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スロージャズ、スローライフ

 スローライフという言葉があります。1986年にマクドナルドがイタリアに進出し、ローマのスペイン広場に1号店を開店した際に、アメリカ資本のファストフード店に反対して伝統的な食文化を評価するスローフード運動が語源とされています。スローフードを生活全般に広げ、スローライフという言葉が生まれたそうです。スローフードについては、日本では1999年春に日本スローフード協会が設立。同年にカゴメのCMで「スローフードに帰ろう」とのコピーが使われ、2000年からノンフィクション作家の島村奈津さんが著書を通して広められたようです。その歴史は思ったより新しく、日本では「ゆっくり、丁寧に」などの意味で使われているのではないでしょうか。ファストに対するスローという概念だと思います。

 「よなごまちジャズプロジェクト」は、ずばり「スロージャズ」を提唱します。その延長で「スローライフ」を楽しもうよ、という思想です。いや、思想というほど大げさではないけれど。

 ジャズの歴史をひもとくと、その時代の社会情勢を反映してスタイルを変化させてきました。1920年代、南北戦争の払い下げの楽器が市中に出回るようになり、楽器を手にした黒人が即興演奏をするようになりました。ジャズのルーツとなったデキシージャズの誕生です。その後、30年代には白人のダンス音楽としてビッグバンドが発展。スウィングジャズと言われるスタイルが隆盛となりました。40年代になると、ダンス音楽のアンチテーゼとして、細かな音符のメロディーを超高速で演奏するビ・バップが台頭。チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーなどモダンジャズの礎を築いた巨匠が活躍した時代です。ダンス音楽ではないよ、という黒人の主張が色濃く反映され、複雑なコード進行のブルースなど芸術性が一気に高まっていったのもこの頃からです。
 
 このように、ジャズは時代とともに変遷を重ね、音楽に時代の空気を反映させていきました。今ではさまざまなジャズがあります。目指すところは人それぞれ。私たち「まちジャズ」はジャズを通して実現できる世界のことを常に考えています。「スローライフ」とは絶対的な時間の流れがゆっくりというわけではなくて、「今この時間を味わう」ということなのだと思います。同じ1時間を過ごすのでも、スローに過ごすことによって世界は違って見えるのではないか。より多くのことを感じ取り、記憶の中に永遠に刻み込めるのではないでしょうか。限りある時間だからこそ、スローに過ごす。そんな気持ちで演奏する「スロージャズ」をまちジャズでは目指しています。

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