるかもしれません。たとえそれが弱い力であっても、リストが「閉じてあること」がここでは肝要です。閉じておかないと、いろいろなものが流れ込んでくるのが現代の情報環境だからです。

その意味で、いかに閉じるのかが一つの鍵だと言えるでしょう。

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?