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これは怖い! おススめ短編小説・ホラー篇 第2回

リサ・タトル 「石の育つ場所」
 *アンソロジー『闇の展覧会 2』収録
 (1980年、カービー・マッコーリー編、広瀬順弘訳、ハヤカワ文庫)

ポールは幼少の頃、
海岸で恐ろしい光景を見てしまう。
土地の人間から「石の育つ場所」と呼ばれているこの草地では、
三つの石柱が毎年ある晩に浜まで水浴びに行くという噂があった。

ポールは石が動くのを確かに見た。
まるで扉が閉まる様になめらかに、石は一瞬くるりと回って元の位置に戻った。
それを見た物は、必ず死ぬと言われていた”

リサ・タトルは、本作執筆当時20代後半だったテキサス人で、
他にもオカルト研究や、全米女性連盟NOWのメンバーとして活躍しています。

邦訳された作品は非常に少なく、
ホラー短篇では、ミシェル・スラング編の『筋肉男のハロウィーン』(文春文庫)に収録された「バースデイ」の他、雑誌に数篇。

長編では、ジョージ・R・R・マーティンと共著のSFファンタジー『翼人の掟』(集英社)があるだけです。

スラングは彼女をこう紹介しています。
「身の毛もよだつ実に不気味な短編の書き手で、他にファンタジーやSFも大量に発表、
書評やインタビューも多数こなし、
時間を見つけてフェミニズム関係の権威ある百科事典を出版している」。

本作は、ホラー慣れした私には珍しく、
全身総毛立つほどぞっとした短篇の一つ。

数十年後、大人になったポールは、
新居の裏庭に白い影を発見しますが、
この辺りの展開は日本人の感性にも通じるものがあり、思わず背筋が凍ります。

本作が収録されている『闇の展覧会』は、
モダンホラー・アンソロジーの元祖に位置づけられる伝説的な短編集で、
ホラー短編の名手たちが腕を振るった大作です。
日本では上下2冊に分けて文庫化されていて、本作は下巻に収録。 

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

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