玉座と森の魔女(1/2)

『オルト国、王位決定戦召集状』
 隣国で剣士として活躍していた俺の元に、母国、オルト国の王室から一通の書状が届いたのは先月の事だった。

(R-18G小説・性的描写、去勢、ファンタジー)

■帰郷

『オルト国、王位決定戦召集状』

 隣国で剣士として活躍していた俺の元に、母国、オルト国の王室から一通の書状が届いたのは先月の事だった。
 オルト国王が急病で亡くなられたのはごく最近の事だ。
 不幸なことに王家の血筋を引くものはおらず、若くして未亡人となられたフェイリーン王女の再婚相手を、名立たる勇者の中から選定する事となった。
 俺のような身分の低い生まれの剣士まで召集された事に感謝している。
 とにかく、このチャンスを逃すわけには行かない。もし俺が国王になれれば、貧しい家族達に優雅な生活を送らせる事が出来るのだ。
 そして今日、俺は久しぶりに母国の地を踏んだ。

「スレイお兄ちゃん!」

 聞きなれた声が遠くから俺の名を呼ぶ。
 俺の実家である武器商店の前で、一人の女の子がこちらに向かって叫ぶ姿が見えた。
 彼女は満面の笑顔で駆け寄り、そのまま俺に飛びつき、そして抱きついた。

「おかえりなさい、スレイお兄ちゃん!」
「ただいま、ってオイオイ、恥ずかしいって」

 彼女の名はニナ。まだ幼いころに家で引き取った身寄りのない女の子だ。
 魔女の森の近くでさ迷っていたニナを、俺と父が保護した記憶がある。彼女は俺より2つほど年下で、まるで妹のように可愛がっている。
 いつも明るくて可愛いのは良いが、腰まである長く美しい黒髪とは対照的なお転婆娘だ。

(ギュッ)

「こっ! こら! やめろって!」
「キャッ! だってお兄ちゃんのココ、久しぶりだもん」

 抱きついていた手を下ろしたと同時に、ニナは俺の股間をギュッと握り締めた。彼女の昔からの悪いクセだ。
 近所の男の子で、ニナにそこを握られてない者はいない。それをやめさせる為に苦労した記憶が甦る。
 他の男の子のそこを握らせない為に俺の股間だけは握ることを許したので、あまり文句は言えない。
 そんな俺とニナのじゃれ合いを見て、近所の知った顔の人たちがクスクスと笑う。

「バカ、笑われたじゃないか、恥ずかしい……」
「じゃあ、家の中で握ればいい?」
「だから握るなって!」
「クスクスッ」

 はしゃぎ続けるニナを引き連れて、俺は久しぶりに我が家の戸を開けた。

「スレイじゃないか! どうしたんだ、急に帰って来るなんて」
「まぁ、スレイ! おかえりなさい」

 店番をしていた父と母が驚きの声を上げた。

「城で王位決定戦が行われるから、それで帰ってきたんだ」
「ええっ!?」

 両親とニナ、三人が同時に驚いた声を上げる。

「そんなバカな。家のような商人の出身者に招集がかかるわけないだろう」
「ほら、正式な書状だよ。俺もそれなりには名の知れた剣士だからさ」
「いやぁ……しかしなぁ……」

 両親は半信半疑の眼差しで書状を読んでいる。

「もし俺がオルト国王になったら、みんなで城に住んで裕福な生活をさせてやるから」
「お兄ちゃんが国王なんて、そんなのイヤッ!」

 ニナが泣きそうな顔で会話に飛び込んできた。

「ニナ、一体どうしたんだ?」
「ニナは今のままでいいの、お兄ちゃんとずっとここで暮らしたいの!」
「俺はニナに高級なドレスを着せてあげたいんだ。それに、王女様からの召集を断るわけにもいかないし」
「お兄ちゃんのバカ! ドレスなんか要らないんだから!」

 ニナはそう叫ぶと、自分の部屋へと駆け上がっていった……どうも機嫌を損ねてしまったようだ。
 フェイリーン王女に自分の兄を奪われると思い、嫉妬したのだろう。

「しかし、王位決定戦には名立たる勇者が集まると聞いているぞ、お前が勝てるのか?」
「それは、やってみないとわからないさ」

 ニナの事が気になるものの、とにかく俺は明日の王位決定戦に備えて懐かしい自分の部屋で旅の疲れを癒すことにした。

■フェイリーン王女と森の魔女

「ニナ、行ってくるよ」
「……お兄ちゃんなんか知らない」

 朝の出掛けにニナに声をかけたが、まだ機嫌は直っていなかった。
 ニナと仲直り出来なかったことに後ろ髪を引かれながら、俺はオルトの城へと向かった。
 早朝の城門の前にはすでに数十人の男達が集まっていた。国中の勇者という勇者に書状を送っていたようだ。

「しかし、本当にこんなことでフェイリーン王女と一緒になれるのか?」
「ホント美人だよな、フェイリーン王女」

 集まった男達があちらこちらでフェイリーン王女の噂をしている。
 フェイリーン王女は諸国でも指折りの美女で、王女ではなく、お姫様と呼ぶ方がふさわしいほどの若さだ。

「よお、スレイ。悪いが玉座は俺のものだからな」
「カインじゃないか! 久しぶりだな」

 カインは俺の幼馴染で諸国に名の知れた有名な剣士で通称タフガイとも呼ばれている。正直、俺が勝てるような相手ではない。

「俺だって、そこそこには強いぞ」
「まぁお手並み拝見だな。じゃあ後でな」

 カインという強敵の登場で先行きが不安になってしまったが、今更後には引けない。
 俺は一層気を引き締めて、他の猛者達と共に城の中へと向かった。
 城の兵士によって俺達は中央の大広間に円を描く様に集められ、整列させられた。
 そして気品あるファンファーレと共に、テラスの上にフェイリーン王女が現れた。

「フェイリーン王女の御前である、一同ひかえよ!」

 高官の号令と共に俺達は跪き、美しきフェイリーン王女に敬意を表した。
 一礼が終わりテラスへと視線を戻すと、相変わらず美しい王女の傍らに黒いドレスを纏った女性の姿があった。

「あれは……森の魔女じゃないか」

 森の魔女……本当の名前は誰も知らないが皆がそう呼ぶ。北方にある魔女の森に住む強大な力を持った魔導師だ。
 見た目は若く美しい女性だが、本当の年齢を知るものはいない……。

「世界の名立たる勇者の皆様、よく集まってくれました。フェイリーン王女に代わって、この私が玉座に相応しい男性を選定します」

 おおよそこの場に相応しくない森の魔女が国王を選定をする。こんな話は聞いたことが無い。
 俺は魔法とは全く縁が無い、もし魔力勝負になれば勝ち目は無い。他の男達も顔を見合わせて動揺している。

「王女様、それでは始めてもよろしいかしら?」
「ええ、お願いしますわ」

 森の魔女はフワリとテラスから舞い上がると、そのまま円を描く俺達の中央へと静かに降り立った。

「なんて魔力だ……」

 まるで、黒い蝶のように音も無く空を舞う森の魔女に、一堂が息を呑んだ。

「それでは、オルト国の玉座を賭けた戦いの説明をします」
「戦い?」
「ええ、決戦の場所は魔女の森。明日の夜明けと共に森に入り、一番最初に魔女の館に辿り着いてアイテムを取り戻した方を勝者とします」
「取り戻す?」
「ええ、取り戻すのです。日没までに取り戻せない場合、アイテムは没収します」

 取り戻すという意味がよくわからない。俺達は困惑してどよめいた。
 魔女の森に住む魔獣や異形のモンスター達もかなり手強い相手だ、そこで命を落とした者も多い。

「それでは、皆様の大切なアイテムを回収します」
「ちょっと待ってくれ! 剣を奪われたら森の魔獣と戦えないじゃないか!」
「そうだそうだ! 丸腰で魔女の森に入れる人間なんかいないぞ!」

 男達が一斉に声を上げる。武器を持たず魔女の森に入るのは自殺行為でしかない。

「それは心配ありませんわ、勇者様のシンボルである剣や武器を回収するつもりはありませんから」
「それじゃあ一体、何を回収するのですか?」
「フフフッ」

 森の魔女は無邪気な笑みを浮かべると、静かに右手を挙げ、そのままヒュッと振り下ろした。

(バサッ)

「うわっ!?」

 下半身が急に寒く感じ、ふと視線を落とすとズボンも下着も消え去っていた。
 円を描いた百人ほどの男達全員が、チンポとキンタマを露出した状態で突っ立っている。
 このままではフェイリーン王女への不敬で処刑されてしまう。慌ててそこを隠そうとするも手足が全く動かない……森の魔女の魔法に掛かってしまったようだ。

「まぁ。素敵なチンポがズラリと……あら、カワイイ子もいるわね、フフフッ。きっとフェイリーン王女もお喜びですわ」

 フェイリーン王女は手を口に軽く添え、笑みを浮かべながら俺達の下半身を観賞していた。

「(アイテムって、まさか!?)」
「大切な勇者様のシンボルの代わりに、男性のシンボルを回収させていただきますわ」

 森の魔女がパチンと指を鳴らすと、彼女の体から百人ほどの分身が現れ、俺達の前に立ち並んだ。
 その手には大きな空のワイングラスと、鋭く弧を描いたナイフが持たれている。

「(きっ、切られるっ!!)」

 俺は男として人生最大の危機を目の前にしながらも、魔力によって身動きを封じられており何も出来なかった。

「フフフッ、みんな大人しくていい子ね……チンポを大きくしなさい」

 森の魔女がそう言うと、その分身たちは淫靡な笑みを浮かべながら一斉にチンポを口に含んだ。
 見るからに猛者な男達も、その快感には勝てずに吐息を漏らしている。
 ほんの数秒で男達のチンポは反り返り、起ち上がった。

「(きっ、気持ちイイ……ダメだ! 起ったら切られる……あぁっ、ダメだ! )」

 俺は必死に耐えようとしたが、無駄な努力に終わった。
 森の魔女の分身は、名残惜しそうに起ち上がったチンポの先端から口を離すと、大きなワイングラスをチンポとキンタマの下へと構える。

「さあ、覚悟は良いかしら?」
「(イヤだヤメテくれっ!)」

 心の叫びも空しく、分身たちは揃って笑みを浮かべるとナイフを持ち上げ、チンポへと刃を振り下ろした。

(ヒュッ、ズパッ!)

 大広間に残酷な音が鳴り響き、一斉にワイングラスの中に男のシンボルがボトリと落ちた。
 その股間はまるで女性のようにツルンとしており、チンポとキンタマの跡地に丸い断面が覗く。
 付いていて当たり前のモノがそこに無い……男としての俺が崩壊しそうになり、心の中で悲鳴を上げた。

「(ウワァアアアアアアッ!!)」

 他の男達も悲痛な表情で涙を流している……。

「それでは、皆様の愛おしいチンポと共に館でお待ちしてますわ、フフフフッ」

 森の魔女はそう言い残し、俺達の男のシンボルを抱えた分身と共に一瞬で消え去ってしまった……。
 同時に魔力が切れ、体の自由が戻ると。足元にはズボンと下着が現れた。

「畜生! なんてこった!」
「俺のチンポ返せっ!」

 怒りに叫び声を上げる者、ガクッと膝を落とし頭を抱え泣き喚く者、呆然とする者……城の大広間は悲劇の会場となった。
 ふとテラスを見上げると、フェイリーン王女の姿も無く、俺達はショックから立ち直るまでそっとそこに放置された……。

「ヨシ! 俺は絶対取り返すぞ!」
「そうだな! 俺も絶対に取り戻す!」

 夕暮れ頃になると、心の整理が付いた男達が城を後にし始めた。
 チンポに余程の思い入れがあったのか、ショックで廃人になってしまった者は兵士によって城の外に放り出された……。
 中にはすっかり女性言葉になり、嬉々としながら内股で城を去る者もいた……。

「そうだな、取り戻せば良いんだ!」

 俺もそう決意して心を奮い立たせ、家へと戻ることにした。
 城を出ると門の前には人だかりが出来ており、そこにいた友人が俺に駆け寄って来た。

「スレイ、お前もチンポ切られちまったのか?」
「なっ! なんで知ってるんだよ」
「街中に噂が広まってるぞ、歴戦の勇者達が森の魔女にチンポ切られて女にされたって」
「俺は女じゃない!」
「す、すまん、悪かった……」

 チンポを切られたことが街中に知れ渡っている……あちこちで知った顔が同情した顔で俺を見つめる。
 せっかくの決意の心が折れそうになりながら、恥ずかしさと悔しさで俺は全力で走り去った。
 股間にチンポとキンタマが無いせいなのかスムーズに走れる。そのことが一層、俺を辛くさせた。

「スレイお兄ちゃん!」

 家の前には心配そうな表情をしたニナが待っていた。俺は気まずくなりその場に立ち竦んだ。
 ニナがゆっくりと俺の方へと近づいてきた……俺はニナの顔が見れなかった。
 ニナは無言のまま俺の前に立つと、股間へと視線を落とす。当然、俺がチンポを切られた事を知っているのだろう。

(キュッ)

 ニナはいつもの様に手を伸ばし、俺の股間を掴む。しかしそこにチンポは無く、ニナの手に空しくズボンの生地だけが掴まれる。

「お兄ちゃんのバカッ!」

 ニナは号泣しながら俺の胸を両手で叩く……俺はそっとニナを抱きしめようと手を伸ばしたが、その手を振りほどくとそのまま家へと走り去った。

「ニナ……心配かけてすまない」

 俺はそうつぶやくと、ニナの後を追うように家へと入った。

「スレイ……」
「ただいま……」

 両親は何も言わず、ただ心配そうな表情で俺を見つめる。
 いつもなら楽しい食卓が、まるで通夜のように静まり返る。ニナは部屋に閉じこもり、食事にも降りてこなかった。

「ニナ、チンポは必ず取り戻すから心配するな」

 ニナの部屋の前でそう声を掛けたが、やはり返事は無かった。
 俺は明日の準備を整えると、何時もより早く眠りに就いた。

■アイテム奪還

 俺は夜更け頃に起きて家を後にすると、早々に魔女の森の入り口へと辿り着いた。
 ここから数マイル先にある小さな池の畔に魔女の館がある。
 すでに数十人のチンポとキンタマが無い男達が集まっており、皆、無言のまま夜明けを待つ。
 早朝の冷え込みで何人かがコソコソと木陰に入り用を足す姿が見えた……俺もその一人だ。

「畜生……情けないなぁ……」

 いつもならヒョイとチンポを出して済ませられるのに、今は下半身を丸出しにして座ってするしか手段がない。
 何となくパーティに参加する女性達の苦労がわかったような気がした。
 男なのに平らになったそこから用を足す自分の姿が憎く、そして悔しかった。

「夜明けだ、先に行くぞ!」

 東の地平線に輝く朝日が見えた瞬間、先頭を切ったのは幼馴染のカインだった。
 俺達も後に続き魔女の森へと突進する。森の中はまだ暗闇が残る。

「ギャッ!」

 森に入って早々に魔獣の餌食になる者が続く。この森はベテランでも迂回するような危険地帯だ。

「チンポを取られた上に、こんな所で犬死なんてゴメンだ!」

 俺は自分の持つスキル以上の技を繰り出し、オドロオドロしい魔獣どもを切り倒し前へと進む。
 気がつくと皆、疎らになり、自分の位置を見失いそうになる。
 皆、脱落したのか。あるいはもっと前に進んでいるのか、全くわからず気持ちだけが焦る。

「ちょっと、そこのお兄さん」
「誰だっ!」

 いきなり背後から可愛らしい女性の声が聞こえ、俺は咄嗟に剣を構えた。

「キャッ、怖い!」
「サキュバス……か?」

 短い黒髪でキュートな顔をした少女。肌の露出した挑発的な黒い衣服を纏う。そして黒く大きな翼に黒い尻尾……サキュバスだ。

「こんなカワイイ女の子にいきなり剣を向けるなんて、あなた童貞でしょ」
「なっ! 大きなお世話だ……」

 魔女の森にサキュバスがいるのはとても珍しい。
 元来、魔女とサキュバスは女同士で相性が悪く、共存出来ないからだ。

「もしかして、お兄さんもチンポ付いてないの?」
「ああ、付いてないぞ。だから去れ」
「もうっ! 珍しく若い男達が森に入って行ったから期待して追いかけたのに、残念」
「ああ、残念だったな……そうだ、魔女の館に行けば良いんじゃないか?」

 俺は少し考えて、このサキュバスを利用してやろうと思った。

「あら、どうして?」
「俺達のチンポとキンタマはそこにあるんだ、辿り着いたものから順番にそれを返してもらえるんだ」
「ふぅん、でも魔女の館は私達サキュバスに見えないように魔法をかけてあるの」
「俺が案内すれば辿り着けるかもしれないな」
「あら、ずいぶん優しいのね。そんなに私としたいの? 吸い尽くしちゃうわよ?」
「俺なんかより、もっと意気が良くてイイ男が揃ってるよ」
「あら、悪い人……でも気に入ったわ、フフッ」

 サキュバスは俺を後ろから抱き上げると黒い翼を広げ、一気に森の上空へと飛び上がった。
 背中に押し当たるサキュバスの二つの膨らみにドキッとしたが、当然、俺の股間は何も反応しなかった。
 森の地平線に微かに魔女の館の屋根が見える。しかし、サキュバスにはあれが見えないらしい、俺はその方向へと案内する。

(ゴソゴソ……)

 俺を抱きかかえたまま、サキュバスは俺の股間に手を入れてそこをゴソゴソと弄る。

「あら、切り株になってるのね。なんかカワイイわね〜」
「ちょっ、何をするんだよ!」
「どこから見ても男なのに、チンポもキンタマも付いてないって変な感じ」
「……ほっといてくれ」
「あら、傷ついちゃった? ごめんね、フフフッ」
「だから、そこを弄るなってば!」
「こうやって弄ると、気持ちイイ?」
「何も感じないよ……」
「そうなの? 可哀想ね……」

 可哀想と言いながらも、サキュバスは延々と俺の切り株を弄りながら、魔女の館へと飛び続けた。
 森に視線を落とすと、時折、魔獣を倒すのに苦戦している男達の姿が見える。
 俺とサキュバスは風のような速さで飛び続け、日没まで余裕を残して魔女の館へと迫った。

(つづく)