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つかれた脳とさわがしい心

考えがまとまらない。一昨年あたりからだ。
思考が一点に向かって集中せず、ハラハラと拡散していく。

たとえば、何かを調べようとしてパソコンに向う、するとメールが来ている。あ、メールの返事を書かなきゃと思う。

「日程を出してください」とある。スケジュール帳を確認する。「パスポート番号を教えてください」おっと、パスポートどこだっけ。

「下記のサイトで支払いの手続きを行ってください」えー、めんどいな。
「パスワードをご記入ください」パ、パスワード、なんだっけ?「パスワードを再発行するには……」ひー!
……ってなことをしているうちに、最初に何を調べようと思ったのか忘れてしまう……という始末。

インターネットはとても便利なんだけど、パソコンの前に座ってなんらかの手続きをしようと思うと、パスワード地獄に陥る。

パスワードの管理が下手な私はパスワードを再発行するハメになり、「強力なパスワード」をパソコン君が指示するままに記憶させてもクラウドがうまくリンクしていなかったりして、他のパソコンでは入力できず、またパスワード設定をやり直すという、おバカなことを繰り返している。

作業は迷宮に入り、なんだかすべてが中心を失って拡散していくような、とりとめない気分になり、気がつくと1時間経過。モチベーションが落ちて、ぐったりしているという始末。

ネット社会とのつき合いはすでに三十年になる。インターネットがなかった時代を知っている世代の私には、この短い時間で起こった変化がまさに「夢のような未来」だ。

が、ここに来て私はだんだんネットについていけなくなってきた。脳がつかれる。完全な情報過多だ。ネットで何かをしようと思うと、次ぎから次ぎへと広告が出てくる。

防災対策からほうれい線対策まで「こうしたらいいですよ!」という、さまざまな人間の意図が自分に向かって飛んで来るのを避けながら、ネットサーフィンをしていると、見えない敵と攻防戦をしている気分。

ずきゅーん、ずきゅーん、飛んでくる銃弾をかわしながら、私は歩伏前進で目的にたどり着こうとしている。あっちもこっちもトラップだらけ。まちがってクリックしたらどこに飛ばされるかわからない。

もし、脳が、株式会社田口ランディの社員だとしたら……こう言うだろう。

「この会社はブラック企業だ。休憩時間も与えないし、指示はころころ変わる。雑用が多すぎる。もう残業はイヤだ。一日8時間労働を守ってくれ。そして、どうでもいい情報処理をオレにさせるな!」

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