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『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』レビュー

表紙

『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』

キース・トーマス(著)/佐田 千織(翻訳)

2023年10月17日。ダリア・ミッチェル博士は、カルフォルニア州のオーエンス・ヴァレー電波天文台で宇宙暗黒物質ダークマターに関する調査を行っていた際、謎の電磁波スパイクを観測する。
後に《パルスコード》と呼ばれる、明らかに自然現象ではないその信号は、高度な知性を持つ銀河系外の生命体が送信したものだった。

驚くべくことにその《パルスコード》は、地球人のDNAに作用、改変し、その結果、世界から数十億人が消失してしまう。

この《パルスコード》の発見から5年。激変した世界がようやく落ち着きを取り戻し始めた今、放棄されていたSNSサーバーのハードディスクから《パルスコード》発見者のダリア・ミッチェル博士の貴重な日記データが「発掘」された。
ジャーナリストのキース・トーマスはその歴史的な発見をもとに、《パルスコード》とはいったいなんだったのか、消えた人々はどこへ行ってしまったのか、いまだ残る多くの謎を明らかにすべく、アメリカ前大統領をはじめとする関係者へのインタビューや、現象に立ち向かった対策チームの機密記録をまとめ、本書の刊行に至る。

◇◇◇

っていう感じの、既に起きてしまった破壊的なファーストコンタクトを、後の時代から振り返って、あの時何が起きていたのか? とノンフィクション形式で描かれたドキュメンタリー風SFです。

このノンフィクション(のふり)がめちゃくちゃに上手い。どれもこれも現実のドキュメンタリーなら「ありそう」な視点や専門家のインタビューが巧妙に作り込まれています。こういうスタイルの本のことをモキュメンタリー(Modとドキュメンタリーの複合語)と言うそうですね。

モキュメンタリー物の(といっていいのかどうかわかりませんが、このタイプの)傑作『鼻行類』という、絶滅してしまった生物の生態を記した学術書(?)をついつい思い出してしまいます。『鼻行類』はふしぎな生物の生態でしたが、今回は不思議で未知で、人類をはるかに超えた知性からのメッセージ《パルスコード》に触れた人類の記録。決定的に作用された人類は先ほど書いたように「消失して」しまいます。(これを「上昇」というのもミソ)
ので、地球に「とりのこされた」人類からみた、『ダリア・ミッチェル博士の発見と(その後の)異変』について、あの歴史的な事実の裏側で何がおこっていたのか。を、詳細なインタビュー記録をもとに振り返る傑作(ここではあえて「モ」ではなく)ドキュメントでした。

『鼻行類』で面白がれる人ならば、絶対コーフンできる(?)そんな一冊です。モキュメンタリー、大好物です。もきゅもきゅ(*´ω`*)


#モキュメンタリー #ドキュメンタリー #キース・トーマス #佐田千織 #ヘンなSF #奇書 #らせんの本棚


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