ドラマ「夢中さ、きみに」に夢中になった年明け

2021年はドラマ特区「夢中さ、きみに」で始まりました。
原作は今話題沸騰中の和山やま先生のオムニバス短編集で、ドラマ化を知って早速買って一気読みしてエッこれをドラマ化……?楽しみすぎるんですけど……?と昨年末から期待を募らせることこの上なかったのですが、見事に期待以上のドラマで大満足しました。脚本は声優さんでもあり、アニメや映画の脚本も書かれる喜安さん、メイン監督はMIU404の塚原さん。もうこの布陣だけでも最高というね!


さてたびたびこのnoteでも触れていますが私は特撮が好きです。去年の令和1号ライダーであるゼロワンも初回から最終回まで殆どリアタイして見ていたので、元々はゼロワン主演だった高橋文哉くんが出演されるというところから興味を持った勢でした。
いやー高橋くんゼロワン→せんけす→むちゅきみ、と出演作が良い。
唐突に脱線して高橋くんの話になるんですけど、ゼロワン1話の段階で思い切りもよく演技は上手でらしたのですが、終盤予想外の展開での今までと全く違う表情と演技に界隈がざわつきこれは!!となりました。二面性のある役を演じられた時の高橋くんはすごい、と2020年個人的に非常に引き込まれた役者さんであります。
せんけすでも優等生とサイコパスの二面性を持った藤原刀矢役、そしてむちゅきみでも中学生の時はジャニーズJr.と言われた美貌をとある事件から隠し"逆高校デビュー"を果たした究極の陰キャ二階堂明役……まだ未成年でらっしゃるんですがイベント等での回しや挨拶など本当しっかりしてる方なので今後のご活躍を心より楽しみにしております!

謎の目線になってしまった。

「夢中さ、きみに」は林編と二階堂編に分かれており、それぞれ少し変わったユニークな主人公とその彼らに巻き込まれていく級友たちの淡々として濃ゆい日々を描いた短編集なのですが、原作では全く別物で絡むことのなかった"林良美の世界"と"二階堂明の世界"を少しずつそして見事にリンクさせているのがドラマむちゅきみ好きポイントその1です。

そのキーパーソンとして原作短編のいち登場人物であった松屋女史、そのキーアイテムとして同じ短編に出てきた小説「鉄と鉄」を用いているのが秀逸。既に1話において東京の学校に通う林と、修学旅行で東京に来た二階堂がニアミスするというおいしいシーンがあったのですが、第4話では二階堂編の級友でドラマオリジナルキャラである荒川さんが実はその「鉄と鉄」の愛読者で、林編の登場人物である松屋女史とSNS上での友人であった、という奇跡の繋がり方をしました。
終わってみれば「鉄と鉄」は全話に登場し、事あるごとに両編の登場キャラクターたちの背中を押す作品として描かれておりました。この展開は原作を読んでいた時には全く予想もつきませんでしたし、小説「鉄と鉄」にとても興味を持ちました。ぜひとも読んでみたい。
更に最終話の5話では二階堂編が原作を飛び出しその先を描いたドラマ版むちゅきみを見ることができ、最後には1話でニアミスした「交差点」で漸く林と二階堂が出会う(しかも林は松屋女史を通じて荒川さんをも知っている)というアツい展開に諸手を挙げました。”ちょっと変わった”登場人物たちが、交差点=クロスポイントで交錯していく……なんというか少年漫画の「俺たちの戦いはこれからだ」的な、戦隊作品で漸く全員揃って敵に立ち向かっていくところ的な、ワクワクが止まらない終わりかたでした。全5話というのは短すぎます……。


今ドラマには若手の役者さんたちが集っており、この状況下大人数の学園ドラマを撮影するのは大変でらっしゃっただろうとは思いつつ、その若い才能がぎゅっと詰まった30分を見るのが毎週楽しみでした。好きポイントその2と申せましょうか。

二面性のある役がお上手な高橋くんを、本来はモテすぎるくらいの美貌と素直な性格を隠し、猫背で伊達眼鏡で陰キャレベルMAXの二階堂役に選んでくださった制作さん方がまずすごいのですが、現役ジャニーズJr.として活躍されている大西くんを主人公林役としてキャスティングなさったのもすごい。ひょんなことから級友の江間くんに「かわいい?」と絡みだす林が実際バリバリにかわいいのでそらまあね……!と説得力がすごいです。
林は基本常に感情がフラットなのですが、その中でも2話でパンダの着ぐるみを脱いだ時に大西くんが(林として)ちらりと見せた笑顔が破壊力抜群で、思わず級友の江間くんも「かわいい」と思ってしまうシーンが印象的です。
大西くんはついつい見てしまうバラエティ「あざとくて何が悪いの?」の”あざとい"ゲストで知りまして、トークも面白く、纏う空気もどこか柔らかでかわいく、"あざとい"実技もまだまだ本気出してないですが?という感じで興味をひかれました。何を隠そうこの時の再現VTRの主人公が高橋文哉くんでありまして、ジャニーズJr.である大西くんが高橋くんのお名前をご存知だったことにちょっとワッとなったのですが後々このドラマの伏線であったのがわかって非常にスッキリしました。ジャニーズJr.ってことは大西くん歌って踊ってなさるので……?すごい沼の入り口が見え隠れする……またしても脱線してしまった。
林に絡まれる江間くん役の楽駆さんは今回初めて拝見したのですが、もうあの、江間くんの冷めて淡々とした感じ、それでいて幼い兄弟を見ている家にいる時の面倒見のいいお兄ちゃんの感じ、いいわ〜と感心いたしました。過去作を教えて頂いたのでそのうち見る予定です。3話の後輩小松くん役はMIUにも出ていた旺志郎くんで、5話のパシられ山田役は望月歩くん、将来有望な若手俳優さんたちばかりです。もう旺志郎(くん)は芸人時代、子役時代から知ってるもので失礼ながら我が家では清史郎(加藤)と同じく名前呼びがデフォルトになっています。清史郎くんも今「モコミ」に出演なさってますね……いや大っきくなっちゃって……
そしてこのドラマで個人的一等賞だったのは間違いなく二階堂編の級友目高役の坂東龍汰さんでした。もう本当目高くん。ひょんな事から二階堂の秘密を知り、彼の素顔を見たいと深く関わるようになり、徐々に”友達以上”の不思議な感情を抱いていくという原作でも大好きなキャラクターですが心の底から100点満点の120点。明るいけれどちょっと淡白でアウトサイダーな存在、ユニークなムードメーカーとしてのさりげない立ち居振る舞い、初めはおっかなびっくり、次第に二階堂に惹き込まれていく表情の変化……二階堂と目高くんの間の絶妙で危ういバランスの空気感が映像となって立ち上がってきて、週を追うごとに非常にワクワクしました。勝手に修学旅行の班に二階堂を加えて、無言の抵抗にあった時のニヤア、という笑顔なんか原作にないのに見事に目高くんで解釈の一致……!目高くんが目高くん以上に目高くんで苦しい!と液晶の前で転がっておりました。
高橋くんと坂東くんは放送期間中SNSでたくさん発信なさってたのが印象深く、また2回ほどコラボでインスタライブをやってらして、その仲良しさが微笑ましかったです。またどこかの現場で会いましょうね!と仰ってらしたので、次回作以降も楽しみにしたいところ。


ドラマむちゅきみ好きポイントその3は、原作の解像度を上げる演出や雰囲気や空気感を損なうことないオリジナル展開を挙げたいです。

「鉄と鉄」や松屋女史を全編に関わるキーとして置いたのもそうですが、第3話「描く派」は、美術部の小松くん(演:前田旺志郎)が自分のキャンバスで干し芋作ってた先輩の林を絵のモデルとして選び、コンクールに出すために人物画を描く物語。正面を見る林の姿を描いた小松くんが仕上げとして後ろの余白に林に何か描いて欲しいと頼み、何故か林は「自分を描いている小松くんの後ろ姿」をそこに描く……コンクールで受賞はならなかったものの小松くんとしては大満足の作品になった、というストーリーなのですが、
何故林は小松くんの”後ろ姿”を描いたのか?という点が映像化されることにより非常に分かりやすくなっており、見ながらなるほどと膝を打ちました。原作を読み返し、あッこのコマってそういうことだったのか!と漸く気付きまして、自分の察しの悪さと、謎解きのようなお洒落な演出、塚原監督のクレジットにうわうわうわとテンションが上がったのを覚えています。
オリジナル展開としては前述オリジナルキャラである荒川さんと、彼女も交えた5話二階堂編、修学旅行中での目高くんと二階堂の逃避行が素敵でした。二階堂の”正体”を怪しんだ荒川さんに追い掛けられ、プリクラに逃げ込んで写真を撮る原作にないシーンの会話も素晴らしかったですし、その後の追いかけっこのターンでわかる、
荒川さんは(恐らく)目高くんのことが好きで、目高くんは自分だけが知っている”本当の”二階堂のことを他の人に知られたくないという(恐らく)優越感や独占欲のようなものを抱え始めている、ともすると奇妙な三角関係のようにも思えるのに決定的な描写は何一つないし誰もそんなことは言っていないという粋な演出。大好きです。あの修学旅行の後一体彼らはどうなったのか、受け手に委ねる余白や行間を感じさせる終わり方に大いに心踊りました。
この先、もし林や二階堂の新たな物語が紡がれることがあったなら、大西さん高橋くん始めまた皆さんで帰ってきて、どうかあの冷めているようで暖かいドラマをもう一度作って頂きたいと思います。


さて。
林は学校中の階段の数を数えたり(ドラマではここで息が切れていたのがよかった)、看板の文字を一文字ずつ写真で撮っては単語を作り自分でしりとりをしてみたり、他人のキャンバスで干し芋作って見たりと「無駄なこと」をしているユニークな子で、「心に余裕があるうちは意味のないことをしていたい」とその余裕を楽しむキャラクターです。そのふわふわしたモラトリアムを享受する姿に自分の学生時代を思い返して、私も無駄な事ばっかやってたな〜と思ったのは言うまでもありません。ここまで突飛なことはしてなかったものの、ずっと勉強もせず部活に入り浸り、変わり者ぞろいの友人たちと全力でふざけた学生時代だったと思います。
1番無駄?だったのはただの備品置き場だった部室を何故か一念発起して大掃除&大改造し、住めるようにした事ですかね……最高学年になってからは友人と毎日のように部室に集まってお昼を食べ、馬鹿馬鹿しい話をしては隣の部まで巻き込んで連日大騒ぎをしていました。遊ぶことに全力な部活メンバーだったので、朝から晩まで遊び倒したり、全員で県外のペンションに泊まりに行ってひと騒動起こしたり、意味もなく全力で仮装してみたり、余りにも有意義な「無駄なこと」をしていました。そのどれもが鮮やかに思い出せるのに、アツい青春どころか淡々としている。「夢中さ、きみに」に夢中になったのはそういうところに共感したのかな、と今改めて思います。
この作品をドラマ化してくださり、出会わせてくださったことに感謝しつつ、今週からのドラマ特区次シリーズ、「西荻窪三ツ星洋酒堂」にも期待していきたいと思います。
何と言っても主演は我らが町田啓太氏。個人的に西荻窪は縁のある土地なのでソワソワしながら拝見するつもりです。