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RE+Designing 社会保障制度の俯瞰

1. はじめに 

 本マガジンは日本の社会制度のRE+Designingについて考察するシリーズです。制度の各所に綻びが見える日本の社会制度を未来に向けてどのように改善すべきかについて私論を展開いたします。 

 世の中には様々な立場の方がおり、所属する組織や立場によって異なる利害を有している方が存在するため、誰かにとっての正解は別の誰かにとっての不正解になる場合が存在します。

 “万人にとってベストな政策は存在しない”という前提のもと少しでも課題の改善に繋げる考察を心掛けます。 

2. 日本の社会保障制度の現状

 本稿では日本の社会保障制度の現状をざっくりと把握することを目的に各省が公表している数値を確認します。最初に国の予算全体の内訳を把握します。グラフから国の支出で一番ウエイトが高いのが「社会保障費」であることが分かります。

財務省のWebサイトから抜粋:https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/index.html

 私は財務省の味方ではないのでこれを見ても「増税」という気持ちは1ミリも起きません。むしろ増税ではなくメリハリを付けて歳出を削るべきと思います。財政悪化の原因が社会保障費の増大にあることは周知の事実でメスを入れる必要性を強く感じています。
 
 地味に大きなウエイトを占めているのが「地方交付金」です。地方の無駄の削減・コンパクトシティ化の観点からも前時代的な交付金の見直しは不可欠と感じます。

 逆に「科学振興・防衛費」に関してはウエイトを増やしても良いと感じました。国際競争力の強化・有事における備えのどちらの観点でも重要な項目です。
 
 次に社会保障費の推移についてです。グラフは厚生労働省のデータです。

厚生労働省のWebサイトから抜粋:https://www.mhlw.go.jp/content/000973207.pdf

 1980年代以降、急速に拡大していることが分かります。1970年に3.5兆円だったものが2020年には131.1兆円となっています。約37倍に膨れ上がっており、日本の社会保障制度は持続可能な設計になっておりません。
 
 特に年金・医療の見直しは不可避であり、社会構造に劇的な変化が発生しない限り今後も際限なく社会保障費が膨らみ続ける可能性が存在します。
 
 次に社会保障費の財源の内訳です。保険料に加えて多くの公費が投入されております。本来であれば半分程度に抑える必要があります。企業負担分も結構な額であることが分かります。

厚生労働省のWebサイトから抜粋:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21509.html

 社会保障制度は本来、国と個人で完結すべきだと思いますが、現状は企業に過度な負担を求める設計となっています。ここ20年、日本企業の賃金が上がらないと言いますが、原因は社会保険料という名の実質的な税金の増加が原因です。
 
 社会保険料は取りやすい税金の一種であり、近年物凄い勢いで課税され可処分所得の低下が加速しています。企業がさぼっているわけではなく、国が制度を改悪し国民の手元に現金が残らないようにしているのです。
 
 昨今、岸田政権では増税が加速しておりますが歳入の内訳は以下の通りで「所得税・法人税・消費税」のウエイトが高い傾向になります。要するに抜本的な見直しには上記3税の改革が不可欠です。

財務省のWebサイトから抜粋:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/002.pdf

 法人税は中小法人に対する優遇も若干ありますが基本的には一律です。しかしながら所得税は累進課税によって5%~45%まで9倍の差が生じます。衝撃的なデータとして以下のデータが存在します。(あまり知られていないデータかもしれませんが超重要です!)

財務省のWebサイトから抜粋:https://www.mof.go.jp/tax_information/images/image16.pdf

 日本では所得税5%以下が納税者の60%、10%以下で80%を占めます。諸外国と比較しても分かるようにこれは異常です。欧州では10~20%がボリュームゾーンで約80%を占めており、米国では20%超が35%を占めています。
 
 日本はボリュームゾーンの所得税率が低いことが問題であり、ここが資料記載の欧米並みに改善されれば所得税は大きく増えます。政治家はこの事実を理解しながら多数の低所得税率層の票が欲しいためこの問題を放置しています。

 社会保障財源としての増税を正面から真剣に検討するならばこの歪んだ状況の是正が第一であり、所得30億円超の富裕層(たかだか200~300人)を対象とした増税はただのパフォーマンスに過ぎません。
 
 ここまでが社会保障に関する公開データをベースとしたアウトラインです。個別テーマの考察は別の投稿に譲ります。

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