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ルールから逸脱してもOKな、組織文化を設計する

チームや組織の生産性を上げるために、マネジャーレベルの人はルールを設計します。しかし、そのルールも年月が経ちそのままにしておくと、「一体、何のためのルールなのか?」というものになってしまいます。

時には、そのルールが邪魔をします。特に不確実なことが起きた時に、ルールに縛られすぎて逆に生産性が下がってしまいます。

私もルール設計は日々悩みの種です。本当にこのルールは必要なの?定期で開催しているミーティングが本当に必要なのか?

その時に自分が参考にしている書籍やある遊びの記事がありますので、紹介します。

書籍:原っぱと遊園地: 建築にとってその場の質とは何かー青木 淳から学ぶ

青木淳さんは青森県立美術館やLOUIS VUITTONの店舗を設計した建築家です。
著書「原っぱと遊園地: 建築にとってその場の質とは何か」は2000年代に刊行された本です。当時、この概念が衝撃的で今でも「場」という言葉が出てきたら意識するくらいになりました。

書籍の内容は著者の建築設計論ですが、難しい用語を使わず、専門家でなくてもわかりやすい表現で書かれていて、読了後に改めて、さまざまな場を体験するとこれまで無関心に終わっていた場所がとても魅力的に感じます。逆も然りです。

この本でいう”原っぱ”」と”遊園地”を例えに、私は日頃のルールづくりにおいては以下のように解釈しています

  • 原っぱ:誰かが介入し、そこで中身がつくられていくことで、ルールが形成される場

  • 遊園地:あらかじめ設計されたルールで、誰もが同じように行動できる場。

ルールを”原っぱ”と”遊園地”というメタファーで考えたときに、以前は”遊園地”のようなルールの方が誰もが同じことができ、かつ再現することができました。
しかし、現代では”遊園地”のような全員が同じことをするだけでは生産性が上がらず、逆に"原っぱ"のようにルールを作っていくタイミングも多くなっているのではないでしょうか。

近年、メンバーの生産性を上げるために、「サードプレイス」や「ワーケーション制度」といったこれまでの場や規則から逸脱してもOKにするような制度も出てきていますが、結局使われず長い目で見ると何のためにあるルールなのかわからなくなります。

「この制度を使ってもいいよ」と言って、遊園地のようにガッチリ設計してしまうと、もともと“原っぱ”に見立てて仕事をしていた人たちが、興醒めしまうからです。
「これを使ってねという意図があるルール」は、かえって創造的な個人を漂白し、生産性を停滞させかねない側面があります。

つまり、あらかじめ設計されたルールだけでなく、「この取り組みやプロジェクトは組織のルールから外れていて、場合によっては、もしかしたら怒られるかもしれない」という“原っぱ”のような状態を許容する状態を作ることも大事なのかもしれないとこの書籍から学びました。

鬼ごっこのローカルルールから学ぶ

いかのサイトにもあるように実は鬼ごっこの種類は30種類以上あるらしい。その事実を知った時に私は驚愕したのを覚えています。

では、この30種類のルールはいきなり同日に30種類が一斉に出来上がったのかというと、そうではないはずです。

きっと、ベーシックな鬼ごっこのルールがあって、子供達が遊んでいる中で少し逸脱するような子が出てきて、その逸脱をした子と一緒に楽しむ子が出てきて、話し合った結果「氷おに」や「ケイドロ」みたいな遊びのルールが生まれたのではないでしょうか。

つまり人はルールから逸脱されると、最初は少し躊躇します。しかし、よくよく考えるとある要素同士を組み合わせることで、それもアリかも?と創造性が発揮されます。そして、より生産的になる取り組みに変えるルール作りもあるのだなと鬼ごっこの記事から学びました。

ルールそのものは悪ではない。

一方、ルールがなければいいかというと、制約がない完全な自由だけでは、仕事は生産的にならないのは当然です。なのでルール自体を完全悪にするのは飛躍しすぎかなと思います。

ルールは、あらかじめ決まっているからこそ、そこからはみ出したり、ルールをちょっと工夫して使おうとする人が出てきます。ルールを作ること自体が悪いわけじゃないはずです。むしろルールがあるからこそ、新しいアイデアや方法が生まれるチャンスがあるんだと思います。だから、ルールをちょっと破ってみたり、違う方法を試してみる人たちと、より生産的になる方法を対話しよういうのが現時点での私の考えです。

ルールから逸脱していることに注意して終わりにするのではなく

  • なぜ逸脱しようとしたのか?への共感

  • 逸脱して取り組んでいるものに対して感じている価値への共感

一方、逸脱した側も、注意してきた相手と丁寧に対話し、そこそこ上手く怒られながら引き続きできそうなところを続けて、その場をやり過ごす。そのような状態が起きる組織文化を作っていくことが大事なのではないかと思います。

そのためには、双方の意見をメタ化することが一つの方法です。
個人的には昭和女子大学のキャリアカレッジ学院長の熊平美香先生が提唱する認知の4点セットを対話時にテーブル上に並べることで、メタ化のきっかけになります。

一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事 熊平美香先生の認知の4点セット
https://souken.shingakunet.com/secondary/2021/05/interview-21.html

ルールの逸脱から生まれた、新しい取り組みの事例

私事ですが、ルールから逸脱して生まれた取り組みの1つに「推しの先生プロジェクト」があります。

メンバーがとにかく先生と関わることが大好きで、せっかくの新規機会のチャンスを逃しているなと思う時がありました。しかしそこを対話することで、面白いルールができました。

それが「推しの先生プロジェジェクト」です。

月によっては、新規の営業があっても推しの先生を応援したい、一緒に推しの先生と何かやりたいと思ったら、案件の引き継ぎ・パスをして、そちらを優先的に進めても良いよというルールです。

その取り組みが発展し、拡大することで最終的にこのような形でリリースすることができました。

ルールからの逸脱は、思いもよらないアイデアのタネが生まれる機会でもあるなと感じています。

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