ブックオフにて値札のない本と赤字の旅

人が高校時代から約7年間集めてきた少女漫画達をブックオフの買い取りカウンターに持って行くのは、心が枯れているからだろうか。

この間、ブックオフに少女漫画約30冊持って行きそのうち24冊買い取ってもらった。
「こちら24点で120円になります。」店員の業務的な声に私は小さい声で「ありがとうございました。」と業務的に返した。長年連れ添った夫婦が離婚届を出しに行くときのように、何年一緒にいようが離れていくともう赤の他人だ。今の私にときめきはいらないのだ。こうして私はときめきを売って得た120円を財布にしまい込んで、新たな出会いを探すべく110円の小説コーナーをうろつきはじめた。

そして気になっていた作家の本を2冊手に取りレジへ向かった。するとなんと値札が張られていないのだ。店員も困惑顔で張られているはずの一点を見つめたまま動かない。どうやら、本に値札が貼られていないときのマニュアルはこの店にはないようで、さっき私のいたいけな少女漫画達を扱っていた冷静な仮面は外れ、困惑顔で「えー、」「えーっと」と繰り返すだけのロボットとなってしまった店員に、私はちょっとおもしろい現象がおきたなと思いながら、このままではかわいそうなので「110円の棚にあったんですけど」と言って収まらせた。ほっとした店員は本当にそこにあったのかも確認せずに、「110円が2点で220円になります。」と回復した声で言い放った。私は素直にさっきもらった120円と元々あった自前の100円を渡して新しい本を買いとった。

店を出た後、本当にこれでいいのだろうか、私の7年間にわたるときめき達は少しいい加減な店舗に売られたに違いない。今頃彼女たちは悲しみに明け暮れているだろう。しかし私はもう他人、彼女たちを救えるのは新しく手に取ってくれる人だけだ。
大量の漫画を売ったところで安い値段で買い取られてしまっては、質素に本を選んでも儲けは生まれない。納得いかない思いを抱いたまま赤字の旅は幕を閉じた。

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