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次世代金融の設計者

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金融ビジネスの将来像を様々な角度から整理・分析し、未来の金融サービスをデザインするシリーズです。
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#STO

STの投資価値の考察 - 技術革新と投資家価値の乖離

1. はじめに  私は過去にSTの自主規制に関する業務、そして証券会社でのST事業の立ち上げに従事した経験があります。新しい制度の創設に関われたことに幸運を感じる一方で、常に一つの素朴な疑問を抱えていました。それは、「STは本当に投資家が求めている金融商品なのだろうか」という問いです。   この疑問は、単なる好奇心からではなく、金融商品の本質的な価値とは何かという深い問題意識から生まれたものです。新しい技術や制度が登場すると、ともすれば私たち金融業界の人間は、その新奇性や

STO市場の現状整理と発展に向けた検討

1. はじめに  2020年からスタートしたSTO(Security Token Offering)も4年目を迎え(実質的な営業開始からは3年)色々と見えてきたことを整理したいと思う。  筆者はSTOの立上げに際し、業界団体の立上げ・証券会社でのST事業立上げのコアメンバーとして関わっており、制度設立の経緯や発展の事情も踏まえ、現在の当事者から少し外れた立場から客観的に評価したい。  2. STOの本質 ST(Security Token)はデジタルな形式で発行・管理さ

有価証券の歴史とSTO②

はじめに  前編では「トークン化された金融」として有価証券の変遷・STO誕生の契機・問題点について整理いたしました。後編ではビジネス観点からSTOを分析し、よくある誤解についての整理・STOビジネスのグランドデザイン・STOの意義・個人的に期待することを整理します。STOの大枠理解は前編を参照ください。 1. よくある誤解前編は概論でしたので今回はポイントを絞りつつ深堀していきたいと思います。STOのメリット・特徴として一般的なメディアでは以下のような説明が見られます。 

有価証券の歴史とSTO①

はじめに  前回記事では「DeFiの本質価値」として概要整理・伝統的金融との対比・規制の考え方・今後の展望・課題解決・市場価値について整理しました。前回の「分散化された金融」と関連し今回は「トークン化された金融」としてSTO(Security Token Offering)について有価証券の歴史と関連させ、その意義を整理いたします。前半は有価証券の変遷・STO誕生の契機・問題点について整理し、後半でビジネス論点を深堀をいたします。 1. 有価証券の歴史 最近投資を始めた方は