チェリまほ6話と、懺悔と、

ピースを入れ替えるとガラッと意味が変わる、みたいな仕掛けがこの世の中でも最高レベルに好きなんですが、それをドラマで体験するとは思いませんでした。(前置き)


まぁ私ごとですがとにかくこの1週間テンションの乱高下がすごかったです。

赤楚くんが出てらして視聴途中になってた仮面ライダーアマゾンズS2を完走し、途中からつらすぎてタオルをびしゃびしゃにし、
色々あって呪詛を吐きながら帰ってきた夜藤川球児引退セレモニーでドン引きするレベルに号泣してそこからのチェリまほ5話BS放送でほんわかして寝、
共演NGとウルトラマンZが面白くてテレ東さんにどっぷり浸かる中アマプラで何故かCRISISを一気見してしまい最高のバッドエンドに満面の笑みを浮かべ、
自分の中の感情という感情が大活躍した1週間でした。スピード感がハリウッド・ドリーム・ザ・ライド並み。

特に球児の引退セレモニーは絶対泣く絶対泣くって思ってたら本当に心配されるレベルで泣いたので、自分の中での伏線回収が完璧で……


さて。
毎週ワーーッてなったことをここに綴りにきてるのですが、あまりにもチェリまほ6話からの7話予告が凄すぎて何も書けませんでした。
というか全シーンについてココ!ココ凄くない!?とかココめちゃくちゃ良くない……?とか3秒に1回一時停止ボタン押して語りたくなっちゃうのでもう収拾がつかなくて……
仕方ないので4つテーマに、ココ!てぎゅんときたポイントをただただ訴えたいと思います。


・安達の部屋のシーンにおける黒沢の手よ

まず冒頭姉沢(元カノではないことは原作既読者なので存じ上げておりました)さんから再び部屋を奪い取られた黒沢。姉沢さんと黒沢は絶対近所でも評判の美人姉弟だったことと思います。何歳差かわからないけど学校でもお互いモテてた。絶対モテてた。
姉沢さんも、具合が悪い安達のことをちゃんと心配しつつのうまいこと弟から部屋を強奪してて上手。この作品「エッ?」ていうリアクションが印象的と思うのですが、泊まりがけの看病を提案された時意味が真逆なエッ?がハモるの面白すぎました。

結局安達の家に帰ってきた2人。作中だいたい蔑ろにされるのは黒沢の鞄なのですが今回は安達の鞄が投げ出されている。そしてくしゃみをした安達を心配して駆け寄ろうとした黒沢がその鞄に蹴躓きそのままベッドに安達ごとどん。わぁこれがベッドドン。
この時の壁についた黒沢の左手よ。少しずつずり落ちていくショットが素晴らしく素敵。脚本なのかな演出なのかな……勝利している……色んな意味において安達に向かって崩れ落ちていくようで非常に象徴的。ちょっとセンシュアル。薄いカーテンを通してのショットもとてもどきどきしましたね……脳内をよぎったのは映画タイタニックのワンシーンでした。


このときばかりは瞬間ちょっと"垂直抗力!"とか"静止摩擦係数!"とか思っちゃった自分を恨みました。癖で。
好きな相手をベッドに押し倒しているような状況ですが黒沢はその彼が病人であるのをきちんと思い出して、何どきどきしてるんだよ、と理性フル稼働で置き場所も知らん体温計を探しに去っていきます。

そして夜半、熱が上がってきたらしく魘される安達の額に濡らしたタオルを充てがってあげる黒沢の手。優しく暖かく、心底心配しているのが伝わる手。手当てという言葉の意味がじんわり沁みました。本当会社の同期が寝込んでるからって夜通し布団も引かずに看病しませんて……安達に向かった愛が集まって固まっていくような……献身ぷりがすごいです。

好きなだけ泊まっていいよという爆弾発言に再びフリーズしたり、ポーカーフェイスで「10月28日、今日は安達との同棲記念日!」だのかの有名な妄想ソングに合わせてお揃い☆ジェラピケ☆スウィートライフ☆をぶちかましたり相変わらず黒沢の脳内は荒れ狂っておりましたが私が最後このシーンでウッてなった黒沢の"手"は、作ってあげたお粥さんをフーフーした挙句「火傷するなよ」て渡したあと頬杖つこうとしてる手です。カットぎりぎりなのだけどちょっと本当最高で。あれは絶っっ対ずっっとお粥さん食べてる安達を見つめてるやつ……2話で「じゃあ、毎日食べに来る?」て見つめたときの表情してる絶っっ対……料理という特技を手にした時の黒沢が、ちょっと大胆に踏み込もうとする瞬間好きです。この辺で貯まって貯まって集まった愛が少しずつ煮詰まり始めてるのを感じます。


・黒(ヤギ)沢の表情がすごいジェットコースター

すんごい乱高下してましたね。急旋回、急上昇、急発進、てやつ。
朝、ジェラピケ☆スウィートライフ妄想見せられたことで帰って黒沢と同棲?生活がスタートするのが不安な安達。パニックになると頭を打ち付けたり掻きむしったりするのが癖なのか髪の毛が乱れちゃう。それをちゃんと直してくれる藤崎さん。彼女と安達は同士というか人間としてとても良い関係なのですが黒沢はんなこた知らないので通りすがり"安達の髪を触っている藤崎さん"に思わず嫉妬してしまう。
そして安達は仕事が定時に終わっちゃって気が重いのに、んなこたつゆほども知らん黒沢は律儀に同棲相手の安達を待っている。以前は自分の席で安達を見守ってるだけだったのが、遂に安達の席の前でソワソワするに至りました。周りの人にどうしたの?て聞かれて安達待ってるんです!くらいの会話は一通り済ませていそう。
一瞬後空気を読まないことで有名な六角くんによってちょっとペンディング、という安達の逃げ道は見事に遮られるんですけどこの時のパッ!て笑顔になる黒沢が本当にかわいい。ヤギじゃなくて大型犬のそれです。
そこからの居候してるんだよドヤァからの絡む六角にムッとしてからの安達の「(うち来て)いいよ!」に絶望しスウィートライフをぶち壊されてしょぼんとする一連の変遷が職人芸でした……3話で額に口付けた後立ち去る時のスッと真顔になった時を思い出しましたが喜怒哀楽がどんどんわかりやすくなってるぞ……

シーンは飛びますが、六角くんが遊びにきてのタコパ(社会人でタコパするのかわいい)でこの喜怒哀楽がさらに爆発していくのが素晴らしかったです。何の他意もなく先輩にあーんをかます六角くんと何の他意もなく口を開ける安達に自分も小さく口開けてあ……てなってる表情、口についたソースを何の他意もなく拭ってあげる六角くんにそれは俺もやったことない!とばかりにムスッとして良き先輩としてのあれこれが崩れた表情。締めのアヒージョを作り、大好評なことに相好を崩し「安達のうんま!は俺だけのものだ」と大マウントを披露したすぐ後で「大人気なかったか」と反省してビール煽っちゃう表情……

でもそういった喜怒哀楽が今までの"パーフェクト超人"だった黒沢の内側に触れられたようで、安達には「かわいいかも」と思える。
この辺が素敵なとこだなと思いました。黒沢がみっともないなと思っているところが、安達にはかわいくて魅力に映る安達が俺なんか、と卑下してしまうところが、黒沢には誰よりも愛おしく感じられる。最高の2人じゃないですか、と思うのだけどまあ世の中そんなに簡単にはいかない、と。


・柘植の愚かさがいとしい

さて一方ウッカリ、ミケネコ宅配便の金髪パーリーピーポー綿矢湊くんにキュンとしちゃって以来愛猫うどんをダシに(シャレではない)なんとかコミュニケーションを取ろうとしている柘植。1時間おきに時間指定で荷物を頼み(せめて日付をずらしてくれ)、湊くんが来ないとわかるや集配所までオペラグラス片手に偵察に乗り込んじゃう。妄想の湊くんを脳内で登場させ、「オッサンがキュンとかキモイんだよ!」と勝手に言わせて通報間違いなしレベルに落ち込んでみる。この時のあっかんべ〜、が柘植の想像する"反抗"の限界で可愛すぎて笑いました。
恋は人を愚かにさせる。の通り見事にオモシロくなっちゃってる柘植。

しかし、湊くんは柘植に愛想を尽かしたのでも配達区域が変わったのでもなんでもなく、ダンスに打ち込んでいたのでした……。真剣に踊る彼を見る柘植はもう素晴らしくへんにゃり。へんにゃりのバリエーションはさすが生みの親なので多彩です。
「愚かであることが、止められない」
早々にこの想いが恋であることに気付いた作家先生の詩的な言い回しと、何が起きてるんだかさっぱりな安達の対比が鮮やかでした。

このドラマにおけるコメディの部分は結構な割合柘植と湊くんに託されてると思うのですが、それを最高の演技とアフレコで魅せてくれるお2人が毎話眩しいです。特に6話は彼らがいないと切ないの階乗になりかねないので……早くあの部屋の外で湊くんと出会う展開が来て欲しいもの。


・切ないの階乗

2つ目のCMを挟んだ後からエンディングまでずっと息を詰めていた気がします。
六角くんが泊まりにきた夜。令和の健やか青年である彼は健やかにいびきをかき、健やかに隣で眠る憧れの先輩の胸に手を乗っけて健やかにお休みあそばしている。
なんとなくうつらうつらとしながら半分起きて半分寝てるくらいの安達と、完全に目が覚めてしまったらしい黒沢。
町田黒沢のハーフパンツは最高でしかなかったんですが10月28日夜の気温が気になるところです。

病み上がりの安達を心配してか、はだけてしまった掛け布団を直してあげようとする黒沢。その触れる手から伝わるのは、安達の自己評価の低さを嘆く声でした。
「俺なんて、なんてもう言うなよ。安達は俺にとって、特別なんだから」
好きな人を、その人自身が貶めてけなしてるのは辛いです。そんなことない、安達はすごい、もっと自信持って、全部全部伝えたいのにただの同僚じゃ伝えられなくてもどかしい。想いが煮詰まって煮詰まって、だんだん喜怒哀楽が抑えきれず爆発するようになって、今特別な相手が目の前にいることで溢れて、つい眠る安達の頬に手を差し出してしまう切なさと美しさ。

想いを伝えられることはおろか触れられることなんて安達は望んでないのに、その理性をふと超えかけてしまったことに気付いて自己嫌悪に襲われる黒沢。再び薄いカーテン越しのショットと、「なにやってんだ、俺」と苦悩する切ない横顔……切ないの階乗が止まらない……美しい人が苦しむ様は更に美しくて困りました

これ以上安達のそばにいたら、もう想いを抑えきれないと悟って、黒沢は安達から離れる覚悟を決めます。
んなこた知らない安達は家へ一緒に帰りながら黒沢に無邪気に話しかけるのですが、心ここに在らずな黒沢。その反応を見て、自分の恋愛経験のなさが"重い"と言われたトラウマを思い出してしまう……この時の大学生安達がほんと大学生でびっくりしたのですが、そうとしか言えない自分の語彙のなさにも今びっくりしました。
このトラウマが、更に安達が恋愛に臆病になった理由でもあります。それをまた自虐的に話す安達に、全部初めてなんて幸せで嬉しいと思う、俺だったらめちゃくちゃ嬉しい、と核心をつき始める黒沢。当然一緒に自分の家に帰るものだと思ってる安達に、もう泊めて貰わなくて大丈夫、と決別を告げます。

「これ以上一緒にいるのしんどいんだよ」
「俺、お前のこと好きなんだ」

原作を読んでる時も切ないシーンだと思ったのですが、町田さんの演技により黒沢がいかに断罪されるつもりでこの告白をしたのかが痛いほどわかり、この辺は息するのを忘れていました。こんな自罰的な告白ってあるん……と。
「エッ」というリアクションが印象的ということを書きましたが、好きと告白されたあとはそれを飲み込んでただ黒沢を見つめる安達も印象的。黒沢の気持ちを知っていたから、とも思えるし、反応も返せないほどだった、とも捉えられました。ただ、切ない黒沢の想いを茶化すことも笑い飛ばすこともしない、黒沢の好きになった人が安達で良かったな……とこの物語の真摯さに改めて感謝していました。


問題はそこからのエンディングと7話予告です。
予告において黒沢は7年間片想いしていた、ということが明かされてもうひっくり返りました。彼らは30歳なので、大卒で入社したとすると凡そ8年目くらいと思うのですが、7年前つまり入社してすぐくらいの頃に黒沢は安達に想いを寄せるようになったと。
これは驚きました。
そうなると、この7年間黒沢はずっと同じ会社にいて安達を想いながらただの同期としての距離をひたすらに守ってきたことになります。切なさの階乗が無限大に発散していく……
その7年間、苦しんだり、自分はおかしいんじゃないかと思ったり、小さなことに一喜一憂してみたり、1話冒頭でよき同僚としてニッと笑ってみせたような、あんな関係性に落ち着くまで葛藤し続けたのではないかと思ったらつらくて、つらい。
想いを押し殺すのにはそのうち慣れてしまいます。痛みも感じなくなっていきます。妄想でしか何も叶わないと思うから、似合いそうなパジャマも買ってしまいます。

そうやって均した恋心をポーカーフェイスの影にずっと温めていたと思ったら、そりゃ朝一緒になっただけでラッキーだし、終電逃して泊まりにきてくれたらときめくし、パジャマ着てくれた日にはご褒美が過ぎて眠れないし、エレベーターまで追いかけてご飯誘ってくれたら昇天もしかけるわ、とここに来て1〜6話の見方がガラッと変わってしまったことに愕然としました
安達が、私が、んな大袈裟な、と思っていた全ては、黒沢にとっては奇跡だったのだとわかって、心の底から黒沢ごめん、と思いました。7年間で押し殺してきた想いが、マフラーの夜をきっかけに安達との距離が変わり少しずつ少しずつ、溢れるほど湧き上がって来たのだとわかると、あの震える声での告白が7年分の何もかもを終わらせるためという説得力がすごくて打ちのめされました。

ピースを入れ替えるとガラッと意味が変わる、みたいな仕掛けがこの世の中でも最高レベルに好きなんですが、それをドラマで体験するとは思いませんでした。

来週は黒沢が安達を好きになるきっかけと、告白をきっかけに、7年間の想いを遂に消してしまおうとする黒沢に安達がどんな答えを出すのかが描かれる模様です。
予告のラストシーンで安達が走っていく先が、どうか黒沢の許でありますよう。

結局3秒に1回一時停止してはココが!と語るnoteになってしまいました……7話予告が2日間で34万再生されてるの凄すぎるんですが、私もそれに貢献している1人です。来週までに何回見るかな……