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衣更え②

膨らんだ椿の蕾も目にするようになりました。お稽古も中置となり、冬に近づいていることを感じます。

制服のある学生さんは冬に向けての衣更えの時期ですね。衣更え①で江戸時代、旧暦9月1日から8日は袷だったと以前書きました。今年の旧暦9月1日は10月15日に当たりますので、ここから22日までが袷の時期ということになります。そして旧暦9月9日から3月末日までが綿入れ・・・とも書いたのですが、現代の暦で考えても、10月16日から冬の間はずっと綿入れって・・・10月くらいはまだ暑いんじゃないのって思いませんか?

実は江戸時代というのは小氷期と呼ばれる時代に当たり(1400年から1850年頃の範囲で諸説あり)、現代よりは大分気温が低かったと言われています。まだ完全に原因は判っておらず、太陽の黒点活動が少なかった影響か、などとも言われますが、時期により現代よりおおよそ8度ほど気温が低かった時期もあったとか(これは初めてこの話を知ったTV番組で言っていたと思うのですが、今回いくつか読んだ本では数値を見つけきれませんでした。もし誤っていることがはっきり判ったら、どこかで訂正します)。

今の時期に気温があと8度低かったら・・・と考えると綿入れも不思議ではなくなってきますよね。部屋全体を温めるオンドルのような暖房形式が普及しなかった日本では、個々人が着込むことも大事な寒さ対策だったのでしょう。

古の人に思いを馳せる時、私のnoteで何度も繰り返し「旧暦」の言葉を使ってきましたが、実はそれだけでなく気温の前提も現代とは違っていることを頭の片隅にでも置いておいていただけたら。中置(それも旧暦10月)で風炉を少し客の近くに据えること、寒い時期の手焙りなどの有難みが前にも増して感じられることと思います。現代では冬の気温も江戸時代よりは上がっており、更にたいていの環境では暖房を使えることを考えると、昔の人の感じ方に近づくことは至難の業だな、とふと思ったりもします。

今日の菓銘は「すすき野」。
お茶を始めると葉だけのすすきを見慣れていくのですが、今の時期穂が出ているのを見ると、あ、そういえば幼い頃は穂のあるすすきしか見えていなかったな、と思い出します。

家庭画報11月号、鏡リュウジさんの「和菓子とわたし」。お母様がお茶を嗜まれていたそうですが、お薄が気どらずに近くにある生活、素敵だなぁと思いました。

秋の行楽シーズンに入りますが、出先でお茶席などあれば、一服お抹茶を召し上がってみてはいかがでしょうか。

参考文献:「一般気象学」(小倉義光)
     「大江戸年中行事の作法」(小和田哲男)



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