第一回 マイ希死念慮品評会

「死にたい」と一口に言ってもたった4文字で表現しきれるほどシンプルな感情ではない。この4文字のみで表現できる場合もあるが、それはかなり追いつめられた状態である。普段はそこまで切迫しておらず、死にたいは「苦しい」とか「思い出したくない」とか「何もしたくない」とか「悲しい」とか、その他もっと複雑な感情がこれまた厄介なほど複雑に絡み合った状態で思考に立ち現れてくる。

というわけで第一回 マイ希死念慮品評会です。第二回がなければいいね!


エントリーNo.1 漠然とした死にたさ

【説明と評価】
一番一緒にいる時間が長いやつ。というか常に脳のリソースを1割くらいこいつに割いている。「お、今日は死にたいと思ってない!」と気づいたときに、気づいてしまったがゆえに調子に乗ってこちらへ迫ってくる、微妙に厄介なやつでもある。理由は特にない。成長すると危険度が増す。付随する感情は特にない。他愛ないかわいい感情である。
記録】
なし。記録するほどでもない。
対処】
いつも一緒にいるのが普通なので、特に対処は必要ない。

エントリーNo.2 理由なき切迫した死にたさ

【説明と評価】
体調にもよるが毎週または隔週の頻度でやってくる、緊急度の高い死にたさ。漠然とした死にたさがパワーアップした感じ。今すぐ死ぬにはどうするのが一番いいかを延々と考え続ける。死にたいというより「よっしゃ死のう!」という謎のギアが入ってしまっている状態。一人で対処するのは危険。付随する感情はしいて言うなら「今なら死ねるぜ!」という興奮からの解放感、喜び。
病院か訪問看護に連絡すべきである。
【記録】
今すぐ死ななくちゃいけない気がするというか今すぐ死ぬのが正解でそれ以外のことは全部全部間違っているように思われる高いビルが近所に無いから今すぐ死ねないなんでなんでなんで今今今今今死にたいのに!苦しい!
(2024年4月のメモより)
【対処】
セロクエルを2錠ほど飲んで寝ろ、または医療機関に今すぐ繋がれ。

エントリーNo.3 甘えの極致「死んでいいって言ってほしい」

【説明】
エントリー名の通り他人から自殺していいとの許可を与えられたいという形で沸き上がってくる死にたさである。生きていることをもう諦めていいよというお墨付きがほしい。他人への甘えである。自分の生き死にぐらい自分で決めろ他人に迷惑をかけるな。付随する感情は悲しさが近いかもしれない。
【記録】
まだ生きてなくちゃダメ?なんで?もう死なせてほしい、ごめんなさい、許してください死んでもいいって言ってほしいもう無理ですごめんなさいもう無理ですごけんなさい許してください。
いったい誰が、許してくれるの?
(2024年5月のメモより)
【対処】
頓服を飲んだうえで好きなだけ弱音をメモに書き、酒飲んで寝ろ。

エントリーNo.4 覚悟の表明「私を知っている全員が死んでから誰も悲しませず自殺したい」

【説明と評価】
やりたいことリストの先頭に並んでいる。少しずつ人間関係を閉じて、半年くらい寒い地域で自活したあと、体力の限界を迎えてひっそりと寒い中死にたい。付随する感情は楽観と長くなるであろう人生への前向きさ。エントリーしているほかの死にたさすべてを「でもいつかこうなったら自殺していいから、それまでは生き残ろう」とかき消し、人生を続けることへの気力をもたらしてくれる珍しい死にたさ。これのおかげで仕方なく生き延びている節がある。
【記録】
でも友達が「私は地球が終わるまで生きるが?」と言っているので私はその子よりも長生きせねばならない。
(2024年6月末のメモより)
【対処】
不要


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