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但馬ドームに行った話

 2019年の話で恐縮だが、昔から激しく行ってみたかった「兵庫県立但馬ドーム」に行った時の話。
 出雲ドーム、シェルコムせんだい、大舘樹海ドーム等、大人の硬式野球を行うには手狭、もしくは行えない「多目的ドーム」を私は「半端ドーム」と呼んでいるのだが、但馬ドームの個性はこの半端ドーム界では際立っていた。そもそも外観が「ドーム」の形をしていない。なのでスポーツと結びつかない、つまり何の施設かわからないところが斬新過ぎるのだが、98年の開場。当時はこの手の前衛的な建造物の建設がブームだったという感じはあまりない。しかし1989年にはこのくらい斬新な東京武道館ができていたので、驚くには当たらないのかもしれない。
 しかし不思議とこういう前衛的な建物は、自然豊かな山間部の風景と良く合う。2000年にはグッドデザイン賞を受賞したらしい。

ネット裏後方にちょっとしたイベントスペース。

 何の施設かわからない。しかし中に入ってみると「ドームなんだ」というのがわかる。菱形を連ねたエントランスの裏側はしっかり「ドーム」なのだ。ソフトボールの試合という目的があったので別に驚いたわけではないが、もし、前衛的な美術館のような文化的施設だと思って中に入ったらスポーツをやっていた、としたら結構驚くと思う。
 ネット裏後方、つまり「菱形」の部分はちょっとしたイベントスペースで、これを活かせたらちょっとした「ボールパーク」だなと。航空写真で見るとわかるが、ドーム部分と建物部分がそれぞれ連続性のない、まったく別の形状をしていて、二つが物理的につながって一つの目的を実現する、というのが「斬新さ」の本質なのだなと気づく。確かにグッドデザインだ。

マウンド後方から外野にかけて柔らかい光がさす。

 ソフトボール場(野球場)としては、菱型部分が暗く、外野の屋根部分に向けて明るくなっていくのが演出的にも良い。薄暗い場所から明るい場所を見るのは映画や舞台同様、観客の気分を盛り上げる基本だから。逆は困るが。
 この屋根部分が旋回して開閉する。なんと「開閉式ドーム」なのだ。テフロン膜の屋根から透ける自然光の具合が何かドラマチックな感じを出してくる。開いた屋根から見る景色が素晴らしい。これが「設計」というものかと感じ入る。屋根のてっぺんの「とんがり具合」が伝統的な合掌造りの日本家屋を思わせる。
 何か褒めてばかりだが、ネット裏にちゃんとした観客席がないとか、ネットを吊るしている柱が視界を妨げるとか、決して野球最優先ではない、個性が強すぎる建造物にはありがちな欠点もある。しかし女子ソフトボールの時は、外野の仮設フェンスの外側に仮設スタンドを設置する事でネット裏で観戦できない欠点はフォローできる。

屋根からさす自然光が良い感じ。

 試合がまた凄く、シオノギ製薬の數原顕子が、1試合4本塁打9打点という、リーグ新記録を達成した。但馬ドームの衝撃だけで十分満足なのに凄い日だ。1試合4本塁打というとプロ野球に何人かいるが、私にとって印象深いのは日本ハムのソレイタだろうか。あの時はリアルタイムで優勝を狙う日本ハムを応援していたから。

 この秘境(失礼)の名所も今はネーミングライツで「全但バス但馬ドーム」という名前になっている。せっかく知る人ぞ知る(地元ではそうでもないのだろうが)存在だったのに「見つかっちゃった」感じ。


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