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詩で御座います!

桜の季節になると、私はいつも思い出す
まだ私が幼かった頃の記憶を
その日はちょうど満開で、私と母さんが手を繋いで歩いていた時だった
風が吹いて、花びらが舞って、まるで雪のように綺麗に見えたんだっけ……
ふわりと舞うその花びらは、
とても幻想的で……幼い頃の私にはまるで魔法か何かのように思えた
だからだろうね
幼い私はこう思ったんだよ
――この魔法を、お母さんにも見せてあげたい!
そう思って、母さんの手を離して走り出したんだ
でも…… そんな私の願いとは裏腹に、風が強く吹き始めた
舞い上がる花びらの向こう側に見えるのは、
驚いた表情の母さんの姿だけ
その時になって初めて気が付いたんだ
私が見ていたものは、母さんの魔法なんかじゃなくて……ただの幻覚なんだってことにさ
それからというもの、私は何度桜を見てもあの日の事を思い出さずにはいられない
だって、あれこそが私の本当の魔法の力だったから
もしあそこで母さんの手を握っていたなら、
きっとこんな思いを抱く事はなかったはずだ
そして…… もしも母さんと一緒に歩いていれば、
あんな結末を迎えることなんてなかったはずなんだから
……そう考えると、やっぱり後悔しちゃうなぁ
あの時の選択を
――もしももう一度やり直せるとしたら、今度はどんな道を選ぶ?
誰かにそう聞かれたとして、
今の私なら迷わず答える事が出来る
たとえそれがどれだけ無謀で馬鹿げた選択だとしても、
必ず同じ答えを口にするだろう
だから今だけは、その言葉を伝えようと思う
例え届く事はなくてもいい
ただ……せめて、この言葉だけでも届けて欲しい
私の気持ちを。……どうか、幸せになってください
私にとってあなたは、誰よりも大切な人でした
だから、あなたが笑ってくれるだけで幸せなんです
……ありがとうございました
お元気で

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