ファンド分析 GDP型指数の可能性
1. はじめに
投資信託やETFのインデックスファンドでは時価総額加重平均や均等加重平均が主流です。(前者はS&P500、後者はS&P500配当貴族インデックスなど) 今回はGDP型を採用している「ニッセイ世界株式ファンド(GDP型バスケット)」について整理します。(以下、ニッセイオルカンと称する)
2. GDP型オルカンの内訳
昨今、資金を集めているインデックスファンドが採用している指数の多くが時価総額加重平均型であり、一部で均等加重平均型のファンドが存在するという状況です。VT・VTI・VOOなどは人気でこれらに連動する投信も同様です。
一方であまり注目されていないのがGDP比率に応じて投資するアプローチを採用しているファンドです。ニッセイオルカンは面白いファンドですが純資産総額は2023年4月14日時点で1,381百万円と少額です。
時価総額加重平均を採用している三菱UFJ国際投信の元祖オルカンの純資産総額は2023年4月14日時点で1,001,749百万円であり、ついに1兆円の大台を超えました。100倍近い差が生じていることが分かります。
単純にイーマキシスブランドが強い、というのも理由かもしれません。若干ながらイーマキシスの方がコストが安いことも理由かもしれません。ファンドの設定日が関連している可能性もあります。
要因は様々考えられますが今回は運用方針の違いを取り上げます。三菱オルカンは時価総額加重平均という一般的な手法を採用し、ニッセイのオルカンはGDPというやや特殊な手法を採用しています。
両者の大きな違いは「新興国」の比重です。時価総額型のオルカンでは約6割が米国で日本を含む先進国の割合は88%程度となります。一方でGDP型のオルカンは新興国の割合が43%程度まで高まっています。
一見すると同じ全世界株式ファンドに見えますが運用方針の違いによってポートフォリオが大きく異なることが分かります。
新興国の将来性を評価する方はGDP型を採用しているニッセイオルカンが良いかもしれません。逆にニュートラルなポジションを取りたい場合は時価総額型の三菱オルカンが良いです。
3. GDP型指数の可能性
GDP型のオルカンでは新興国の比重が高いことが分かりました。これはGDP世界第二位の中国の影響が大きく、今後はインドの成長により更に新興国の割合が増加する可能性もあります。
誤解されがちですが経済成長(GDPの伸び)と株式市場はあまり連動しません。もちろん中長期的には経済成長を続ける国の株式市場は伸びていく可能性が高いですが、GDPの伸びと株式市場の時価総額の伸びは比例しません。
これは中国市場を見ても分かりますが、新興国市場は様々な要因により経済成長と株式市場の相関が低いことを示しています。新興国は金融法制が不十分だったり、政権の意向によって急にルールが変更されたり様々なリスクが存在します。
一方で先進国市場はこれらのカントリーリスクが相対的に低く、投資家が安心して資金を投じることが出来る市場環境が整備されています。更にグローバル化が加速した現代では企業活動は地球規模であり、GAFAを筆頭とする米国の大手企業はグローバルで収益を上げており、新興国の成長も取り込むことが可能です。
グローバル企業は国籍が先進国でも成長著しい新興国に進出することで成長の果実を手に入れることが出来ます。これらの要因が作用して現在の時価総額加重平均型の先進国の比率が88%という結果に繋がります。
これは先進国株式にはGDPと比較してプレミアムが付いており、新興国株式はディスカウントされていると言い換えることもできます。現実は経済規模(GDP)=株式市場の時価総額ではありません。この差分が様々なカントリーリスクに起因します。
カントリーリスクの事例としてはアリババが上場直前に中国政府の意向によって差し止めを受け、直近では事業分割に追い込まれました。また中国市場では不動産バブルが崩壊しているのではないかと囁かれていますが、意図的に統計情報が加工されているリスクも排除できず、投資家はこれらの予見困難なリスクへの向き合い方が重要となります。
将来の株式市場の動向に確たる自信がない場合は時価総額加重平均型のファンドの保有が望ましく、今後は新興国の株式市場とGDP(経済規模)の相関が高まると予測する場合はGDP型のニッセイオルカンの保有が好ましいという結論となります。
ニッセイオルカンは新興国比率が高い割に信託報酬は年率0.1144%(税抜0.104%)と割安なので新興国への投資比率を高めつつ、全体コストを低く抑えたい場合にも有効です。王道は時価総額加重平均型のオルカンですが、GDP型にも魅力・可能性を感じましたので比較という形で取り上げました。
どちらのファンドも低コストで安定的に運用されているので最終的には投資スタンスの問題となります。ニッセイオルカンはインデックスファンド=時価総額加重平均という風潮に一石を投じる面白いファンドです。
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