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伊古奈比咩(いこなひめ)と(ヱヴァンゲリヲンと)神話と円形遺跡と…

前回の記事『海中に没したスマホ、翌日砂浜に打ち上げられる』の最後にご紹介させて頂いた、たいへん霊験あらたかな神社。
(先日、再び参拝して無事お礼参りを果たすことができました^^)

それは《伊豆最古の神社》こと、静岡県下田市にある【伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)神社】です。

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白浜海岸に位置するため、別名を【白濱(白浜)神社】とも。神社から少し離れた辺りでは海水浴で賑わっています。

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宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくるプリオシン海岸を思わせる白い砂浜。そして水平線の向こうには伊豆諸島を臨みます。

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神社裏の「大明神岩」には朱色の海上鳥居が佇み、空と海のブルーに映えてまるで心が洗われるような見事な光景☆
東伊豆をご旅行の際には是非、お立寄りになってみてはいかがでしょうか(^-^)。

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ところで、伊古奈比咩(いこなひめ)さまとは一体、どういった神様なのでしょう?初めて耳にするお名前の神様です。

出発前に少し調べてみたところ…時代はおろか出自経歴が殆ど不明(*_*)。多くの謎に包まれた《女性の神様》のようです。

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『続日本後紀』によると、伊古奈比咩(いこなひめ)三嶋神(みしまのかみ)の後后。
正后は阿波咩命(あわのめのみこと)です。

ご三神の相関図はこうなります(Wikipediaよりまとめ)。

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あれ?つまり、あのアニメのこれとこれとこれ…

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(庵野監督に1つ注文を付けるなら…リリスの下半身は蛇にして頂きたかった)

基い、聖書のお話が思い当たります(^_-)。

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世界各地の神話に類似のエピソードが見られるのは、それを伝えた人々が元は同じ場所から旅立ったからではないでしょうか?
聖書に登場するアダムとイブ(エヴァ)も、より良い土地を求めて旅立った人々の記録なのかも知れません。

また、日本の古い文献の中にも、類似のエピソードがいくつも重複している箇所が見られます。
編纂する側にしてみれば、最も人々の記憶に留めたいエピソードということなのかも知れません(あるいは同じ人物が名前を変えて度々登場している可能性も…)。

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さて、話を元に戻します。
上記の伊豆のご三神、それぞれの神社の場所を地図上で確認すると…

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「全くの一直線上」とはならないものの、「一直線に並ぶことを意識した配置」になってはいないでしょうか?つまりレイラインです。

これは大発見!!o(^o^)oと家族で大喜びしましたが…もしかしたら地元の方は昔からご存知なのかも?(その場合は、失礼致しました…m(_ _)m)

どうして昔の人が正確なレイラインを知ることが出来たのでしょうか?
…これは私達の予想を超える数学や天文学の知識を昔の人が持っていたから(正統派)、あるいは空から見ちゃったから(ムー派)、謎が尽きません(^^;)。

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続いて【伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)神社】の起源についてですが、まずはこちらを…。

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(境内の『白浜神社境内案内図』から抜粋)

神社の本殿は「火達山(ひたちやま/ひたつやま)」と呼ばれる岬の丘陵にあり、現在は《火達山遺跡》と呼ばれています。

つまり、遺跡に建てられた神社なのです(*_*)!この情報だけでもかなりの歴史を持つ神社であることが伺えますね。
(公式にも「創建不詳」とされています)

本殿の後ろには「古代祭祀場」と「記念碑」、さらには水を湛えた「御釜」(みかま)が描かれています。
(右端の岩場にあるのが先にご紹介した朱色の海上鳥居です)

え!?「古代祭祀場」!?そう、これこそが《伊豆最古の神社》と呼ばれる所以のようです。

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Wikipediaによると、火達山からは祭祀用と見られる奈良時代・平安時代の多数の土師器・須恵器が見つかっており…とあります。

ですが神社周辺の歴史から推測すると、この神社の起源はもっともっと古い時代に遡る可能性が高いのです。

【その謎を解く1つ目のカギは、伊豆諸島の噴火です】

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平成12年(2000年)の三宅島の噴火は記憶に新しいですね。こうした島々の噴火は島焼きと呼ばれ、太古の昔から現代まで何度も繰り返されているようです。

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この島焼きを〈神の御業〉と畏れ、神を鎮める祭祀が火達山で執り行われたのが、この古代祭祀場であり、現在の【伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)神社】の前身であったと考えられます。

記録によると、三嶋神伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)は元は三宅島に祀られており、後に現在の場所に遷座されたそうです。

【謎を解く2つ目のカギは、黒曜石です】

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(この記事を書く際にとてもタイムリーにTV放送された『もののけ姫』)

かつて、(レイライン南端の)神津島で採掘された黒曜石が、【伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)神社】から北へ約10㎞の河津町の海岸まで船で運ばれ、水揚げされていたことが分かっています(見高段間遺跡)。

史実から推測すると古代祭祀場ではその昔、伊豆の島々を巡る船のための灯台の役割も兼ねていたのではないでしょうか。
(火達山〈火が立つ山〉と推測できます) 

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火達山を海上鳥居側から撮影。木々が生い茂り中の様子は分かりません。これより先は立入&遊泳禁止区域です。

以上の手掛かりから、この火達山聖域として人々に崇められ始めたのは、伊豆諸島の噴火の歴史や採掘された黒曜石の年代測定から見ても、3.5〜4万年前には遡る可能性が高いのです((+_+))!!

なるほど、霊験あらたかな理由が分かります☆☆☆

もしかしたら今後の調査次第では、それらを裏付けるための新たな発見があるかも知れません。更には私達の縄文時代を始めとする歴史認識をも改められることになるかも知れません。
(ですが火達山は禁足地のため許可なく立入りはできません)

できませんが、最近、ドローン撮影される方が多いようです(画像を拝借させて頂きました)。

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何と(*_*)!!岬の上に岩の壁が円形状にそびえ立つ様子が伺えます。

写真で判断する限りでは、自然の岩肌がカーブを描いているように見えます。セドナのレッドロックにも外観に丸みを帯びたものがありますが、火達山のものは内側がくり抜かれた状態に見えます。…何故でしょう?

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はるか昔、海底にあったセドナ。火達山の円形遺跡も同様に海蝕と噴火により長い年月を掛けて現在の形に至ったものと考えられます(火達山〈火山〉だった!?)。

詳細は分かりませんが、何となくリビアのレプティス・マグナの遺跡や、イギリスのストーンヘンジを始めとする世界の環状列石を連想するのは私だけではないと思います。

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レプティス・マグナにある「市場」内の円形建築と、「セウェルス帝のフォーラム」に残るメドゥーサのレリーフ。
「マグナ(Magna)」は「偉大な」の意味。では「レプティス(Leptis)」は…?

元は自然の力によって"奇跡的に"形成された円形の岩壁。それは人々の自然崇拝を"象徴"するものとなり…やがてその地を離れて行った人々の記憶にもその風景は色濃く残り、新たに定住した地ではその"象徴"を今度は人為的に再現する試みをしたのではないでしょうか?…

あるいは、元々、"神のような力を備えた"巨大な円形状の物体との関わりが深く、類似した巨石をその"象徴"として崇めたのでしょうか?…

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今年(2021年)5月、奈良県・菅原(すがはら)遺跡にて円形建物跡の発見が報じられ、行基の供養堂の可能性が示唆されています。専門家によると「多宝塔の原形」ということですが、そもそも多宝塔は何をモデルにしているのでしょうか…?

世界の環状列石が作られた理由はすぐに答えが出ませんが、長い長い間、火達山の遺跡が聖域として信仰の"シンボル"になっていた理由は一目瞭然と言えるでしょう。
黒曜石を積んだ舟で神津島と河津町の浜を行き来した古代の人も、この岩壁を見上げては神々しさを感じ、勇気づけられていたことと思います。

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また、火達山を真上から見た写真によると、円形遺跡の中央に半月形の大きな陥没があるようです。この内部が「御釜」で満潮時には海水が満ちることが想像されます。

Wikipediaによれば、崖下の御釜の入口から本殿の真下までは洞窟(海蝕洞)でつながっており、本殿の真下と思しき位置には漆塗りの祠があったそうですが、現在は地震による崩壊で入れなくなっているとされています。

『境内案内図』に描かれた御釜よりもかなり大きい印象ですが、この御釜の天井部分が地震で崩落し現在の状態になったものと推測されます。

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こちらの写真は西伊豆・堂ヶ島海岸の「天窓洞(てんそうどう)」。満潮時の御釜もこの様に見えるかも。

禁足地である火達山をドローン撮影する人は多いのですが、この遺跡の岩場を近くから撮られている画像にはお目に掛かれません。

やはり「聖域を侵すと神様の罰が当たるから…」とした多くの日本人の心に根強い精神セコムにより、昔からこの地は守られ聖域としての役割を果たしているのでしょう。

今なお多くの謎に包まれながらも静かに参拝者たちを見守り続ける…そうした古い古い歴史を持つのが、この【伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)神社】のようです。

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最後に…伊古奈比咩命(いこなひめのみこと)の名前の由来についてです。
これは私の想像でしかありませんが…

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聖像・聖画像を意味するイコンを女性名詞にしたもの[icon+a]、ではないでしょうか?(理由は単純に「音から推測した」に過ぎません)

元々は"象徴"を表す言葉ですが、現在はコンピューター用語で私達がよく使う「アイコン」の語源になっていますね。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

以上、私にしては珍しく長い文章を書かせて頂きました。ここまでお読み頂きありがとうございます。お楽しみ頂けましたら幸いです。

私のこの夏の自由研究とさせて頂きます(#^^#)。

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(P.S. 伊豆のアワビ、美味しかった…)

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