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新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ 橘玲

資産運用の専門家は資産運用理論を無視している

現代ポートフォリオ理論の本質は、「株価は無意味に変動しており、未来を正確に予測するのは原理的に不可能である」というものです。
すべての予測は、「この範囲に何パーセントの確率で存在する」というように、確率論的なものにならざるを得ません。
現代ポートフォリオ理論の創始者として1990年にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツはひとつの株だけを持つよりも、複数の株を組合わせた方が、同じリスクでより高いリターンが期待できることを数学的に証明しました。
この理論は証券会社にとって、さまざまな金融商品を投資家に売りつける恰好の口実に使えるので、広く宣伝されています。
ところが、マーコウィッツがノーベル賞を受賞した理由は、別のところにあります。
彼は、同じ統計学の手法を使って、「もっとも効率的なポートフォリオとは市場全体に投資することである」という発見をしたのです。
要するに、TOPIXやS&P500のような市場全体の動きに連動するインデックスファンドに投資しなさい、ということです。
こうした株式市場のインデックス(株価指数)を、〝効率的ポートフォリオ〟といいます。

アクティブ運用とパッシブ運用、この両者のどちらが有利かは学問的にはほぼ決着がついています。
アクティブ運用の投資信託の平均的なパフォーマンスを調べると、パッシブ運用に比べて、手数料コストの分だけ負けているということが、各種の統計調査で明らかになっているからです。
星の数ほどある投資信託のなかから平均を上回るファンドを選ぶ慧眼がなければ、アクティブ運用のファンドへの投資は、ファンド会社に手数料を寄付しているのと同じことなのです。

適正株価は誰にもわからない

株式投資の世界においては、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析が不俱戴天の仇敵同士になっています。
ファンダメンタルズ分析によって配当額(1株利益)を正確に予測できれば、理論的に正しい株価が決定できます。
しかし、経済環境の変化や経営者の力量によって、企業の利益は大きく変化します。
こうした未来の姿を、人間の力で予測することがはたしてできるのでしょうか?

チャートで未来は予測できない

テクニカル分析は、企業の事業内容や財務状況、経営計画などとはまったく無関係に、ただチャートの動きのみによって将来の株価を予測する投資手法です。
1920年代から保存されているニューヨーク市場の株価データを使って、ありとあらゆるテクニカル指標がコンピュータで解析されてきました。
そして、ほぼすべてのケースにおいて、テクニカル分析に従って売買を繰り返すよりも、たんに株を買って保有するだけの長期投資の方が有利だということが証明されています。
テクニカル売買は、手数料分だけ確実に長期投資に負けてしまうのです。
残念なことに、コンピュータの解析結果は、株式市場になんらの法則性も存在しないことを証明しています。

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