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ランドネ編集部員の「日々アウトドア」

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アウトドアを愛するランドネ編集部員が日々感じていること、考えていることをお届けします。
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記事一覧

山と仕事とわたし

アウトドア雑誌の編集長になるなんて、学生時代には思いもよらなかった。山登りにまつわることで起業するなんて、1年前の自分が聞いても驚く。 仕事の話をすると、「山が好きなんですね」と言ってもらうことがあるけれど、自分では正直よくわからない。ただ、毎日、山のこと、山を好きな人たちのことが気になっている。大雨や地震のニュースを見ると、山にいるであろう人の顔が思い浮かぶし、お買い物に行って服や雑貨を見かけては、山登りでも使えるかどうかをチェックしている。仕事だからかもしれないし、仕事

山のことばかり考えていたら、こんなところまで歩いてきていた。

「自己紹介」。ランドネたのしみ隊のメンバーと、このテーマを決めてnoteに書くことにした。小さいころから自己紹介は苦手で、人前に立つだけで顔を真っ赤にするような子だった。幼稚園のとき、お父さんへの感謝のコメントをビデオカメラで一人ずつ撮影し、それが街中の大きな画面から流れるという父の日のイベントがあり、放映当日、恥ずかしさに耐えられず、自分の番が終わるまでビルの陰に隠れていたのを思い出す。目線も合わせずモジモジしながら「おとうさん、いつもどっかつれていってくれて、ありがとう」

背負うべきもの

山登りの準備をするとき、わたしはバックパックに詰めて持っていく荷物を3つに分けて考える。「生きるために、最低限必要なもの」と「いざというときに、役に立つもの」、「自分をごきげんにするためのもの」だ。 一つ目の「生きるために、最低限必要なもの」は、食べものや飲みもののこと。生きるため、というとちょっと大げさな印象かもしれないけれど、山の上に売店や自動販売機があることは稀だから、自分が消費するエネルギーや水分量を見越した、食べものや飲みものは背負っていく。 二つ目の「いざと

北秋田の秘湯、杣温泉

たおやかな森吉山の姿を横目に進み、雪深くなった山奥に佇む、杣(そま)温泉旅館。ここは、江戸時代に発見されたという歴史ある温泉が楽しめる一軒宿で、7代目当主の杣正則さんが守り続けています。自慢の温泉は100%天然の源泉かけ流しの湯で、男女別の内湯のほか、豊かな自然のなかで湯に浸かれる露天風呂(混浴)で楽しむことができる場所です。 ▲杣温泉に来たら、ぜひとも入りたい露天風呂。タオル巻きもOK。 ▲内湯(女湯)。ナトリウム、カルシウム、塩化物硫酸泉で無色透明のお湯は、源泉が53

阿仁合駅前の「阿仁合の本やさん」

北秋田市の阿仁合エリアを散策しながら見つけた、気になるお店。「阿仁合の本やさん」。ここを営むのは、7年前に仙台から阿仁合に移住をした、映像作家・フォトグラファーの長谷川拓郎さん。ガソリンスタンドだった空き家を改装し、古本屋としてオープン。本棚には、多くの方から寄贈された古本(販売)と、阿仁の郷土に触れられる本や阿仁マタギの本など(貸し出し)、一般書から貴重な資料までが並んでいます。 お店に長谷川さんが不在のこともあるが、その場合、本の代金は「本や箱」に入れたらOK。貸し出し

阿仁マタギに触れる旅

ランドネのプチ移住企画で12月に訪れた北秋田市の阿仁エリアは「マタギの里」としても知られている場所です。山深いこの地域で暮らす人々は狩猟を行い、熊の胆や骨、血までを薬に加工するなどし、生計をたてていたという。阿仁マタギがマタギの本家であるが、旅マタギにより全国に広がったと、9代目・鈴木英雄さんが教えてくれました。 年季の入った山刀「マタギナガサ」を腰に携えた鈴木さんの案内で、マタギならではの自然の知恵を学ぶことができる、マタギ学校の「かんじきライト」ツアーに参加。林業にも欠

リスクと向き合うことと、美しさに近づくこと|2019年の振り返り

御嶽山と草津白根山。今年夏に、4日間でふたつの活火山を1泊2日×2連続で登ったとき、いつもに増して心が山に強く惹かれていることを感じていました。 御嶽山へ向かったのは、二ノ池上分岐から山頂までの規制が解除された直後。ヘルメットを被って黒沢口登山道を歩き、たどり着いた山頂付近には4年前の噴火の爪痕がしっかり残っていました。 山頂(剣ヶ峰)直下の地獄谷と呼ばれる大きな噴火口は、10万年ほど前から始まった火山活動によってできたもの。4年前の噴火は、西〜南西側の斜面に新たにできた

大分・耶馬渓で出会ったお店

発売中の「ランドネNo.109 1月号」の取材も兼ねて、約1週間滞在した大分県中津市の耶馬渓(やばけい)エリア。はじめて訪れた耶馬渓でしたが、奇岩がそびえる核心部に圧倒されたのはもちろん、昔ながらの里山風景と人の温かさに心癒されるプチ移住期間となりました。 今回は、滞在中に訪れた3つのお店を紹介します。オーナーさんは、移住してきた方やUターンをした方など。耶馬渓を訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてください^^ ①道カフェ 余菓の日 ほっとできる空間が広がる「道カフェ 余菓

村なかのキャンプ場

中川村の中心部から車で約30分、木漏れ日が注ぐ豊かな森の広がる谷間を進むとたどり着く、四徳温泉キャンプ場。すぐそばには四徳川が流れ、夏場には子どもたちが水辺で遊ぶ姿も見られます。“四徳温泉”という名の通り、ここには約450年前に開湯され、湧き出る温泉は地元の人にも愛され、湯治の里としても親しまれているそう。 「ここで体を動かしたり、ワクワクするなど心を動かしたり、リラックスしたり。“森の休日”を過ごすことで、人間が本来もつ“生きる力”を湧き立たせてもらいたいですね」 と話し

旅の素敵なお土産を、おすそわけ

訪れた土地では、その旅の空気を一瞬で振り返れる、お土産を買いたい。そんな"自分のため"のもののほかに、旅の思い出を語りたい相手にも、もうひとつ。ここ中川村で見つけた、自分に買いたい、大切な人に買いたいものが売っているお店を紹介します! ① 自家栽培珈琲工房 カフェセラード スーパーや書店などが集まる、ショッピングセンター・チャオの中にあり、自家焙煎珈琲を販売する「カフェセラード」さん。広い店舗のスペースを生かして並べているのは、ご主人が好きだという古いコーヒーミルのコレク

いつでもどこでも、パン屋さん

もうこれはクセのようなもので、山旅に行くときは、ふもとの町や登山口の近くにパン屋がないか探してしまう。そしてなぜでしょう、山の近くには、おいしいパン屋さんが必ずあります。 中川村にも、ありました!地元の人から愛されて、遠方からもファンが訪ねてくる魅力的なパン屋さんが。 ① 山のパン屋さん中川村に到着したその日、「山のパン屋さん」という看板が目に飛び込んできて、これは行きたい!と思い、おじゃましました▲ アルプスの山並みを見渡せる場所に建つお店は、ここにオープンして11年

伊那谷の暮らしを眺める、陣馬形山

「陣馬形に上るなら午前中。午後になると、雲が出てくるからね。朝起きて天気がよかったら、行ってみるといいよ」 出会った地元の方に、「陣馬形山に上りたい」という話をしたときにいただいたアドバイス。ここ数日なかなか天気が優れず、まだ"中川村の絶景"にお目にかかれていなかったある日の朝、カーテンを開けると青空が見え、いまだ!と、すぐにランドネ号を走らせ、陣馬形山へ向かいました。 さすが、ここは伊那谷。少し走るだけ一気に標高が上がり、どんどん村の集落や天竜川は小さくなっていきます。

はじめましての中川村

都内から車を走らせること、3時間とちょっと。西に中央アルプス、東に南アルプス、真ん中には大きく蛇行しながら流れる天竜川。そんな伊那谷と呼ばれる谷間に栄える村が、ここ中川村(長野県)です。 この村で1週間、プチ移住をさせてもらいます。上の写真は、暮らしの拠点となる場所からの景色(中川村のお試し住宅!中川村では、移住を考えている人に家具家電付きの家を、お試し住宅として賃貸しています)。 カーテンを開けると、青々とした稲が風に揺れていて、本当にキレイです。 雲のないときは、中

ジムニーと歩んだ12年

私にとって車は、山歩きのときのバックパックや登山靴をおなじくらい、日々の暮らしのなかで欠かせないもの。初めて自分の車を買ったのは、20歳のときでした。 アルバイトで貯めた30万円をあたま金に、初めて組んだ3年ローン。買った車は、スズキのジムニー(マニュアル)。親や、まわりの友だちからは、「なんで?」と不思議がられていました。確かに、ハタチの若い娘が買うには、見た目も乗り心地も、少々ハード(むかしのモデルは、音もうるさくて、横揺れもすごかった!)。でも、このカクカクした四角い