【読書】ヨーロッパの死者の書

概要

チベットやインドにある"死者の書"はキリスト教・カトリック文化圏のヨーロッパには存在しない。では死にゆく者が安らかに終末を迎えられるような、死出の旅の内容を示したガイドラインのようなものはあるのか。ヨーロッパ人はどのように死と向き合ってきたのか。

「へー」と思ったポイント

・カトリックには転生(生まれ変わり)という概念はない。死んだら魂が天に昇り最後の審判を待つ。
・ヨーロッパ文化のルーツであるエジプト/ギリシャ/ケルト文化では転生が信じられていた。
・キリスト教以前の死生観はキリスト教普及以後も民衆の死生観に強い影響を与えた。
・キリスト教でも転生の存在を支持する人々はいたが異端として退けられた。
・中世には天国と地獄に加え、死後に改悛を行う"煉獄"のイメージが出現し人々に不安を与えた。
・カトリックでは偶像崇拝や異教信仰が禁止され、代わりに聖者信仰が盛んになった。
・人々は聖者を通してあの世との交信を行った。
・煉獄で苦しむ魂を救うため(自分も救ってもさうため)修道会への支援が行われるようになった。
・各地の修道院は聖職者/修道女の伝記を書いて共有し、臨終のマニュアルとしていった。
・臨終の苦しみは他者の幸福のための犠牲・イエスの生涯の追体験として認識され、死にゆく者の苦痛と恐怖を和らげた。

まとめ

(本文より抜粋)
今のヨーロッパのカトリックの教育を受けた「普通の人々」にとっての死のイメージの公約数はこういうことになる。死ねば魂が離れるが、この魂は記憶と人格をもったままである。煉獄で浄化される必要のある魂もあるけれど、この世の時空を超越しているので、残された人が祈る時には、いつでもそばに寄り添ってくる。まれには交信をすることもできるし、祈りに応えて祈りを神に仲介してくれることもある(この能力の傑出した死者が聖者と宣言される。聖者たちはいわばボランティアのネットワークをつくってユニヴァーサルに活躍しているわけだが、たとえごく普通の死者の場合でも、家族や愛する者が祈りを捧げる時にはそのそばに来てかなり力になってくれるとされる)。

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