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詩ですっ!?

春の陽射しが眩しい
新緑を透かした日差しは、葉裏の銀光を散らすようにきらきらと輝いて、まるで光の粒子が辺り一面に降り注いでいるようだ
その光景に目を細めながら、あたし――佐倉杏子は、今日もいつもと同じように通学路を歩いている
学校へ続く長い坂道に差し掛かると、両脇に並ぶ木々から一斉に桜の花びらが舞い降りてきた
視界いっぱいに広がる淡い色に目を奪われていると、ふいに強い風が吹きつけてくる
風に煽られた花びらは一層激しく舞って、空高くまで巻き上げられていった
まるで無数の花吹雪みたいだ
思わず足を止めて見上げてしまうほどに美しい光景だったけど……でも、それも一瞬のこと
すぐにまた穏やかな春らしい気候に戻っていった
この季節特有のどこか浮かれた気分のまま、あたしは再び歩き出す
すると今度は、ひらりと目の前に落ちてきたものがあった
一枚の葉書サイズの紙切れだ
拾い上げてみて、それが何かわかった瞬間、あたしは思わず笑みを浮かべていた
それは、桜の木の下で撮った記念写真だった
写っているのは、あたしともう一人――さやかちゃんだ。満開の桜の下に立つ二人は、とても幸せそうで、楽しそうだ
そんな二人の笑顔につられて、自然と頬が緩んでくる。……だけど、何だろう? 胸の奥の方がざわつくような感じ
こんな感覚は初めてだった
なんだろこれ
なんでこんな気持ちになるんだろう
わからないまま写真を眺め続けているうちに、頭の中にぽっかりと空白が生まれる
そして気がついた時には、あたしはその写真を破り捨ててしまっていた
――ああ、やっちゃったなぁ
我に返ると、もう手遅れだった
破り取った写真には、まだうっすらと桃色のかけらが残っている。
それを指先でつまむと、あたしはそのまま口に放り込んだ…………甘い
口の中で溶けた欠片は、舌の上でほんの数秒で消えてしまった。
残ったのはただ甘さだけ
なのに、どうしてだろう
胸に渦巻いていたわだかまりが少しだけ解けていく気がする
それどころか、心なしかすっきりとした気分になっている自分がいた
まあ、いっか
理由なんてわかんないけど、とにかくスッキリしたならそれでいい
きっとそのうちわかる時が来るよ
今はとりあえず前を向いていこう。そうすれば、いつかは辿りつけるはずだから

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