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34【惚れてまうやろ〜】


6月6日
この夜はほとんど眠れず過ごす

空が明るくなって
近くの明治神社まで
ルウ、母、ムウでお参り

毎日のルーティーンをこなし
朝ドラをみて車に乗り込む

久しぶりの花の東京
虎の門ヒルズの横に
2年前に新築された病院

ムウの命を懸ける場所

ドキドキする


ある日、電車で彼をみかけて
なんだかちょっぴりに気になり出して
もしかしてこれって??

恋?


とかなんとか思ったりして
ドキドキしながら

毎日、ちょっとずつちょっとずつ
距離を縮めていって
遂に夜も眠れず書いた
つたないラブレターを
渡す日を迎えるような

そんなバレンタインの
朝のような心持ち

本当に素敵な人なのか
実はそうでもなかったりして

でももうムウにはあとがない


長かったここまでの道のりを
もう一度歩くのは辛すぎる。。。

とかなんとか思いながら
ハンドルを握り、首都高を進む

11時30分の予約
10時10分に到着

都会のピカピカした病院なのに
なんだかみんな優しく
そしてちょっとだけ楽しそう

うーん いいかもしれない。。

まずは2階の総合受付に
紹介状と検査の画像を出し
受付を行う

はい、初診の方ですね!

画像の取り込みに少し
お時間をいただきますので
そちらでしばらくお待ちください


30分ほど待っただろうか
やっと番号を呼ばれ
ここからの流れの説明を受ける

保険証と
新しい診察券をもらい
受診科 消化器外科(上部)がある
3Fに向かう

3Fの外来受付に並び
順番がきて、
上野先生の外来だと伝える

そして、用意してきた
これまでの経過や自分のことを
まとめた書類を

こちら先生や看護師さんに
お渡しいただけますか?


と伝えると


もちろんです!
間違いのないように
診察券の内容をこちらに
印字しておきますね。


と気さくに笑顔で答えてくれる

天使だ!

なんということでしょう

もうすでにこの段階で
十分にC大を超えている!!

嬉しい

ほんと、こんなこと一つで
患者の気持ちは晴れるんだ


あーわかってるなぁ。。

と思う。
そしてこれはずっと続く

ここの病院はいったい
どうやってそれを維持してるのか
と訝しくなるほど

みんなとっても気持ちいい

あの人もこの人もどの人も
ほとんどみんなが心地いい

そんなこんなで受付も終わり
U先生の診察室の前で待つ

このときすでに11時を回っていた

U先生の診察は
まだ9時30分の人らしい

これはなかなかの長丁場だと覚悟して
ひたすらU先生の診察室に
入る人と出る人を観察しながら待つ

総じてみな入る時より
出てくる時の方が表情が明るい


それがなんだか嬉しくなる

そしてついに!
順番がきた。
番号が表示され診察室の戸を叩く


はい、どうぞ〜

あ、どうも滝川さん
お待たせしてすいません


Uです。よろしくお願いします。

あ〜
やっと会えた
やっと会えました、先生


と心の声が漏れそうになるのを
ぐっとこらえて

よろしくお願いします

と伝え3人で座ろうとするが
椅子が足りないことを察して

あ〜
すいませんね、
ちょっとまってね



といってスタッフに声をかけ
椅子を用意してくれる

もう〜
惚れてまうやろ〜


と最初か心を掴まれっぱなし

このときすでに13時を回っていた

朝から休憩もなく5時間働きっぱなしで
このテンションで仕事できるって
本当にすごいなぁと感心しきり

先生は紹介状とその画像を見入る

そして丁寧に図を書きながら
説明をし始めてくれた

食道がんには

扁平上皮がんと
腺癌があること

私の場合は

腺癌の可能性が高い

こと

その場合は手術前には
抗がん剤を使用しないこと

がぶちゃんの場所は
食道と胃のちょうど間で
3−4cm 2分の1を占めていること

この場合、
食道ほぼ全てと胃の一部を切って
再生する手術をする場合があり

再生法として
胃をぐっと持ち上げて
食道上部につなぐ

胃挙上再建術


(こちらがほぼ99%の病院でされている)

回結腸という腸をもちあげて
食道を再生する

胃温存回結腸再建術

があって

U先生は患者のQOLを考えて
この術式を行なっていること

いままでに80症例ほど
この手術をやっていること

またリンパ節転移がない場合は
食道の下部と胃の上部を切って
つないで弁を作る方法があること

などなどを丁寧に教えてくれた

現状の見立てでは

T3N1M0のステージ3

だけど
こちらの病院でも
もう少し詳しく調べる検査をやって
それで判断するとも伝えてくれた

この時点で
アタシたち3人は
すっかりなんだか
ホッとしてしまっていた


別になにがどう変わったわけでもないし
アタシのガブちゃんはそのままなんだけど

もう、なんというか
この、ちゃんと情熱と誇りをもって
仕事をされている感

患者が安心するためには
どこまでも付き合うよというスタンス


惚れてまうやろーーー
(何回目?)


45分を掛けて
丁寧に丁寧に
(後に患者がつかえていることなどお構いなしに)
一つずつ疑問や不安を解消してくれた

そして

滝川さん
本当にこちらの病院で治療をするで
いいんですね? 大丈夫ですか?


と尋ねてくれた。

はい、もうアタシには
ここしかありません


U先生にどうしても
やっていただきたいです


と愛の告白をして

わかりました、
では頑張りって

ゼロ

を目指しましょう!

先生、ゼロを目指すということは
ガブちゃんがアタシの中から
なくなるということですか?



そうです。
私たちはそれを目指して
全力でやるのが仕事ですから


ありがとうございます。

ただ
元の生活に完全に戻れるということでは
ないことはわかっておいてくださいね

この手術は9−10時間も掛かる大大大手術ですし
術後も色々と生活に変化が必要です。


みんな平気な顔をして暮らしていますが
食事や運動や睡眠やいろんなことを
工夫して我慢してなんとか暮らしています

その覚悟は必要になりますよ

わかりました。
どうかよろしくお願いします。

あーーーよかった

思った通りの先生で本当によかった


ここで先生がおもむろに電話かける

あ、いま外来中?
お!動ける?

じゃぁあの話してた滝川さん
お願いしたいからあとの段取り
頼めるかな、はいよろしくー


チームの誰かに確認をとり
このあとの流れを伝えてくれるよう


では、そういうことで
ぎゅっと詰めて検査をして
なるべく早く方向性をきめて
治療にかかれるよう段取りますので
それで頑張っていきましょう!

他にききたいことや不安はないですか?

大丈夫ですか?


最後の最後まで安心をさせてくれる。

では、大倉という医師に
これからの流れなどを説明をさせますので
しばらく外の待合でお待ちください

ありがとうございます!
どうかどうかよろしくお願いします。

3人で

本当に本当にホッとして

診察室をあとにした

あー
ほんとにここにたどり着いてよかった。
そりゃーみんないっぱい待たされても
誰も文句一つ言わないわ

これだけ丁寧にやってくれたら
もう感謝感激雨あられやわ

アタシもこういう感じで仕事したいな
と強く強く思ったのでした


このあと奇跡の大倉先生、登場へと
つづく


この時、用意した質問リスト

1、この症状の場合、どの手術方法になるか

・胃がんに準じた噴門側胃切除術
 (+下部食道切除)     (弁を手術中につくる方法)
・胃全摘術(+下部食道切除)、
・食道切除・胃上部切除
・その他

2、胃温存回結腸再建術をお願いしたいが可能か、
  それを選択した時の最善と最悪の見込みと生活の変化

3、上記で選択する治療の方法と期待される効果、その理由、

 (目的、効果、種類、回数、頻度、期間、場所、費用)

4、これからどのような検査をし、
  治療が進むかのイメージ(スケジュールなど)

5、その治療による制約や副作用や痛み、
  苦しみ(その期間も含む)とその対処法(短期)

6、手術後の生活(予後)のイメージや
  リスクとして考えておいた方がよいこと(⻑期)

7、この症例においての実績、治療パターンや数、
  また医療チームの体制など

8、治療の効果の測定方法と期間及び
  仮に選択した方法がダメだった場合の次の選択肢

9、治療前に自分自身でやっておくこと、できること、
  やってはいけないこと、やめること

10、治療中に仕事や旅行や歌唱やダンスはできるか
  (6 月 17 日から 20 日に高知行きを予定)

11、生活の中で気をつけるべき症状とその対処方法

12、時々、変な咳が出るが、関係ありますか?

13、今飲んでいる、ネキシウムカプセルと
  マーズレンは飲んだ方がいいか?
  やめても問題ないか?

14、オリーブオイル系サプリメント、飲尿療法、CBD、
  プロテイン、筋トレ、などはどうか




教訓
:捨てる神あれば拾う神あり
:ごきげんに仕事をできるのが最高
:誇りをもって仕事に向き合おう

うん

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