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32【あの山の向こうに】

6月3日

ついにやってきた
セカンドオピニオンの日

柏にある
国立がんセンター東病院に向かう

朝、一番でつかないといけないので
早朝に出発する

この頃、ずっと
夜眠れないから
朝からゴソゴソしている

ルウを6時に起こし
ラジオ体操をして
二人で近くの神社とお寺に
ウォーキング

ムウが
日々のルーティーンで
早朝にウォーキングをするなんて
あり得ないぐらいの変化

往復4、5キロの道のりを
意味もなく歩くなんて
なんて無駄なことを

と前なら思ってた

意外や意外
これがまた
朝日を浴びながら
ルウととりとめのない話をして
歩くことがとっても気持ちいい

この日に限っては
柏に向かうため
早く行って現地で
歩くことにする

同じ千葉県なのに
実は柏はすごく遠い
高速をつかっても
70−90分かかる

朝、7時には現地についた
夢にまでみた国立がんセンター東病院

ここで放射線で治ればいいなぁ
という淡い期待を胸に
駐車場に車をいれる

朝早いというのに
もうすでに人がいる

ここにくる人は
それぞれガブちゃんと向き合ってる
なんだかそれがちょっと嬉しく
そして同時にちょっと怖い

受付やロビーを偵察にいく
キラキラピカピカの病院というより
昔から丁寧に使われているんだろう建物

だけどなんとなく

あームウは
ここじゃないんだろうな

と肌が感じる

なんだかわからないけど
ここじゃないんだろうな と

そんな直感をよそに

ルウと二人で
近くの公園を散歩する

池があって日本庭園があって
都会のオアシス的な公園

池をみながら
ついにここまでやってきたことを
二人でポツポツと話す

時間の流れがゆっくりだ
まるで人生が止まったように

時間になって
セカンドオピニオンの受付に向かう

何度か名前を呼ばれながら
手続きを済ませ、放射線治療科へ

朝、一番の予約だけど
もうすでに椅子はほぼ埋まっていた

ここできくことは
ムウのガブちゃんに
放射線や陽子線が効くのかどうか

その一点

効くのならばそれでGO
効かないのならば次へGO

待ちに待って
名前を呼ばれる

A先生
とっても優しそうな先生だ

C大とは全く違う雰囲気で
それだけでなんだか救われた

ムウのデータを
一通り画面で見ると
きちんと顔をみて話してくれた

これを見る限りでいうと

腺癌 なので

放射線治療はできなくはないけど
効果のほどはあんまり期待ができないこと

そして食道と違って
胃の場合、何度も放射線をあてると
組織を壊してしまう可能性があること

年齢も若く体力もありそうだから
いまならゼロを目指せると思うので
今の段階であれば手術をオススメする

術式に関しては専門ではないけれど
しっかりいろんな選択肢を検討
してみるのがいいと思うと

丁寧に丁寧に話してくれた

そうですよね
わかりました
これで決心がつきました

本当にありがとうございました

とムウたちは病室をあとにした

もちろんガッカリはした

一縷の望みをかけていたから

同時にスッキリもした

ならばこんな遠回りしないで
初めから言われた通りに
してたらよかったじゃん

という声が聞こえないではないけれど
この納得感がやっぱり欲しかった

自分の命をどこに預けるかの
選択をするこのプロセスが

これでやっと
ヨシっと小さい覚悟ができ
明日に向かって顔を少しだけ
あげられた

二人で家路に向かいながら
なんとなくここに通う気はしないと
感じていたムウの直感を褒めた

思う通りにいかない人生だけど
感じたままに流れてはいく人生だと

さぁ次だ!次!
次行ってみよー!

舞台が変わる
ステージが変わる
8時だよ全員集合の転換のように

この日ムウは
ムウがこんなことになっても
なんにも変わらずただのムウとして
つきあってくれそうだとムウが思える
仲間に声を掛け

ガブちゃんと愉快な仲間たち
というFACEBOOKグループに誘った

もちろんここに誘った人以外にも
大切に思える仲間はいる

誰に声をかけ
誰に声をかけないのかは
とっても難しい

だけど少なくとも
いまの段階で誘われた人にとっても
負担にならないであろうと思える人に
声をかけさせてもらった

あーあ
逆の立場だったらどう思うのかな

でもほんとに
自分がなってみないと
わからないことがいっぱいある

いままでだって
大切な仲間が病に倒れたり
命を止める選択をしたりは
あったけれど

気持ちはまったくわかってなかった
想像で思いを馳せることはできても
実感を伴ってわかることはできなかった

だからなってよかったとは言えないし
できることなら
だれもなって欲しくはないけれど
味わいたくても味わえないこの味わいは
大切にしておきたいと思う

ガブちゃんと闘わない
闘いたくないよと思ってきたのに
ガブちゃんを取り除く
選択をすることになる

だけど
ガブちゃんが
伝えようとしてくれたことを
ムウは一生懸命
考えるよ、感じるよ

そして変えられるところは
変えようとしてみるよ

ごめんね いままで
もっと早くに
気づいてあげればよかった

そんなことを
望んでいるのかどうかはわからない

だけどもっと早く
気づいてあげればよかった

去年、天に登ったサンタと一緒だ
うすうすなんとなくわかっているのに
見て見ぬ振りをしてること

そんなことに気づいてあげよう
ごめんね ほんとに ごめんね

そしてムウは
あの山の向こうに行くよ

あなたにもらった勇気を胸に

まだみたこともない
あの山の向こうに さ


教訓
:ダメ元でも納得のいく行動をしよう
:見て見ぬ振りはやめよう
:習慣を変えるのは簡単ではない

写真は仲間たちが大切に育てている場所
からみたあの山、あの山の向こうにいけるかな
こっちにずっとずっといたい気もするけどさ

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